工事担任者 過去問解説 令和6年第2回 基礎(総合通信)第2問

令和6年度第2回試験 基礎科目第2問の過去問解説です。 

問2(1) n形半導体の生成

高純度のシリコンに、(ア)のリンやアンチモンを微量に加えることにより、n形半導体が生成される。 (4点)


① 1価 ② 2価 ③ 3価 ④ 4価 ⑤ 5価

出典:令和6年度第2回第2問(1)

解答

解説

1. n形半導体の基本

n形半導体は、高純度のシリコン(Si)に5価の元素を微量に添加することで生成されます。この操作をドーピングと呼びます。

2. シリコン(Si)の構造

シリコン原子は4価であり、隣接する4つの原子と共有結合を形成して結晶構造を作ります。

3. 5価元素を添加した場合の効果

5価の元素(例:リン P、アンチモン Sb)をシリコンに添加すると、次のような現象が起こります:

  1. 共有結合の余剰電子
    5価の元素は、シリコンの4価と結合すると1つ電子が余ります。この余った電子が自由電子として動き回ることができます。この自由電子が電流を運ぶ役割を果たし、半導体が「負電荷を持つ電子(n型)」として動作します。

まとめ

5価元素(例:リンやアンチモン)は、シリコンに自由電子を提供し、n型半導体を形成します。このプロセスは、半導体デバイス(例:ダイオードやトランジスタ)の基盤となる重要な現象です。

参考資料

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※本問は、試験直前期に配布した「基礎 穴埋め暗記セレクション2024受験版」で予想的中しました。

総合通信要点解説(自著)

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該当ページ 57

問2(2) ベースバイアス抵抗の計算

図に示すトランジスタ回路において、Vccを12ボルト、Rcを3キロオームとするとき、 コレクタ電流Icを2ミリアンペアとするには、ベースバイアス抵抗\(\displaystyle R_B\)を (イ)キロオームにする必要がある。ただし、直流電流増幅率\(\displaystyle h_{FE}\)を100、ベース-エミッタ間の電圧\(\displaystyle V_{BE}\)を0.64ボルトとする。 (4点)


① 165 ② 168 ③ 265 ④ 268 ⑤ 365

出典:令和6年度第2回第2問(2)

解答

解説

問題文の条件を図に書き込む

なにはともあれ、まずは問題文の条件を図に書き込みましょう。

直流電流増幅率から、\(\displaystyle I_B\)を求める

直流電流増幅率\(\displaystyle h_{FE}\) は、トランジスタのコレクタ電流\(\displaystyle I_C\) とベース電流\(\displaystyle I_B\) の比で表されます。具体的には次の式で定義されます:

\( \displaystyle h_{FE} = \frac{I_C}{I_B}
\)

ここで:

  • \(\displaystyle I_C\)​:コレクタ電流(アンペア、A)
  • \(\displaystyle I_B\):ベース電流(アンペア、A)

これは、\( h_{FE}\)=100であれば、ベース電流の 100 倍のコレクタ電流を流すことができることを意味します。

つまり、直流増幅率の式を変形することにより、\( I_B\)を求めることができます。

\(\displaystyle I_B= \frac{I_C}{h_{FE}}=\frac{2\times10^{-3}}{100}=2\times10^{-5}\)A

コレクターエミッタ間の電圧\( V_{CE}\)を求める

\(\displaystyle I_B\)が分かったことから、\(\displaystyle R_C\)に流れる電流がわかります。\(\displaystyle R_C\)には分岐前の電流\(I_B+I_C\)が流れます。

\(\displaystyle R_C\)に流れる電流がわかれば、\(\displaystyle R_C\)の電圧降下\(\displaystyle V_{RC}\)が計算できます。

\(\displaystyle V_{RC}\)=\(\displaystyle (I_B+I_C)\times\displaystyle R_C \)=\(\displaystyle (2\times10^{-5}+2\times10^{-3})\times3\times10^3\)=6.06V

このことにより、\(\displaystyle V_{CC}\)から\(\displaystyle R_C\)の電圧降下を引いた残り\(\displaystyle V_{CE}\)を求めることができます。

\(\displaystyle V_{CE}\)=\(\displaystyle V_{CC}\)ー\(\displaystyle V_{RC}\)=\(12-6.06=5.94\) V

電圧\(\displaystyle V_{RB}\)から\(\displaystyle R_B\)を求める

\(R_B\)にかかる電圧を\(V_{RB}\)とすると、

\(V_{RB}=V_{CE}-V_{BE}\)で求められます。

\(V_{RB}=5.94-0.64=5.30 V\)

\(V_{RB}\)と\(I_B\)から、\(R_B\)を求めます。

\( \displaystyle \frac{V_{RB}}{I_B} \)=\(\displaystyle \frac{5.30}{2\times10^{-5}}=265\times10^3\)

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問2(3) トランジスタ増幅回路とコンデンサ

トランジスタ増幅回路で出力信号を取り出す場合には、バイアス回路への影響がないようにコンデンサを通して(ウ)のみを取り出す方法がある。 (4点)


① 交流分 ②直流分 ③ 漏話信号分 ④ 雑音成分 ⑤ 高調波成分

出典:令和6年度第2回第2問(3)

解答

解説

1. トランジスタ増幅回路の動作原理

トランジスタ増幅回路では、入力信号を増幅して出力します。このとき、出力には交流成分(信号)と直流成分(バイアス電圧)が含まれています。

2. コンデンサを用いた出力信号の分離

コンデンサは直流を遮断し、交流のみを通過させる性質を持っています。この性質を利用して、出力信号から交流成分のみを取り出すことが可能です。

  • 交流成分:入力信号に対応する振動する部分(音声信号や通信信号など)。
  • 直流成分:回路の動作を安定させるためのバイアス電圧。

コンデンサを使うことで、直流成分を回路に残したまま、必要な交流成分だけを出力側に取り出せます。

3. 他の選択肢との比較

  • ① 交流分: 正解。コンデンサを使う目的は交流成分の抽出であるため、最適な選択肢です。
  • ② 直流分: 誤り。コンデンサは直流成分を遮断するため、取り出すことはできません。
  • ③ 漏話信号分: 漏話信号は別の信号間で混入する干渉信号のことで、出力信号そのものではありません。
  • ④ 雑音成分: 雑音は信号の一部ではなく、外部からのノイズのことであり、コンデンサの役割とは無関係です。
  • ⑤ 高調波成分: 高調波成分は交流成分の一部として含まれますが、全体の交流分だけを取り出すのが正確な答えです。

4. 数式による補足

交流信号は以下のように表されます:

\( V_{\text{out}}(t) = V_{\text{DC}} + v_{\text{AC}}(t)
\)

ここで:

  • \(V_{out}(t)\):出力信号
  • \(V_{DC}\):直流成分
  • \(v_{AC}(t)\):交流成分

コンデンサを通した場合、\(V_{DC}\) が遮断され、\(v_{AC}(t)\) のみが出力されます。

まとめ

トランジスタ増幅回路では、コンデンサを使うことで交流成分だけを取り出し、直流成分による影響を排除します。この手法は、音声や通信信号を取り出す際に広く用いられています。

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※本問は、試験直前期に配布した「基礎 穴埋め暗記セレクション2024受験版」で予想的中しました。

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該当ページ 71

問題2(4) 電界効果トランジスタ

電界効果トランジスタについて述べた次の二つの記述は、(エ)。(4点)

A 接合型電界効果トランジスタは、ゲート電極に加える電圧を変化させることにより空乏層の厚さを変化させ、ドレイン-ソース間を流れる電流を制御する半導体素子である。

B MOS型電界効果トランジスタには、ゲート電圧を加えなくてもチャネルが形成されるエンハンスメント型と、ゲート電圧を加えなければチャネルが形成されないデプレション型がある。 (4点)

① Aのみ正しい ② Bのみ正しい ③ AもBも正しい  ④ AもBも正しくない

出典:令和6年度第2回第2問(4)

解答

解説

1. 記述 A の検証

「接合型電界効果トランジスタ (JFET) は、ゲート電極に加える電圧を変化させることにより空乏層の厚さを変化させ、ドレイン-ソース間を流れる電流を制御する半導体素子である。」

解説:

  • JFET の構造と動作原理
    • JFET は、ゲート (Gate)、ドレイン (Drain)、ソース (Source) の3つの端子を持つ半導体素子です。
    • ゲートに加える電圧により空乏層の厚さが変化し、チャネル(電流が流れる経路)の幅が変わります。
    • 空乏層が厚くなるとチャネルが狭くなり、ドレイン-ソース間を流れる電流 (IDSI_{DS}IDS​) が減少します。

正しい記述であり、JFET の基本動作を正確に表しています。

2. 記述 B の検証

「MOS型電界効果トランジスタには、ゲート電圧を加えなくてもチャネルが形成されるエンハンスメント型と、ゲート電圧を加えなければチャネルが形成されないデプレション型がある。」

解説:

  • MOS型電界効果トランジスタ(MOSFET)は、エンハンスメント型とデプレション型の2種類があります。ただし、記述に誤りがあります:
    • エンハンスメント型:ゲート電圧を加えることでチャネルが形成され、電流が流れる。ゲート電圧が 0 の場合、チャネルは形成されません。
    • デプレション型:ゲート電圧が 0 の場合でもチャネルが形成されており、ゲート電圧を変化させてチャネルを広げたり狭めたりできます。

記述の誤り

  • 記述中の「ゲート電圧を加えなくてもチャネルが形成されるエンハンスメント型」という部分が誤りです。
  • エンハンスメント型では、ゲート電圧を加えないとチャネルは形成されません。

3. 結論

  • 記述 A:正しい(JFET の動作を正確に説明している)。
  • 記述 B:誤り(エンハンスメント型に関する説明が間違っている)。

正解:① Aのみ正しい

まとめ

電界効果トランジスタの動作原理を理解する際、JFET と MOSFET の違いを正確に把握することが重要です。本問では、エンハンスメント型とデプレション型の特徴についての誤りを見抜くことがポイントでした。

参考資料

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該当ページ 82

問題2(5) コレクタ接地方式

トランジスタ回路は、接地方式の違いにより特性が異なっており、コレクタ接地方式は、入力インピーダンスが高く、出力インピーダンスが低いため、 (オ)回路として用いられる。(4点)


① 整 流 ② マイクロ波  ③ 定電圧  ④ 発 振  ⑤ インピーダンス変換 

出典:令和6年度第2回第2問(5)

解答

解説

1. トランジスタ回路の接地方式

トランジスタ回路は、接地方式(どの端子を基準とするか)によって特性が異なります。主な接地方式には以下の3種類があります:

  1. エミッタ接地方式
    • 最も一般的な接地方式。
    • 増幅度が高い。
    • 入力インピーダンス:中程度、出力インピーダンス:中程度。
    • 主に電圧増幅に使用される。
  2. ベース接地方式
    • 増幅度がやや低い。
    • 入力インピーダンス:非常に低い、出力インピーダンス:高い。
    • 主に高周波増幅に使用される。
  3. コレクタ接地方式
    • 別名:エミッタフォロワ回路。
    • 増幅度はほぼ 1 倍(電流増幅に重点)。
    • 入力インピーダンス:高い、出力インピーダンス:低い。
    • インピーダンス変換に使用される。

2. コレクタ接地方式の特徴

コレクタ接地方式は以下の特性を持ちます:

  • 入力インピーダンスが高い: 入力信号源に負荷をかけず、信号を受け取りやすい。
  • 出力インピーダンスが低い: 出力側に接続される負荷(スピーカーや次段の回路)を容易に駆動できる。

この特性により、コレクタ接地方式はインピーダンス変換回路として広く用いられます。

3. 他の選択肢との比較

  • ① 整流: 整流はダイオードを主に利用する回路であり、トランジスタの接地方式とは関係がありません。
  • ② マイクロ波: マイクロ波回路では、ベース接地方式が使用されることが多く、コレクタ接地方式ではありません。
  • ③ 定電圧: 定電圧回路はレギュレーター回路が主流であり、コレクタ接地方式の特性とは一致しません。
  • ④ 発振: 発振回路には、トランジスタのエミッタ接地方式や専用の発振回路が使用されることが多いです。
  • ⑤ インピーダンス変換: 正解。コレクタ接地方式の特性(高入力インピーダンス・低出力インピーダンス)により、インピーダンス変換に最適です。

まとめ

コレクタ接地方式(共コレクタ方式)は、入力インピーダンスが高く、出力インピーダンスが低い特性を持つため、インピーダンス変換回路として使用されます。

参考資料

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該当ページ 68

基礎第2問の解説は以上です。ここまでお読みいただき、ありがとうございます。