令和6年度第1回 技術科目(総合通信)の過去問解説です。分量が多いため、こちらでは第3問と第4問のみを掲載しております。、また、基礎科目、法規科目も別記事でまとめております。
第3問(1)参照点
問題
解答
②
解説
ISDN基本ユーザ・網インタフェースの参照点「S点」と「R点」について
この問題は、ISDN(Integrated Services Digital Network)基本ユーザ・網インタフェースにおける各参照点の役割と位置関係についての理解が求められています。ISDNの参照点には、接続される機器や機能に応じて異なるポイントが存在し、それぞれ異なる規定が設けられています。
記述Aについて:S点の位置と役割
記述Aは誤りです。S点は、NT2とISDN端末(TE1)またはTA(ターミナルアダプタ)との間に位置します。S点は、電気的・物理的な網機能について規定されており、ISDN回線とISDN対応機器を接続するための参照点です。NT1とNT2の間の参照点ではないため、記述Aは不正確です。
記述Bについて:R点の位置と役割
記述Bは正しい内容です。R点は、ターミナルアダプタ(TA)とアナログ端末(TE2)との間に位置する参照点です。R点は、非ISDN端末であるアナログ機器をISDN網へ接続するために規定されています。この参照点により、ISDN網で非ISDN端末を使用するためのアダプタ機能が提供されます。
重要度、ひとことアドバイス
参考資料
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該当ページ 134
該当ページ 215
第3問(2)レイヤ1におけるフレーム
問題
解答
①
解説
ISDN基本ユーザ・網インタフェースのレイヤ1におけるフレーム構成
この問題は、ISDN(Integrated Services Digital Network)基本ユーザ・網インタフェースにおけるレイヤ1のフレーム構成についての知識が問われています。特に、各フレームのビット数と送受信周期について理解する必要があります。
ISDNのレイヤ1フレーム構成
ISDNの基本ユーザ・網インタフェース(BRI: Basic Rate Interface)では、レイヤ1におけるフレーム構成が規定されています。各フレームは、48ビットで構成され、これには各チャネル(BチャネルやDチャネル)の情報ビットおよびフレーム制御ビットが含まれます。
この48ビットのフレームは、250マイクロ秒ごとに送受信され、安定したデータ通信が可能になるようタイミングが制御されています。ISDNの基本レートインタフェースでは、Bチャネル(64kbps × 2)とDチャネル(16kbps)を使用し、フレーム構成により効率的なデータ通信を実現しています。
他の選択肢について
- **64ビット(②)や128ビット(③)**など、他のビット数は異なる通信規格や構成において見られる場合がありますが、ISDNの基本ユーザ・網インタフェースでは48ビットが正解です。
重要度、ひとことアドバイス
ISDNのレイヤ1フレームは、48ビット構成で250マイクロ秒の周期で送受信されます。この規定により、ISDNは安定したデータ通信を提供し、各チャネルでの情報伝送を効率的に管理します。フレーム構成についての理解は、ISDNやその他の通信プロトコルの基礎知識として重要です。
参考資料
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該当ページ 139
該当ページ 220
第3問(3)非確認型情報転送モード
問題
解答
①
解説
ISDN基本ユーザ・網インタフェースにおける非確認形情報転送モードの特徴
この問題は、ISDN(Integrated Services Digital Network)基本ユーザ・網インタフェースにおける「非確認形情報転送モード」の特徴についての知識が問われています。非確認形情報転送モードは、データの信頼性やフロー管理の有無に関して特定の特性があります。
記述Aについて:適用範囲
記述Aは正しい内容です。非確認形情報転送モードは、**ポイント・ツー・ポイント(1対1)およびポイント・ツー・マルチポイント(1対多)**の両方のデータリンクに対応しています。このため、ISDNのさまざまな接続形態に柔軟に対応可能です。
記述Bについて:誤り制御とフロー制御
記述Bは誤りです。非確認形情報転送モードは誤り制御やフロー制御を行わない特徴があります。このモードは、簡易な転送が行われるため、エラーやデータの流れを制御する機能はありません。このため、情報フレームの転送は確認を行わず、受信の保証も行われないモードです。
重要度、ひとことアドバイス
非確認形情報転送モードは、ポイント・ツー・ポイントおよびポイント・ツー・マルチポイントデータリンクに対応していますが、誤り制御やフロー制御は行われません。このモードは、簡素なデータ転送を行う場合に適しており、ISDNの用途に応じた柔軟な選択肢を提供します。モードの特性と制限を理解して、ISDNの基本動作を把握しておきましょう。
参考資料
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該当ページ 145
該当ページ 232
第3問(4)レイヤ3 メッセージの共通部
問題
解答
④
解説
ISDN基本ユーザ・網インタフェースにおけるレイヤ3メッセージの共通部の構成要素
この問題は、ISDN(Integrated Services Digital Network)基本ユーザ・網インタフェースのレイヤ3メッセージに含まれる共通部の構成について理解が求められています。ISDNのレイヤ3メッセージには、各メッセージに共通する要素が含まれており、ネットワーク間での通信内容を標準化する役割を担っています。
レイヤ3メッセージの共通部構成
ISDNのレイヤ3メッセージは、**呼制御(Call Control)**を含む多様な機能を持ち、以下の3要素から構成される共通部を持っています。
- 呼番号(Call Reference)
呼番号は、各呼(通信セッション)を識別するための番号です。これにより、複数の呼が同時に行われる際に、特定の呼を区別し、適切に管理することが可能になります。 - プロトコル識別子(Protocol Discriminator)
プロトコル識別子は、使用されているプロトコルの種類を示す要素で、メッセージがどのプロトコルに基づいているかを明示します。 - メッセージ種別(Message Type)
メッセージの種類を示す要素で、特定のメッセージがどのような機能を持つかを定義しています。
他の選択肢について
- 国内宛先番号(①):宛先番号自体は、通話の目的地を示す情報であり、レイヤ3のメッセージ共通部には含まれません。
- サブアドレス情報(②):特定の接続先に対する追加情報で、共通部には含まれません。
- 端末終端点識別子(③):特定の端末識別に用いられる情報であり、共通部の要素ではありません。
- 送信元アドレス(⑤):発信元の情報ですが、メッセージの共通部に含まれません。
重要度、ひとことアドバイス
ISDNのレイヤ3メッセージにおける共通部は、呼番号、プロトコル識別子、メッセージ種別の3要素で構成されています。これらの要素により、各メッセージがどの呼に属し、どのプロトコルや機能に対応するかが定義され、ネットワーク間の通信をスムーズに行えるようになっています。
今回の問題では「呼番号」が問われていましたが、呼番号、プロトコル識別子、メッセージ種別の3要素はどれが問われてもおかしくないので、3つとも確実におさえておきましょう。
参考資料
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該当ページ 146
該当ページ 234
第3問(5)一次群速度ユーザ 通信の特徴
問題
解答
⑤
解説
ISDN一次群速度ユーザ・網インタフェースにおける通信特徴:B8ZS符号の使用
この問題は、1.5メガビット/秒方式のISDN一次群速度ユーザ・網インタフェース(Primary Rate Interface, PRI)に関する特徴についての理解が求められています。ISDNのPRIは、高速通信を実現するために設計され、さまざまな用途で活用されています。
B8ZS符号について
B8ZS(Bipolar with 8-Zero Substitution)符号は、デジタル信号における8つの連続したゼロを特定のパターンに置き換える符号化方式で、1.5メガビット/秒方式のISDN一次群速度の伝送路符号として使用されます。この符号化方式により、伝送中の同期維持が可能となり、高速データ通信において重要な役割を果たします。
他の選択肢について
- 選択肢①:NT1とTEの間は、ISDN一次群速度インタフェースではポイント・ツー・ポイント構成が一般的であり、ポイント・ツー・マルチポイントはISDN基本ユーザインタフェースに用いられることが多いため、誤りです。
- 選択肢②:Dチャネルの速度は、一次群速度インタフェースの場合64キロビット/秒であり、16キロビット/秒は基本ユーザインタフェースのDチャネル速度です。
- 選択肢③:DSU(Digital Service Unit)は常時起動ですが、特に起動・停止手順を持つ機器ではありません。
- 選択肢④:ISDNの一次群速度では最大23Bチャネル(64kbps × 23)であり、12回線には限定されません。
重要度、ひとことアドバイス
ISDNの一次群速度ユーザ・網インタフェースでは、伝送路符号としてB8ZS符号を使用しており、これは1.5メガビット/秒の通信速度でデータの同期維持を可能にするために重要です。ISDNのPRIにおける構成や特徴を理解しておくことで、ネットワーク通信技術の基礎知識が深まります。
参考資料
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該当ページ 142
該当ページ 226
第4問(1)符号化方式
問題
解答
⑤
解説
1000BASE-Tの物理層における符号化方式:8B1Q4について
この問題は、1000BASE-T(Gigabit Ethernet)規格の物理層で使用される符号化方式に関する知識が問われています。1000BASE-Tは、ツイストペアケーブルを使用して1ギガビット/秒のデータ伝送を実現する技術で、独自の符号化方式が用いられています。
8B1Q4符号化方式とは?
8B1Q4(8-bit/1 Quinary 4-level)符号化方式は、1000BASE-Tの物理層で使用される独自の符号化方式です。この方式では、次のようにデータを変換して伝送します。
- 8ビットごとのデータ:上位MAC層から受け取った8ビットのデータに1ビットの冗長ビットを加え、9ビットにします。
- 5値符号:9ビットのデータを四つの5値信号(5段階の信号レベル)に変換します。これにより、伝送時に使用される信号が多様化し、データ転送の効率が向上します。
このような変換によって、1000BASE-Tはツイストペアケーブル上で効率的かつ安定したデータ伝送を実現しています。
他の選択肢について
- MLT-3(①):3レベルの符号化方式で、100BASE-TXなどで用いられますが、1000BASE-Tでは使用されません。
- 8B/6T(②):8ビットを6値に変換する方式ですが、1000BASE-Tでは採用されていません。
- 8B/10B(③):8ビットを10ビットに変換する符号化方式で、主に1000BASE-X(光ファイバを用いたGigabit Ethernet)で使用されます。
- NRZI(④):Non-Return-to-Zero Invertedの略で、ビットの変化に基づいて信号を変調する方式ですが、1000BASE-Tには用いられていません。
重要度、ひとことアドバイス
1000BASE-Tの物理層では、8B1Q4符号化方式が使用され、データを9ビットに変換し、5値の信号レベルで伝送しています。この符号化方式により、高速かつ安定したデータ通信が可能になっています。1000BASE-Tの符号化方式を理解することで、Gigabit Ethernetの技術仕様についての知識を深めることができます。
参考資料
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該当ページ 149
該当ページ 242
第4問(2)CATV網
問題
解答
③
解説
DOCSIS 3.1における高速データ通信技術:LDPC符号の採用について
この問題は、CATV網を利用する高速データ通信規格であるDOCSIS 3.1の技術的特徴についての理解が求められています。DOCSIS 3.1は、以前の規格であるDOCSIS 3.0の後継規格で、より効率的なデータ通信を可能にするさまざまな技術を採用しています。
LDPC(Low-Density Parity-Check)符号とは?
LDPC符号(Low-Density Parity-Check符号)は、誤り訂正技術の一種で、高度な誤り訂正機能を提供します。LDPCは、携帯電話の5Gや10GBASE-T(10ギガビットイーサネット)など、高速・高信頼性が求められる通信規格で広く採用されています。
DOCSIS 3.1では、LDPC符号を採用することで、通信中に発生するデータエラーを効率的に訂正し、信号の品質を高めています。この誤り訂正方式によって、より高いスループットと安定した通信が実現され、CATV網を利用した高速データ通信の効率が向上しています。
他の選択肢について
- BCH符号(①):誤り訂正のための符号化方式ですが、主にディジタル放送などに利用され、DOCSIS 3.1では採用されていません。
- Golay符号(②):誤り検出・訂正に使用される符号ですが、主にデジタル通信や符号理論に関連する特殊な用途で用いられます。
- ターボ符号(④):主に3Gや4Gの携帯電話通信で使われた誤り訂正符号ですが、DOCSIS 3.1には採用されていません。
- リードソロモン符号(⑤):誤り訂正符号の一種で、CDやDVD、衛星通信で用いられることが多いですが、DOCSIS 3.1には採用されていません。
重要度、ひとことアドバイス
DOCSIS 3.1は、LDPC符号を採用することで高い誤り訂正能力を持ち、CATV網を活用した高速・安定なデータ通信を実現しています。この符号化方式により、DOCSIS 3.1はスループットの向上と、データの信頼性向上を両立させています。5Gや10GBASE-Tなどでも採用されているLDPCの特性を理解し、通信技術の基礎知識を深めましょう。
参考資料
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該当ページ なし
該当ページ 273
第4問(3)IPv6とIPv4の共存技術
問題
解答
④
解説
IPv6とIPv4の共存技術「デュアルスタック」について
この問題は、IPv6とIPv4の共存技術についての知識が問われています。IPv4からIPv6への移行が進む中で、異なるIPプロトコルを共存させる技術は重要な役割を果たしています。
IPv6/IPv4デュアルスタックとは?
IPv6/IPv4デュアルスタックは、通信機器がIPv4とIPv6の両方のプロトコルをサポートする技術です。デュアルスタックが実装されている機器は、相手側がIPv4とIPv6のどちらをサポートしているかを判断し、適切なプロトコルで通信を行います。これにより、異なるIPプロトコルを持つネットワーク機器間でもシームレスな通信が可能です。
デュアルスタックは、IPv4とIPv6が完全に移行するまでの共存期間中に、互換性を保つための重要な技術として利用されています。
他の選択肢について
- IPv6パススルー(①):IPv6トラフィックをIPv4ネットワーク上で中継する機能ですが、デュアルスタックではありません。
- IPv6/IPv4トランスレータ(②):IPv4とIPv6間のトラフィックを相互変換する技術で、デュアルスタックとは異なります。
- マルチキャスト(③):特定の宛先グループにデータを一斉に配信する方式であり、IPv6とIPv4の共存技術ではありません。
- IPv6 over IPv4トンネリング(⑤):IPv6トラフィックをIPv4ネットワークにカプセル化して送信する方式であり、デュアルスタックとは異なります。
重要度、ひとことアドバイス
IPv6/IPv4デュアルスタックは、IPv4とIPv6が共存する環境で、通信機器が両方のプロトコルに対応し、相手側に応じたプロトコルで通信できる技術です。デュアルスタックを使用することで、IPv4とIPv6の互換性が保たれ、ネットワークの移行をスムーズに進められます。
参考資料
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該当ページ なし
該当ページ 251
第4問(4)ICMPv6
問題
解答
②
解説
RFC 4443に基づくICMPv6の特徴と機能について
この問題は、IETF(Internet Engineering Task Force)のRFC 4443で標準化された**ICMPv6(Internet Control Message Protocol for IPv6)**に関する理解が問われています。ICMPv6は、IPv6ネットワークにおいてさまざまな制御メッセージを提供し、IPv6の動作において重要な役割を果たしています。
記述Aについて:ICMPv6の必須性
記述Aは誤りです。ICMPv6は、IPv6を実装する全てのIPv6ノードで必須とされており、使用形態に関係なく実装が求められます。ICMPv6は、IPv6ネットワークにおいて、エラーメッセージの通知やアドレス自動構成、到達不能通知といった基本的な機能を担うため、IPv6環境での通信には欠かせないプロトコルです。
記述Bについて:ICMPv6と関連プロトコル
記述Bは正しい内容です。ICMPv6には、IPv6ネットワークの管理に必要な情報メッセージが定義されており、具体的にはND(Neighbor Discovery)プロトコルによるアドレス自動構成や隣接ノード探索、またMLD(Multicast Listener Discovery)プロトコルによるマルチキャストグループの制御などが含まれています。これらのメッセージにより、IPv6ネットワークの自動設定やノードの管理が可能になります。
重要度、ひとことアドバイス
ICMPv6は、IPv6ノードに必須のプロトコルであり、NDプロトコルやMLDプロトコルを含む情報メッセージを通じて、IPv6アドレスの自動構成やマルチキャスト管理を行っています。IPv6ネットワークにおける基本的な制御メッセージの役割を理解することが、IPv6通信技術の理解に役立ちます。
参考資料
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該当ページ 152
該当ページ 256
第4問(5)EoMPLS
問題
解答
②
解説
広域イーサネット技術EoMPLSとMPLS網構成機器について
この問題は、**広域イーサネット(Ethernet over MPLS, EoMPLS)**技術と、それに関わるMPLS(Multiprotocol Label Switching)網の主要構成機器についての理解が求められています。EoMPLSは、イーサネットフレームをMPLSネットワーク上で効率よく伝送するための技術であり、広域ネットワークで使用されています。
記述Aについて:ラベルスイッチングとルーティング処理の速度
記述Aは誤りです。MPLSのラベルスイッチングは、レイヤ3情報を参照するルーティング処理よりも高速です。ラベルスイッチングでは、パケットの転送時にラベル情報のみを参照するため、従来のルーティング処理と比較して、処理の簡素化と速度向上が図られます。この特性により、MPLSは高速なパケット転送が求められる広域ネットワークで多用されています。
記述Bについて:MPLS網の構成機器
記述Bは正しい内容です。MPLS網には、ラベル付加や削除を行う**ラベルエッジルータ(LER: Label Edge Router)と、ラベル情報を参照してフレームを転送するラベルスイッチルータ(LSR: Label Switch Router)**が存在します。LERは、MPLSネットワークの境界でラベルの付加や削除を行い、LSRは内部でラベルを参照してパケットのスイッチングを行います。この機器構成により、MPLS網内で効率的なパケット転送が実現されています。
重要度、ひとことアドバイス
MPLS網では、ラベルスイッチングにより高速なパケット転送が可能で、構成機器としては、ラベルを付加・削除する**ラベルエッジルータ(LER)と、ラベルに基づいてパケットを転送するラベルスイッチルータ(LSR)**が使用されます。EoMPLSは、MPLSの技術を活用して広域ネットワークでのイーサネットフレーム伝送を効率化しています。
参考資料
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該当ページ 157
該当ページ 265
ISDNの基本ユーザ・網インタフェースにおいて、R点はアナログ端末をISDN網へ接続するための参照点であり、S点はISDN端末やターミナルアダプタとの接続点として機能します。このように、参照点の位置関係と役割を把握することで、ISDNの基本構成と接続方法を理解することができます。