令和6年度第2回試験 技術科目第10問の過去問解説です。
問10(1) 情報システム用関連設備の接地
JEITA ITR-1005B 情報システム用接地に関するガイドラインにおける情報システム用関連設備の接地などについて述べた次の二つの記述は、(ア) 。なお、JEITA ITR-1005Bは、電子情報技術産業協会(JEITA)が技術レポートとして制定、発行しているものである。(2点)
A ラック筐体を架固定する際、床、架台等の金属との接触によるノイズの回り込みを防止するため、絶縁ブッシング等の絶縁部材により絶縁を行う。
B 複数のラックを接地する場合は、各ラックから接地端子への配線(スター配線)が望ましい。 ラック同士を連結した送り配線は、管理が複雑になることに留意する。
① Aのみ正しい ② Bのみ正しい ③ AもBも正しい ④ AもBも正しくない
出典:令和6年度第2回第10問(1)
解答
②
解説
本設問は、JEITA ITR-1005B 情報システム用接地ガイドラインに基づき、情報システム関連設備の接地方法に関する正しい記述を問うものです。
記述A:
- 「ラック筐体を架固定する際、床、架台等の金属との接触によるノイズの回り込みを防止するため、絶縁ブッシング等の絶縁部材により絶縁を行う」
- 解説:
- ラック筐体と床や架台などの金属部分が直接接触すると、ノイズ回り込みのリスクが高まります。
- これを防ぐために、絶縁ブッシングや絶縁部材を用いて適切に絶縁することがJEITAのガイドラインで推奨されています。
- 正しい記述。
- 解説:
記述B:
- 「複数のラックを接地する場合は、各ラックから接地端子への配線(スター配線)が望ましい。ラック同士を連結した送り配線は、管理が複雑になることに留意する」
- 解説:
- スター配線(各ラックから接地端子への独立した接地配線)は、接地経路が明確になり、ノイズやループ障害を防ぎやすくなります。
- 一方で、送り配線(ラック同士を連結した接地)は、接地経路が複雑になり、メンテナンスや障害発生時のトラブルシューティングが難しくなる可能性が指摘されています。
- JEITA ITR-1005Bでも、管理のしやすさを考慮してスター配線が推奨されています。
- 正しい記述。
- 解説:
スター配線(スター型トポロジー)は、中央のハブやスイッチから各デバイスに個別のケーブルを接続するネットワーク構成です。
この構成により、各デバイスは直接ハブと通信し、他のデバイスとの間接的な接続が可能となります。
以下にスター配線のイメージ図を示します。
この図では、中央のハブ/スイッチから各デバイスに直接ケーブルが伸びている様子を表しています。
スター配線の主な特徴は以下のとおりです:
- メリット: 一部のケーブルやデバイスに障害が発生しても、他の部分には影響を与えにくい。
- デメリット: ハブやスイッチが故障すると、ネットワーク全体が機能しなくなる可能性がある。
スター配線は、オフィスや家庭内ネットワークで広く採用されている構成です。
各デバイスが中央のハブやスイッチを介して通信するため、ネットワークの管理やトラブルシューティングが比較的容易です。
ただし、中央のハブやスイッチがネットワークの要となるため、これらの機器の信頼性がネットワーク全体の安定性に直結します。
まとめ
正解は ③ AもBも正しい です。
JEITA ITR-1005Bでは、ノイズ防止のための絶縁処理やスター配線の重要性が明記されています。ラック接地においては、管理のしやすさとノイズ抑制の観点から、これらの推奨事項に従うことが求められます。
参考資料
問10(2) OTDR法による測定波形
図は、JIS C 6823:2010光ファイバ損失試験方法におけるOTDR法による不連続点での測定波形の例を示したものである。この測定波形のB からE までの区間は、(イ)のOTDRでの測定波形を表示している。ただし、OTDR法による測定で必要なスプライス又はコネクタは、低挿入損失かつ低反射であり、OTDR接続コネクタでの初期反射を防ぐための反射制御器としてダミー光ファイバを使用している。また、測定に用いる光ファイバには、マイクロベンディングロスがないものとする。(2点)
① ダミー光ファイバの入力端から被測定光ファイバの入力端まで
② ダミー光ファイバの出力端から被測定光ファイバの終端まで
③ ダミー光ファイバの出力端から被測定光ファイバの融着接続点まで
④ 被測定光ファイバの入力端から被測定光ファイバの終端まで
⑤ 被測定光ファイバの入力端から被測定光ファイバの融着接続点まで

出典:令和 年度第 回第 問(5)
解答
②
解説

OTDR測定波形の概要
光パルス試験装置(OTDR: Optical Time Domain Reflectometer)を使用して光ファイバの損失測定を行う際、ダミー光ファイバと被測定光ファイバを接続し、波形を確認します。
試験では、波形の各測定区間に関する問題が頻出事項になっています。
測定波形の各ポイント
- 区間A:
- ダミー光ファイバの入力端から出力端までの区間。
- 初期反射を抑える目的で使用されています。
- 区間B:
- ダミー光ファイバの出力端から被測定光ファイバの入力端にかけての接続部。
- 測定波形に最初の接続損失が現れる部分です。
- 区間C~E:
- 被測定光ファイバの区間であり、波形全体の主な測定対象部分です。
- 特に区間BからEは、ダミー光ファイバの出力端から被測定光ファイバの終端までの波形を示しています。
波形から読み取れる内容
- 図に示されている波形は、光ファイバの損失や反射の挙動を示しており、特にBからEの区間が被測定光ファイバに該当します。
- この波形は、ダミー光ファイバと被測定光ファイバが接続され、被測定光ファイバ全体(入力端~終端)の損失特性を表しています。
まとめ
OTDR測定波形において、測定波形の区間B~Eはダミー光ファイバの出力端から被測定光ファイバの終端までの範囲を示しています。
参考資料

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※本問は、試験直前期に配布した「技術 穴埋め暗記セレクション2024受験版」で予想的中しました。
問10(3) 職場における安全確保
職場における安全確保などについて述べた次の二つの記述は、(ウ)。 (2点)
A 5S活動の5Sとは、整理・整頓・清掃・清潔・ 躾のそれぞれのローマ字表記で頭文字をとったものをいい、整頓は、必要なものと不必要なものを区分し、不必要なものを捨てることをいう。
B 人為的に不適切な行為、過失などが起こってもシステムの信頼性及び安全性を保持する設計上の手法は、一般に、フールプルーフ又はエラープルーフといわれ、人身事故など重大事故を避けるためにフールプルーフを採用した機器を導入することは、安全対策の一つである。
① Aのみ正しい ② Bのみ正しい ③ AもBも正しい ④ AもBも正しくない
出典:令和6年度第2回第10問(3)
解答
②
解説
本設問では、職場の安全確保に関する 「5S活動」 と 「フールプルーフ」 に関する記述が正しいかを問うています。
記述A:
- 「5S活動の5Sとは、整理・整頓・清掃・清潔・躾のそれぞれのローマ字表記で頭文字をとったものをいい、整頓は、必要なものと不必要なものを区分し、不必要なものを捨てることをいう。」
- 解説:
- 5S活動の内容は以下のとおりです:
- 整理:必要なものと不必要なものを区分し、不必要なものを捨てる。
- 整頓:必要なものを使いやすい状態に整える。
- 清掃:職場をきれいにする。
- 清潔:清掃を習慣化し、衛生を保つ。
- 躾(しつけ):ルールや規律を守る習慣を身につける。
- 誤りのポイント:
- 記述では、「整頓」の定義が「整理」の内容を示しており、定義が間違っています。
- 5S活動の内容は以下のとおりです:
- 不正解。
- 解説:
記述B:
- 「人為的に不適切な行為、過失などが起こってもシステムの信頼性及び安全性を保持する設計上の手法は、一般に、フールプルーフ又はエラープルーフといわれ、人身事故など重大事故を避けるためにフールプルーフを採用した機器を導入することは、安全対策の一つである。」
- 解説:
- フールプルーフ(Foolproof)は、「人為的なミスや操作ミスを防ぐ設計」を意味します。
- 例:電子レンジのドアを閉めないと加熱が始まらない仕組み。
- エラープルーフ(Errorproof)も同様の概念で使われることがあります。
- 本記述はフールプルーフの正しい定義と活用例を述べています。
- 正しい記述。
- フールプルーフ(Foolproof)は、「人為的なミスや操作ミスを防ぐ設計」を意味します。
- 解説:
まとめ
正解は ② Bのみ正しい です。
- 5S活動の「整理」と「整頓」の定義に注意する必要があります。
- フールプルーフは安全設計の重要な概念であり、職場の安全対策の中核的な手法の一つです。
参考資料

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問10(4) 継続的改善のための技法
JIS Q 9024:2003 マネジメントシステムのパフォーマンス改善-継続的改善の手順及び技法の指針に規定されている、継続的改善のための技法について述べた次の記述のうち、誤っているものは、(エ)である。(2点)
① パレート図は、項目別に層別して、出現頻度の大きさの順に並べるとともに、標準偏差を示した図である。
② ヒストグラムは、計測値の存在する範囲を幾つかの区間に分けた場合、各区間を底辺とし、その区間に属する測定値の度数に比例する面積をもつ長方形を並べた図である。
③ 管理図は、連続した観測値又は群にある統計量の値を、通常は時間順又はサンプル番号順に打点した、上側管理限界線、及び/又は、下側管理限界線をもつ図である。
④ チェックシートは、計数データを収集する際に、分類項目のどこに集中しているかを見やすくした表又は図である。
⑤ 連関図は、複雑な原因の絡み合う問題について、その因果関係を論理的につないだ図である。
出典:令和6年度第2回第10問(4)
解答
①
解説
本問題では、JIS Q 9024:2003「マネジメントシステムのパフォーマンス改善-継続的改善の手順及び技法の指針」における 継続的改善のための技法 について正誤を問うています。
① パレート図
- 記述内容:項目別に層別して、出現頻度の大きさの順に並べるとともに、標準偏差を示した図である。
- 正しい説明:
- パレート図は、「項目ごとの出現頻度を大きい順に並べた棒グラフ」に、累積和を折れ線グラフとして重ねた図です。
- 標準偏差を示す図ではなく、項目別の「重要度」や「出現頻度の割合」を把握するために使用されます。
- 誤りのポイント:標準偏差の記載が不適切です。
- → ①は誤り。

② ヒストグラム
- 記述内容:計測値の存在する範囲をいくつかの区間に分け、各区間を底辺とし、その区間に属する測定値の度数に比例する面積をもつ長方形を並べた図である。
- 正しい説明:
- ヒストグラムは「度数分布」を図示するために使われ、記述通り「各区間の度数に比例する長方形を並べた図」です。
- 記述は正しい。

③ 管理図
- 記述内容:連続した観測値や統計量の値を時間順やサンプル番号順に打点し、上側管理限界線、下側管理限界線をもつ図である。
- 正しい説明:
- 管理図は、プロセスが管理状態にあるかどうかを確認するための図で、上限と下限の管理限界線を設定し、観測値をプロットして監視します。
- 記述は正しい。

④ チェックシート
- 記述内容:計数データを収集し、分類項目のどこに集中しているかを見やすくした表や図である。
- 正しい説明:
- チェックシートは、データの収集や整理を簡単に行うための図表で、分類項目ごとの傾向を確認する目的で使用されます。
- 記述は正しい。

⑤ 連関図
- 記述内容:複雑な原因の絡み合う問題について、その因果関係を論理的につないだ図である。
- 正しい説明:
- 連関図は、問題の原因と結果の関連を可視化し、因果関係を整理するための図です。
- 記述は正しい。
まとめ
①は誤りです。
パレート図に「標準偏差」を示すという内容は不適切であり、他の選択肢は正しい記述です。
正解:①
参考資料

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問10(5) アローダイアグラム
あるプロジェクトを完了するために必要な作業の所要日数及び順序関係がⓐ~ⓗであるとき、このプロジェクト全体を表すアローダイアグラムにおいて、最初の作業開始時刻を0日としたとき、作業Gの最早開始時刻は、(オ) 日である。 (2点 )
ⓐ 作業Aは所要日数が5日で最初に開始する作業である。
ⓑ 作業Bは所要日数が2日で作業Aの終了後に開始できる。
ⓒ 作業Cは所要日数が4日で作業Aの終了後に開始できる。
ⓓ 作業Dは所要日数が6日で作業B及び作業Cの終了後に開始できる。
ⓔ 作業Eは所要日数が5日で作業Cの終了後に開始できる。
ⓕ 作業Fは所要日数が4日で作業Dの終了後に開始できる。
ⓖ 作業Gは所要日数が3日で作業D及び作業Eの終了後に開始できる。
ⓗ 作業Hは所要日数が4日で作業F及び作業Gの終了後に開始でき、作業Hが終了すると プロジェクトは完了する。
① 14 ② 15 ③ 16 ④ 18 ⑤ 23
出典:令和6年度第2回第10問(5)
解答
②
解説
本問は、アローダイアグラムを用いてプロジェクトの最早開始時刻を計算する問題です。作業Gの最早開始時刻を求めるためには、順序関係と所要日数を整理し、作業Dと作業Eが終了する最早時刻を確認する必要があります。
手順:所要日数と順序関係を整理
以下の作業条件を順序通りに並べます:
作業A:所要日数 5日(最初に開始する作業)
終了時刻 = 5日
作業B:所要日数 2日(作業Aの終了後に開始)
開始時刻 = 作業Aの終了時刻 = 5日
終了時刻 = 5日 + 2日 = 7日
作業C:所要日数 4日(作業Aの終了後に開始)
開始時刻 = 作業Aの終了時刻 = 5日
終了時刻 = 5日 + 4日 = 9日
作業D:所要日数 6日(作業Bと作業Cの終了後に開始)
作業Bと作業Cの終了時刻の最大値 = 9日
開始時刻 = 9日
終了時刻 = 9日 + 6日 = 15日
作業E:所要日数 5日(作業Cの終了後に開始)
開始時刻 = 作業Cの終了時刻 = 9日
終了時刻 = 9日 + 5日 = 14日
作業G:所要日数 3日(作業Dと作業Eの終了後に開始)
作業Dと作業Eの終了時刻の最大値を採用:
作業Dの終了時刻 = 15日
作業Eの終了時刻 = 14日
よって、作業Gの開始時刻 = 15日
作業Gの最早開始時刻は15日 となります。
以上は計算から求めたものですが、アローダイアグラムの全体像の書きながら確認する方法もご説明いたします。
アローダイアグラムを書く方法
ⓐ 作業Aは所要日数が5日で最初に開始する作業である。

上の図の緑で書いた数字は合計日数を表しています。
スタートは0日とします。作業Aは5日とあるので、つぎの点では合計日数が5となっています。
ⓑ 作業Bは所要日数が2日で作業Aの終了後に開始できる。

作業Bは、作業Aの後につながります。
作業日数が2日なので、Bの後の合計日数は7となります。
なお、斜めに線を書いた理由は、「作業Aの終了後に開始」とされる作業が2つある(作業Bと作業C)ことから、2分岐すると考えて斜めに書いています。
ⓒ 作業Cは所要日数が4日で作業Aの終了後に開始できる。

作業Cも作業Aの終了後に開始するので、上図のように書くことができます。
所要日数が4日なので、合計日数は9となります。
ⓓ 作業Dは所要日数が6日で作業B及び作業Cの終了後に開始できる。

作業Dは、「作業B及び作業Cの終了後に開始」とあるので、CとBを破線(ダミー作業)で結合します。(日数が少ない方に向かって結合することをおすすめします)
破線(ダミー作業)部分の所要日数は0として結びます。
そうすると、作業Dの開始時刻は7日と9日が並ぶわけですが、複数の日数が現れた場合、必ず大きい数字の方を基準にします。
ここはとても重要なポイントですので、確実におさえておきましょう。
ⓔ 作業Eは所要日数が5日で作業Cの終了後に開始できる。

作業Eは作業Cの終了後に開始できるとあるので、作業Eは上図のように配置でき、合計日数は14となります。
ⓕ 作業Fは所要日数が4日で作業Dの終了後に開始できる。

作業Fは作業Dの終了後に開始できるとあり、所要日数が4日であることから上図のようになります。
ⓖ 作業Gは所要日数が3日で作業D及び作業Eの終了後に開始できる。

作業Gは作業D及び作業Eの終了後に開始できるとあるので、破線で結合します。
ここでも日数が少ない方向に向かって結合すると、作業Gの開始点には14日と15日が並ぶことになります。
先ほど見たように、日数が複数並んだときは、数字が大きい方を基準にしてください。
よって、作業Gの最早開始時刻は15日となります。
「最早開始時刻」という文言から14日としないように気を付けてください。14日時点では作業Gを開始することができない(作業Dが終わっていない)ため、日数が大きい方を選んでください。
この時点で本問の答えは②とわかります。
せっかくなので、最後までアローダイアグラムを完成しておきます。
ⓗ 作業Hは所要日数が4日で作業F及び作業Gの終了後に開始でき、作業Hが終了すると プロジェクトは完了する。

作業Hは作業F及び作業Gの終了後に開始できるので、FとGから破線で結合します。
結果、トータル日数は23日となります。
問題によってはクリティカルパスを求める問題やトータル日数を計算する問題など、最後まで書く必要ような問題が出されることもあるので、本問でも意識して練習しておくとよいでしょう。
参考資料

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技術第10問の解説は以上です。ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
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