令和6年度第2回試験 技術科目第2問の過去問解説です。
問2(1) PON
光アクセスシステム を構成するPONのうち、G-PONを高速化したシステムとして ITU-T G.9807.1で標準化され、GTCフレームをアップデートした伝送フレーム を使用して上り方向及び下り方向の最大伝送速度が10ギガビット/秒とされるシステムは、 (ア) といわれる。 (2点)
① GE-PON ② XG-PON ③ XGS-PON ④ 10G-EPO N ⑤ NG-PON2
出典:令和6年度第2回第2問(1)
解答
③
解説
問題の趣旨
この問題は、光アクセスシステムを構成するパッシブ光ネットワーク(PON)の一つで、ITU-T G.9807.1で標準化されたシステムについて問うものです。
正解:③ XGS-PON
- XGS-PON(10-Gigabit Symmetric Passive Optical Network)は、ITU-T G.9807.1で標準化されたシステムで、**GPON(Gigabit-capable Passive Optical Network)**を高速化したものです。
- 伝送速度:
- 上り方向:10 Gbps
- 下り方向:10 Gbps
- 特徴:
- 対称(Symmetric)型の伝送速度をサポート。
- **GTCフレーム(GPON Transmission Convergence Frame)**をアップデートしたフレーム形式を採用。
他の選択肢の解説
- ① GE-PON
- Gigabit Ethernet Passive Optical Network。
- IEEE 802.3ahで規定されたシステムで、最大伝送速度は1 Gbps。
- 問題の条件(10 Gbps)を満たさないため不適切。
- ② XG-PON
- ITU-T G.987シリーズで標準化されたシステムで、最大伝送速度は上り2.5 Gbps、下り10 Gbps。
- 対称型ではないため不適切。
- ④ 10G-EPON
- IEEE 802.3avで標準化されたシステムで、最大伝送速度は10 Gbps。
- ただし、ITU-T G.9807.1に基づいたシステムではないため不適切。
- ⑤ NG-PON2
- ITU-T G.989シリーズで標準化されたシステムで、多波長技術(TWDM-PONなど)を利用し、さらに高速な伝送を可能にするシステム。
- 本問題はG.9807.1に基づくシステムを問うため不適切。
補足
- XGS-PONは、現在の高速インターネットサービス(光ファイバ)を支える重要な技術であり、対称型の高速通信が必要な場面で使用されています。
結論
ITU-T G.9807.1で標準化され、10 Gbpsの対称型伝送を可能にするシステムは、③ XGS-PON です。
参考資料
※本問は、試験直前期に配布した「技術 穴埋め暗記セレクション2024受験版」で予想的中しました。
問2(2) SIPサーバの構成要素
SIPサーバの構成要素のうち、ユーザエージェントクライアント(UAC)からのメッセー ジを再転送する必要がある場合に、その転送先を通知する機能を持つものは (イ)サーバといわれる。 (2点)
① プロキシ ② リダイレクト ③ ロケーション ④ DHCP ⑤ ファイル
出典:令和6年度第2回第2問(2)
解答
②
解説
問題の趣旨
この問題は、SIP(Session Initiation Protocol)サーバの構成要素に関する知識を問うものです。SIPは、主に音声やビデオ通話などのセッション制御を行うプロトコルであり、その中でリダイレクトサーバが果たす役割について理解が求められます。
正解:② リダイレクトサーバ
- リダイレクトサーバは、ユーザエージェントクライアント(UAC)から受け取ったメッセージを再転送する必要がある場合、その転送先を通知する役割を持つ構成要素です。
- 主な機能:
- セッションリクエストを受け取り、クライアントに対して新しい転送先(URI)を通知します。
- 自身でメッセージを転送するのではなく、転送先の情報をUACに返します。
他の選択肢の解説
- ① プロキシサーバ
- クライアントから受け取ったメッセージを代理で転送する役割を持つサーバ。
- メッセージの転送先を通知するのではなく、自身がメッセージの中継を行うため不適切。
- ③ ロケーションサーバ
- SIPのユーザの現在の位置情報を保持する役割を持つサーバ。
- このサーバが管理する情報をもとに、プロキシやリダイレクトサーバが動作するが、直接的に転送先を通知する機能を持たないため不適切。
- ④ DHCPサーバ
- ネットワーク上でIPアドレスを動的に割り当てるサーバ。
- SIPサーバの構成要素ではなく、通信プロトコル全般に関わるため不適切。
- ⑤ ファイルサーバ
- ファイルの保存や共有を行うサーバであり、SIPサーバとは無関係。
補足
リダイレクトサーバの役割は、SIPを用いたセッションの効率化に寄与します。例えば、複数のSIPサーバを利用する大規模ネットワーク環境では、リダイレクトサーバを用いることで直接的な通信経路の確立が可能となります。
まとめ
SIPサーバの構成要素で、UACからのメッセージを再転送する必要がある場合に転送先を通知する機能を持つものは、② リダイレクトサーバ です。
参考資料

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問2(3) LPWA
LPWAといわれる無線通信技術の規格の一つであり、無線局免許が不要な920メガヘル ツ帯のISMバンドを使用し、通信の安定度によってデータ伝送速度を300ビッ ト/秒~数十キロビット/秒程度の範囲で設定可能、データ伝送の速度と伝送量が上り下り同等といった特徴を有する規格は(ウ) といわれ、IoTデバイスの監視及び制御に適する とされている。 (2点)
①LTE-M ② WiMAX2 ③ NB-IoT ④ LoRaWAN ⑤ Wi-Fi 7
出典:令和6年度第2回第2問(3)
解答
④
解説
1. LPWA (Low Power Wide Area) とは?
- LPWA は、低消費電力で広範囲の通信を可能にする無線通信技術の総称です。
- 主に IoT デバイス(センサーなど)の監視・制御に適しています。
2. LoRaWAN の特徴
以下の問題文と対応する LoRaWAN の特徴を挙げます:
- 無線局免許が不要な 920 MHz 帯の ISM バンドを使用
- LoRaWAN は、免許不要の周波数帯(サブギガヘルツ帯:920 MHz)を利用します。
- これにより、導入コストが低く抑えられます。
- データ伝送速度:300 bps ~ 数十 kbps
- LoRaWAN の通信速度は非常に低速ですが、センサーのように少量のデータ送信に特化しています。
- LoRaWAN の通信速度は非常に低速ですが、センサーのように少量のデータ送信に特化しています。
- 上りと下りの通信速度が同等
- LoRaWAN はシンプルな通信プロトコルを持ち、上り(デバイス → サーバー)と下り(サーバー → デバイス)の通信がバランスされています。
- LoRaWAN はシンプルな通信プロトコルを持ち、上り(デバイス → サーバー)と下り(サーバー → デバイス)の通信がバランスされています。
- 通信距離と消費電力の最適化
- 長距離通信(数 km ~ 数十 km)を低消費電力で実現するため、IoT デバイスに適しています。
- 長距離通信(数 km ~ 数十 km)を低消費電力で実現するため、IoT デバイスに適しています。
3. 他の選択肢との比較
選択肢 | 特徴 | 適合性 |
---|---|---|
① LTE-M | セルラー通信技術を基にしており、免許が必要。高速通信(数 Mbps)対応。 | 不適 |
② WiMAX2 | 高速広域通信に特化した技術(モバイルブロードバンド)。数十 Mbps~数百 Mbps。 | 不適 |
③ NB-IoT | LTE ベースの技術であり、免許が必要。通信速度は LoRaWAN に近いが、上り重視。 | 部分的に適 |
④ LoRaWAN | 問題文の特徴(免許不要、920 MHz 帯、低速通信、上下り同等)に完全一致。 | 正解 |
⑤ Wi-Fi 7 | 高速・大容量通信(Gbpsレベル)を実現する家庭用無線通信規格。IoTには不向き。 | 不適 |
まとめ
LoRaWAN は、IoT デバイスの監視・制御に特化した 免許不要・低速・安定性重視 の通信技術であり、問題文の記述と完全に一致するため、正解は④ です。
参考資料

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問2(4) 隠れ端末問題
IEEE802.11標準の無線LANの環境において、同一アクセスポイント(AP)配下に 無線端末のSTA1とSTA2があり、障害物によってSTA1とSTA2との間でキャリア センスが有効に機能しない状態は隠れ端末問題といわれ、フレームの衝突頻度が増しスルー プットが低下するおそれがある。この解決策として、APは、送信をしようとしているSTA1からの (エ) 信号を受けるとCTS信号をSTA1に送信するが、このCTS信号は、 STA2も受信できるので、STA2はNAV期間だけ送信を待つことにより衝突を防止する 対策が採られている。(2点)
① ACK ② CFP ③ NAK ④ REQ ⑤ RTS
出典:令和6年度第2回第2問(4)
解答
⑤
解説
1. 隠れ端末問題 (Hidden Node Problem) とは?
- 隠れ端末問題は、同じアクセスポイント (AP) に接続された端末同士が互いに直接通信できず、通信の衝突が起きる問題です。
- 例えば、STA1 と STA2 がアクセスポイントを介して通信している場合、STA1 と STA2 の間に障害物があると、互いの存在を認識できません。
2. 隠れ端末問題の影響
- STA1 と STA2 が同時にデータを送信すると、フレームが衝突する可能性が高まり、通信効率(スループット)が低下します。
3. 隠れ端末問題の解決策:RTS/CTS (Request to Send / Clear to Send)
- RTS (Request to Send)
- STA1 がデータを送信する前に、まず AP に RTS 信号を送信します。
- この信号は STA1 が通信を開始したいというリクエストを表します。
- CTS (Clear to Send)
- AP は RTS 信号を受け取ると、CTS 信号を送信します。
- CTS 信号は、STA1 に通信開始の許可を与えると同時に、STA2 など他の端末に「送信を控えるように」という通知をします。
- NAV (Network Allocation Vector)
- STA2 は CTS 信号を受け取ると、指定された NAV期間(送信禁止期間)中、送信を控えます。
- この仕組みにより、フレームの衝突を防ぎ、スループットを向上させます。
4. 他の選択肢との比較
選択肢 | 説明 | 適合性 |
---|---|---|
① ACK | データフレームを正しく受信したことを送信側に知らせる確認応答信号 (Acknowledgement)。 | 不適 |
② CFP | ポイントコーディネーション機能 (PCF) における無線リソース管理で使われるフレーム (Contention-Free Period)。 | 不適 |
③ NAK | データ受信に失敗したことを知らせる否定応答信号 (Negative Acknowledgement)。 | 不適 |
④ REQ | Request(要求)の略語だが、IEEE 802.11 の RTS/CTS の文脈では使用されない。 | 不適 |
⑤ RTS | STA1 が通信を開始するために AP に送るリクエスト信号 (Request to Send)。 | 正解 |
5. まとめ
正解は⑤ RTS です。
隠れ端末問題の解決策として採用されるのは、RTS/CTS プロトコルです。
RTS (Request to Send) 信号を送ることで、通信の開始をリクエストし、AP が CTS 信号で調整を行います。
参考資料

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※本問は、試験直前期に配布した「技術 穴埋め暗記セレクション2024受験版」で予想的中しました。
問2(5) PoE Type2
IEEE802.3atとして標準化されたPoEのType2、Class4は、直流電圧50~57ボルトの範囲で、PSEの1ポート当たり最大 (オ)を、PSEからPDに供給することができる規格である。 (2点)
① 15.4ワットの電力 ② 68.4ワットの 電力 ③ 350ミリアンペアの電流 ④ 450ミリアンペアの電流 ⑤ 600ミリアンペアの電流
出典:令和6年度第2回第2問(5)
解答
⑤
解説
1. PoE (Power over Ethernet) とは?
- PoE は、イーサネットケーブルを通じてデータ通信と同時に電力を供給する技術です。
- 主に IP カメラや無線 LAN アクセスポイントなど、電力供給が難しいデバイスで利用されます。
2. IEEE 802.3at (PoE+) の仕様
- IEEE 802.3at は PoE の第2世代規格で、PoE+ とも呼ばれます。
- PoE+ では、より高い電力を供給可能になり、データ通信と電力供給を効率的に行えます。
3. 問題文の特徴
問題文で述べられている「Type 2, Class 4」の仕様を確認します:
項目 | 仕様 |
---|---|
規格 | IEEE 802.3at (PoE+) |
直流電圧 | 50~57ボルト |
最大電力 | 30ワット |
最大電流 (PSE) | 600ミリアンペア |
適用デバイス | 高消費電力のデバイス(IPカメラなど) |
4. 他の選択肢との比較
選択肢 | 説明 | 適合性 |
---|---|---|
① 15.4ワット | PoE (IEEE 802.3af) 規格の最大供給電力。Type 2, Class 4 では適用外。 | 不適 |
② 68.4ワット | PoE++ (IEEE 802.3bt) Type 3 または 4 に該当する電力。Type 2 の仕様を超える。 | 不適 |
③ 350ミリアンペア | PoE (IEEE 802.3af) の最大電流値。Type 2 ではさらに高い電流を供給可能。 | 不適 |
④ 450ミリアンペア | 中間的な電流値だが、Type 2, Class 4 の最大供給値には達しない。 | 不適 |
⑤ 600ミリアンペア | IEEE 802.3at Type 2, Class 4 の規定された最大電流値で問題文に一致。 | 正解 |
5. まとめ
IEEE 802.3at Type 2, Class 4 は、50~57ボルトの直流電圧で、最大 600ミリアンペアの電流 を供給可能です。
参考資料

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※本問は、試験直前期に配布した「技術 穴埋め暗記セレクション2024受験版」で予想的中しました。
技術第2問の解説は以上です。ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
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