令和6年度第2回試験 技術科目第3問の過去問解説です。
問3(1) 試験ループバック
ISDN基本ユーザ・網インタフェースにおいて、TTC標準JT-I430で必須項目として規定されている保守のための試験ループバックは、 (ア)で2B+Dチャネルを折り返しており、ループバック2といわれる。(2点)
① NT1 ② NT2 ③TE1 ④TE2 ⑤ TA
出典:令和6年度第2回第3問(1)
解答
①
解説
1. ISDN (Integrated Services Digital Network) とは?
- ISDN は音声、データ、画像を統合的に扱う通信網で、基本ユーザ・網インタフェース(Basic Rate Interface, BRI)を提供します。
- BRI では、2B チャネル(音声やデータ用)と D チャネル(制御用)の 2B + D 構成が基本です。
2. NT1 (Network Termination Type 1) とは?
- NT1 は ISDN の基本ユーザ・網インタフェースで、加入者側のターミナル機器(TE: Terminal Equipment)と通信事業者のネットワークを接続する装置です。
- NT1 は次の役割を持ちます:
- ISDN 信号の物理層の変換
- 信号品質の管理
- 保守試験のためのループバック機能
3. ループバック試験
- ループバック試験は、通信品質や障害診断を行うために、データを一度送り出して、そのデータを受信側で折り返して返送する仕組みです。
- 問題文の 「ループバック 2」 は、NT1 内で 2B + D チャネルを折り返す機能を指します。
4. 他の選択肢との比較
選択肢 | 説明 | 適合性 |
---|---|---|
① NT1 | 問題文で述べられた「ループバック 2」で使用される ISDN インタフェースの要素。TTC 標準 JT-I430 で必須とされています。 | 正解 |
② NT2 | ISDN 接続で使用されるネットワーク機器ですが、主に複数のターミナル機器を接続するための高層機能を担当します。物理層試験のループバック機能は規定外です。 | 不適 |
③ TE1 | ISDN 対応ターミナル機器(例:ISDN 電話機)。ループバック試験の主体にはなりません。 | 不適 |
④ TE2 | ISDN 非対応ターミナル機器(例:アナログ電話機)。TA を通して ISDN に接続されるため、直接的にループバック試験には関与しません。 | 不適 |
⑤ TA | ターミナルアダプタ(Terminal Adapter)。ISDN に非対応の機器を接続するための変換装置であり、ループバック試験の機能はありません。 | 不適 |
5. まとめ
NT1 は ISDN ユーザ・網インタフェースの必須要素であり、保守のための「ループバック 2」試験を行う役割を持っています。
参考資料
※本問は、試験直前期に配布した「技術 穴埋め暗記セレクション2024受験版」で予想的中しました。
問3(2) 一次群速度ユーザ・網インタフェースにおけるフレーム構成
1.5メガビット/秒方式のISDN一次群速度ユーザ・網インタフェースにおけるフレーム構成について述べた次の二つの記述は、 (イ) 。 (2点)
A マルチフレーム同期信号パターンとして、4フレームごとのDチャネルビットで形成され る特定の2進パターンが定義されている。
B 1マルチフレームは、193ビットのフレームを24個集めた24フレームで構成される。
① Aのみ正しい ② Bのみ正しい ③ AもBも正しい ④ AもBも正しくない
出典:令和6年度第2回第3問(2)
解答
②
解説
1. ISDN 一次群速度ユーザ・網インタフェースとは?
- 一次群速度ユーザ・網インタフェースは 1.5Mbps (T1) を基準としたインタフェース。
- 主に北米や日本で使用される T1 フレーム構成規格に基づきます。
2. 記述 A と B の検証
記述 A: 「マルチフレーム同期信号パターンとして、4フレームごとの D チャネルビットで形成される特定の 2 進パターンが定義されている。」
- 誤りです。
- 理由: D チャネルビットではなく、Fチャネルビットが正しい答えです。
- D チャネルは T1 規格では 64 kbps(通常、フレーム内の特定のタイムスロット)として動作し、同期信号パターンは直接的に定義されません。
記述 B: 「1マルチフレームは、193ビットのフレームを24個集めた24フレームで構成される。」
- 正しいです。
- 理由: T1 規格に基づき、1 フレームは 193 ビット(192 ビットのデータ + 1 ビットのフレーム同期ビット)で構成されています。
- 24 フレームが集まって 1マルチフレーム を形成し、これが ISDN 一次群速度ユーザ・網インタフェースのフレーム構成の基本です。
参考資料

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問3(3) レイヤ1 アクセス制御手順
ISDN基本ユーザ・網インタフェースのレイヤ1では、複数の端末が一つのDチャネルを共用するため、アクセスの競合が発生することがある。Dチャネルへの正常なアクセスを確保するための制御手順として、一般に、(ウ)といわれる方式が用いられている。 (2点)
① CSMA/CD ② フレーム同期 ③ 優先制御 ④ X.25 ⑤ エコーチェック
出典:令和6年度第2回第3問(3)
解答
⑤
解説
1. ISDN 基本ユーザ・網インタフェースの概要
- ISDN 基本ユーザ・網インタフェース (Basic Rate Interface, BRI) では、複数の端末が 1本の Dチャネル (16 kbps) を共用します。
- Dチャネルは、端末間で制御情報や信号を送受信するための専用チャネルです。
2. アクセス制御の課題
- 複数の端末が同時に Dチャネルにアクセスしようとすると、競合が発生する可能性があります。
- この競合を防ぎ、正常に通信を行うために適切なアクセス制御手順が必要です。
3. エコーチェック方式
- エコーチェック方式は、Dチャネルのアクセス競合を解消するための制御手順です。
- 仕組み:
- 端末が Dチャネルにデータを送信。
- ネットワーク側がそのデータを受信し、エコー(確認応答)を返す。
- エコーが正常に返ってきた場合、通信が確立。
- エコーが返らない場合、端末は送信を再試行。
- 仕組み:
- この方法により、Dチャネルを効率的に共有し、競合を最小限に抑えることができます。
4. 他の選択肢との比較
選択肢 | 説明 | 適合性 |
---|---|---|
① CSMÁ/CD | イーサネットのアクセス制御方式で、衝突検出 (Collision Detection) を使用。ISDN の Dチャネルでは適用されません。 | 不適 |
② フレーム同期 | データの開始位置を特定する同期方式であり、アクセス競合の制御には直接関与しません。 | 不適 |
③ 優先制御 | アクセスの優先順位を決定する方式ですが、ISDN Dチャネルではエコーチェック方式が採用されています。 | 不適 |
④ X.25 | 古いパケット通信プロトコルで、ISDN Dチャネルのアクセス制御には使用されません。 | 不適 |
⑤ エコーチェック | Dチャネルのアクセス制御で実際に使用される方式で、問題文の記述に一致します。 | 正解 |
5. まとめ
- ISDN 基本ユーザ・網インタフェースの Dチャネルでは、アクセス制御に エコーチェック方式 を採用しています。
参考資料

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※本問は、試験直前期に配布した「技術 穴埋め暗記セレクション2024受験版」で予想的中しました。
問3(4) レイヤ2 非確認形情報転送モード
ISDN基本ユーザ・網インタフェースのレイヤ2において、ポイント・ツー・マルチポイントデータリンクでは、上位レイヤからの情報は非確認形情報転送モードにより(エ)を 用いて転送される。 (2点)
① Qチャネル ② UIフレーム ③ Sビット ④ CEI ⑤ 監視フレーム
出典:令和6年度第2回第3問(4)
解答
②
解説
1. ISDN 基本ユーザ・網インタフェースのレイヤ2 (データリンク層) とは?
- ISDN の レイヤ2 は、データリンク層に該当し、端末 (TE) とネットワーク (NT) 間の通信を制御します。
- この層では、LAPD (Link Access Procedure for the D channel) プロトコルが使用されます。
2. UIフレーム (Unnumbered Information Frame) の特徴
- UIフレームは、番号付けされていない情報フレームで、非確認形情報転送モードで使用されます。
- 主な特徴:
- 非確認形情報転送:
- 送信データに対する受信確認 (ACK) が不要。
- 上位レイヤのデータを迅速に転送。
- 軽量なデータ転送:
- データリンク層のオーバーヘッドが少ない。
- 用途:
- 主に信号メッセージや制御情報の転送に利用。
- 非確認形情報転送:
3. 他の選択肢との比較
選択肢 | 説明 | 適合性 |
---|---|---|
① Qチャネル | Qチャネルは ISDN Bチャネルや Dチャネルとは異なる制御チャネルであり、LAPD プロトコルでは使用されません。 | 不適 |
② UIフレーム | 非確認形情報転送モードで使用されるフレームで、問題文の内容と一致。 | 正解 |
③ Sビット | フレーム構造内の特定のビット(Sビット)は、同期制御や管理に使用されますが、非確認形情報転送には関係しません。 | 不適 |
④ CEI | 「CEI」という表記は ISDN の主要プロトコルやフレーム形式には存在しません。 | 不適 |
⑤ 監視フレーム | データリンク層で使用される制御フレームですが、非確認形情報転送ではなく、番号付き転送モードで使用されます。 | 不適 |
4. まとめ
- ISDN 基本ユーザ・網インタフェースのレイヤ2で、ポイント・ツー・マルチポイントの非確認形情報転送モードでは、UIフレームが使用されます。
参考資料

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問3(5) ISDN チャネルの組み合わせ
図は、ISDN基本ユーザ・網インタフェースの回線交換呼におけるデ ータ転送からRELCOMPまでの一般的な呼制御シーケンスを示したものである。図中のX及びYで使用されるチャネルの組合せとして正しいものは、表に示すイ~へのうち、(オ) である。 (2点)
① イ ② ロ ③ ハ ④ ニ ⑤ ホ ⑥ へ

出典:令和6年度第2回第3問(5)
解答
③
解説
1. 問題の背景
- ISDN 基本ユーザ・網インタフェースは、音声・データを統合して通信を行うために、2つのBチャネル(各64kbps)と1つのDチャネル(16kbps)を使用します。
- 図中の X および Y は、どのチャネルがデータ転送や制御に使用されているかを表しています。
2. 図の読み取り
- データ転送の役割:
- データ転送は、主に Bチャネル を使用します。Bチャネルは、高速データ転送に適しているからです。
- よって、X は 64kbps の Bチャネル です。
- 呼制御 (SIGNALING):
- 呼制御(DISC, REL, REL COMPなど)は、Dチャネルで行われます。Dチャネルは制御専用で、帯域幅が16kbpsです。
- よって、Y は 16kbps の Dチャネル です。
3. まとめ
- X = 64kbps の Bチャネル
- Y = 16kbps の Dチャネル
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※本問は、試験直前期に配布した「技術 穴埋め暗記セレクション2024受験版」で予想的中しました。
技術第3問の解説は以上です。ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
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