令和6年度第2回試験 基礎科目第4問の過去問解説です。
問4(1) 電気通信回線と負荷抵抗(電力)
図1において電気通信回線への入力電力が24ミリワット、その伝送損失が1キロメートル当たり0.
8デシベル、増幅器の利得が30デシベルのとき、負荷抵抗R1 で消費する電力は、(ア)ミリワットである。ただし、変成器は理想的なものとし、入出力各部のインピーダンスは整合しているものとする。
(5点)
① 24 ② 48 ③ 96 ④ 120 ⑤ 240
出典:令和6年度第2回第4問(1)
解答
④
解説
問題文の条件を図に書きこむ
まずは、問題文の条件を図に書き込みましょう。
電気通信回線は「損失」とある通りエネルギーが減衰するので、マイナス符号をつけて処理します。
1kmあたり-0.8dBとあるので、×25をして、計-20dBとなります。
増幅器は「利得」とある通りエネルギーが増大するので、プラス符号をつけて処理します。
電力値では、変成器は無視
増幅器を出たあと変成器に入ります。
変成器のインピーダンスが一次側と二次側で変わっていますが、電力値の場合は無視して大丈夫です。
変成器では、インピーダンスの変換や、電圧の変換などが行われますが、電力値は変わりません。
インピーダンス比に応じて電力を分配
終端抵抗では、インピーダンス比に応じて電力が分配されます。
条件のまとめ
電気通信回線で-20dB、増幅器で+30dBとなるので、合算して+10dBとなります。
+10dBは、電力値では10倍アップということ。
入力電力が24mW、それが10倍アップして240mWになります。
240mWの電力が変成器に入りますが、変成器でのインピーダンス変換は無視して、そのまま240mWが終端抵抗にかかります。
終端抵抗は2つあり、同じインピーダンスになっていますので、電力は1:1に分配されます。
結果、R1での消費電力は120mWとなります。
参考資料
該当ページ 85
該当ページ 112
問4(2) 特性インピーダンス
無限長の一様線路における音声周波での特性インピーダンスは周波数、線路の静電容量及び導体抵抗から近似的に求めることができ、その大きさは、周波数の平方根と線路の静電容量の(イ)する。(5点)
① 二乗に反比例し、導体抵抗の二乗に比例
② 平方根に反比例し、導体抵抗の平方根に比例
③ 二乗に比例し、導体抵抗の二乗に反比例
④ 平方根に比例し、導体抵抗の平 方根に反比例
出典:令和6年度第2回第4問(2)
解答
②
解説
無限長の一様線路における特性インピーダンス \(Z_0\) は、音声周波数帯域において、周波数 \(f\)、線路の静電容量\(C\)、および導体抵抗 \(R\) を考慮して近似的に表現されます。この場合、次の近似式が成り立ちます:
特性インピーダンスの近似式
\( \displaystyle Z_0 \approx \sqrt{\frac{R}{j\omega C}}\)
ここで:
- R: 導体抵抗(Ω/m)
- \( \omega = 2\pi f\): 角周波数(rad/s)
- C: 静電容量(F/m)
インピーダンスの依存性
- 周波数 f:
- \( \omega = 2\pi f\) より、特性インピーダンス \(Z_0\) は 周波数の平方根に反比例 します。
- \(\displaystyle Z_0 \propto \frac{1}{\sqrt{f}}\)
- 静電容量 C:
- C は分母に現れるため、特性インピーダンス \(Z_0\) は 静電容量の平方根に反比例します。
- \(\displaystyle Z_0 \propto \frac{1}{\sqrt{C}}\)
- 導体抵抗 R:
- R は分子に現れるため、特性インピーダンス \(Z_0\) は 導体抵抗の平方根に比例します。
- \(Z_0 \propto \sqrt{R}\)
まとめ
無限長の一様線路における音声周波数帯域の特性インピーダンスは、
- 周波数の平方根に反比例し、
- 静電容量の平方根に反比例し、
- 導体抵抗の平方根に比例します。
したがって、正解は ② です。
参考資料
参考資料の該当ページです。
該当ページ なし
該当ページ 不明
問4(3) SN比
図2に示すアナログ伝送路において、受端のインピーダンスZに加わる信号レベルが-8dBmで、同じ伝送路の無信号時の雑音レベルが(ウ)dBmであるとき、この伝送路の受端におけるSN比は、42デシベルである。(5点)
① -76 ② -71 ③ -55 ④ -50 ⑤ -34
出典:令和6年度第2回第4問(3)
解答
④
解説
SN比におけるSは信号レベル、Nは雑音レベルを表します。
SN比は、真数で表現されている場合(25mWなど)はSとNが何倍離れているかで計算をしますが、本問のようにdBで表されている場合は足し算引き算で計算をすることができます。
上の図のように、SN比=S-Nで表すことができます。
本問ではSN比が42dBとわかっているで、
42=-8-N
∴N=-50 (-・-は+になります)
これで答えは出ましたが、せっかくなのでここでSN比について軽く整理しておきたいと思います。
SN比(Signal-to-Noise Ratio)とは?
SN比(Signal-to-Noise Ratio、SNR)は、信号(伝えたい音やデータ)とノイズ(信号を邪魔する不要な音や情報)の強さの比率を表す指標です。音声通信や音響機器、映像、データ通信など、さまざまな分野で重要な基準として使われます。
SN比の基本的な考え方
- 信号:本来伝えたい音や情報(例:音楽や会話)。
- ノイズ:信号に混ざり込む不要な雑音や誤ったデータ(例:バックグラウンドノイズや電子機器の雑音)。
SN比は、信号の強さがノイズに比べてどれだけ大きいかを示します。
具体的には、次のように計算されます:
\(\displaystyle \text{SN比 (dB)} = 10 \log_{10} \left( \frac{\text{信号のパワー}}{\text{ノイズのパワー}} \right)\)
SN比を日常の場面で例えると:
- 静かな部屋での会話:ノイズが少ないので相手の声(信号)がよく聞こえます。→ SN比が高い
- 騒がしい工事現場での会話:ノイズが大きくて相手の声が聞こえにくいです。→ SN比が低い
SN比が高いほど良い理由
- 高いSN比:信号がノイズよりも圧倒的に強い状態です。この場合、情報が正確に伝わります。
- 例:音楽プレーヤーでクリアな音が聞こえる。
- 低いSN比:信号がノイズとほぼ同じくらいの強さ、またはそれ以下です。この場合、情報がノイズに埋もれてしまい、聞き取りにくくなります。
- 例:ラジオで雑音が混ざって会話が聞き取れない。
実用的な目安
- 50dB以上:非常に良い音質や通信品質。
- 30~50dB:通常の利用では問題ないレベル。
- 30dB以下:ノイズが多く、聞き取りやすさや通信品質が低下。
まとめ
SN比は、信号(必要な情報)がノイズ(不要な情報)と比べてどれだけ強いかを表す指標です。
数字が大きいほど良い品質を意味し、クリアな音声や正確なデータ通信が可能になります。
普段の生活での「聞きやすさ」や「見やすさ」に関係する大切な概念です。
参考資料
参考資料の該当ページです。
該当ページ 86(ただし、dB表現ではない)
該当ページ 123
問4(4) 電流反射係数
特性インピーダンスの異なる通信線路を接続して信号を伝送したとき、その接続点における電圧反射係数をmとすると、電流反射係数は、 (エ) で表される。 (5点)
①-m ② 1-m ③ m ④ \(\displaystyle \frac {1}{m}\) ⑤ 1+ m
出典:令和6年度第2回第4問(4)
解答
①
解説
電圧反射係数と電流反射係数の関係
特性インピーダンスが異なる通信線路を接続した場合、その接続点で信号が反射します。
この反射の度合いを表すのが反射係数です。
反射係数には、電圧反射係数と電流反射係数があり、これらは次のような関係にあります:
電流反射係数=−電圧反射係数
つまり、電流反射係数は電圧反射係数の符号を反転した値になります。
物理的な意味
- 電圧と電流は線路上での伝送波において密接な関係があります。
特性インピーダンスが異なる線路を接続すると、電圧と電流の比率が変化します。 - この変化が反射を引き起こし、電圧と電流でそれぞれ反射係数が生じます。
ただし、電圧と電流の反射係数は反対の符号を持ちます(つまり、片方が正ならもう片方は負)。
まとめ
電圧反射係数 m を用いた電流反射係数の式は −m です。
したがって、この問題の正解は ① -m です。
参考資料
参考資料の該当ページです。
※本問は、試験直前期に配布した「基礎 穴埋め暗記セレクション2024受験版」で予想的中しました。
該当ページ 76
該当ページ 118
第4問の解説は以上です。ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
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