令和6年度第2回試験 基礎科目第5問の過去問解説です。
問5(1) 64QAM
QAMは、位相が直交する二つの搬送波がそれぞれASK変調された多値変調方式であり、QAMの一つである64QAMは、1シンボル当たり(ア)の情報を伝送できる方式である。(4点)
① 2ビット ② 4ビット ③ 6ビット ④ 1バイト ⑤ 2バイト
出典:令和6年度第2回第5問(1)
解答
③
解説
QAMと64QAMについて
**QAM(Quadrature Amplitude Modulation:直交振幅変調)**は、多値変調方式の一種で、以下の特徴を持ちます:
- **位相が直交する2つの搬送波(I軸とQ軸)**を利用。
- 各搬送波が独立して振幅変調(ASK)されます。
- 搬送波の振幅と位相の組み合わせを利用して、複数のビット情報を1シンボルで表現します。
64QAMの特徴
64QAMでは、64個の異なる振幅と位相の組み合わせ(状態)があります。
- **1シンボルで表現できるビット数は、状態数の対数(2を底とする)**で求められます:
\(\text{1シンボル当たりのビット数} = \log_2(64) = 6\) - よって、64QAMは1シンボルで6ビットの情報を伝送できる方式です。
正解の理由
選択肢を確認すると:
- ①2ビット:4状態の変調方式(例:QPSK)に該当。
- ②4ビット:16状態の変調方式(例:16QAM)に該当。
- ③6ビット:64状態の変調方式(64QAM)に該当。
- ④1バイト(8ビット):256状態(256QAM)に該当。
- ⑤2バイト(16ビット):対応する変調方式はありません。
正解は③6ビットです。
まとめ
64QAMは1シンボル当たり6ビットの情報を伝送できる多値変調方式です。
参考資料
該当ページ なし
該当ページ 131
問5(2) 光ファイバ通信の伝送方式
光ファイバ通信などに用いられる伝送方式について述べた次の二つの記述は、(イ)。 (4点)
A 双方向多重伝送に用いられるTCM方式は、送信パルス列を時間的に圧縮し、 空いた時間に反対方向からのパルス列を受信することにより双方向伝送を実現しており、ピンポン伝送ともいわれる。
B 波長の異なる複数の光信号を多重化する方式であるWDMには、多重化する波長間隔の違いによりCWDMとDWDMがあり、そのうち波長間隔が狭い方式は、CWDMである。
① Aのみ正しい ② Bのみ正しい ③ A もBも正しい ④ AもBも正しくない
出典:令和6年度第2回第5問(2)
解答
①
解説
記述 A の検討
「双方向多重伝送に用いられる TCM 方式は、送信パルス列を時間的に圧縮し、空いた時間に反対方向からのパルス列を受信することにより双方向伝送を実現しており、ピンポン伝送ともいわれる。」
- TCM (Time Compression Multiplexing):時間圧縮多重方式
- 送信パルス列を圧縮して、送信方向の信号と受信方向の信号を時間的に分離することで、同じチャネルで双方向伝送を実現する方式。
- 「ピンポン伝送」とも呼ばれる。
➡ この記述は 正しい。
記述 B の検討
「波長の異なる複数の光信号を多重化する方式である WDM には、多重化する波長間隔の違いにより CWDM と DWDM があり、そのうち波長間隔が狭い方式は、CWDMである。」
- WDM (Wavelength Division Multiplexing):波長分割多重方式
- 複数の波長の光信号を同一の光ファイバで伝送する技術。
- CWDM (Coarse Wavelength Division Multiplexing):粗波長分割多重方式
- 波長間隔が広い(20nm程度)。
- 短距離通信向け。
- DWDM (Dense Wavelength Division Multiplexing):密波長分割多重方式
- 波長間隔が狭い(0.8nm程度)。
- 長距離・高容量通信向け。
➡ この記述は 誤り。波長間隔が狭いのは DWDM です。
参考資料
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該当ページ 98
該当ページ 138,146
問5(3) 光受信器における雑音
光伝送システムに用いられる光受信器における雑音のうち、受光時に電子が不規則に放出されるために生ずる信号電流の揺らぎによるものは (ウ) 雑音といわれる。 (4点)
① ランダム ② ショット ③ ビート ④ インパルス ⑤ ASE
出典:令和6年度第2回第5問(3)
解答
②
解説
光受信器における雑音の種類
光伝送システムに用いられる光受信器では、受光時に以下のような種類の雑音が発生します:
- ショット雑音 (Shot Noise)
- 原因:受光時に電子が不規則に放出される現象により生じる信号電流の揺らぎ。
- 特徴:光の量子化特性による自然現象であり、信号に比例して発生するため、光の強度が強いほどショット雑音も増加。
- 主な影響:受信信号の品質を劣化させる。
- ランダム雑音 (Random Noise)
- 電気的なランダムな揺らぎから発生する雑音。
- ビート雑音 (Beat Noise)
- 異なる波長の信号が干渉した結果、生じる周波数の混成による雑音。
- 主に波長分割多重 (WDM) システムで問題になる。
- インパルス雑音 (Impulse Noise)
- 瞬間的な強い信号の変化により生じる雑音。
- ASE (Amplified Spontaneous Emission) 雑音
- 光増幅器 (例えばEDFA) によって発生する自発放射の雑音。
問題文の解釈
「受光時に電子が不規則に放出されるために生ずる信号電流の揺らぎによるもの」という記述は、ショット雑音 に該当します。
参考資料
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※本問は、試験直前期に配布した「基礎 穴埋め暗記セレクション2024受験版」で予想的中しました。
該当ページ 92
該当ページ 147
問5(4) %ES
伝送速度が64キロビット/秒の回線において、ビットエラーの発生状況を200秒間調査 したところ、特定の2秒間に集中して発生し、その2秒間の合計のビットエラーは640個となった。このときの%ESの値は、 (エ) パーセントとなる。 (4点)
① 0.005 ② 0.01 ③ 1 ④ 2 ⑤ 3.2
出典:令和6年度第2回第5問(4)
解答
③
解説
用語の説明
- %ES (Error Second Rate)
- エラー秒率 (Errored Seconds) とは、伝送中にエラーが発生した秒数が総観測秒数に占める割合を示します。
- 計算式 \(\displaystyle \%ES = \left( \frac{\text{エラー秒数}}{\text{観測秒数}} \right)\times 100 \)
問題の条件
- 伝送速度:64キロビット/秒
- 調査期間:200秒
- エラーが発生した秒数:2秒
- エラーが発生したビット数:640個
- この情報(エラーが発生したビット数:640個)は%ESの計算には影響しない。
計算手順
- エラー秒数の割合を求める
エラー秒数は2秒で、観測秒数は200秒なので、エラー秒数の割合は次の通り:
\(\displaystyle \frac{\text{エラー秒数}}{\text{観測秒数}} = \frac{2}{200} = 0.01\) - 割合をパーセント表示に変換 \(\%ES=0.01 \times 100 =1\%\)
参考資料
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該当ページ 99
該当ページ 127
問5(5) 再生中継器
光中継伝送システム 、ひずみに用いられる再生中継器には、中継区間における信号の減衰、伝送途中で発生する雑音 みなどにより劣化した信号波形を再生中継するための等化増幅、タイミング抽出及び(オ)の機能が必要である。 (4点)
① 強度変調 ② 位相同期 ③ 偏波制御 ④ 波長変換 ⑤ 識別再生
出典:令和6年度第2回第5問(5)
解答
⑤
解説
再生中継器の役割
光通信において、信号は長距離伝送の過程で以下の要因により劣化します:
- 信号の減衰
- 伝送中に発生する雑音
- 信号波形の歪み
これらを補正し、次の伝送区間で正確に信号を再伝送するため、再生中継器には以下の機能が求められます:
- 等化増幅
- 減衰した信号を増幅し、信号波形を整える。
- タイミング抽出
- 受信した信号から正確なタイミング情報を取り出し、送信のタイミングを調整。
- 識別再生
- 劣化した信号を「0」または「1」のデジタル値として再構築し、次の伝送区間に送る。
選択肢の考察
- 強度変調
- 信号の強度を変化させる方式ですが、再生中継器の主な機能には含まれません。
- 位相同期
- 位相を同期させる技術ですが、光信号の再生には直接関係しません。
- 偏波制御
- 光信号の偏波状態を調整する技術で、再生中継器の基本機能ではありません。
- 波長変換
- 光信号の波長を変える技術で、再生中継器の機能ではありません。
- 識別再生
- 劣化した信号をデジタル的に再構築する重要な機能であり、再生中継器の必須要素です。
- →これが正解です。
参考資料
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※本問は、試験直前期に配布した「基礎 穴埋め暗記セレクション2024受験版」で予想的中しました。
該当ページ 96
該当ページ 143
第5問の解説は以上です。ここまでお読みいただき、誠にありがとうございます。
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