令和6年度第2回試験 技術科目第5問の過去問解説です。
問5(1) アーランB式
アーランB式は、呼損率を確率的に導く式であり、(ア)の即時式完全線群のモデルにランダム呼が加わり、呼の回線保留時間分布が指数分布に従い、かつ、損失呼は消滅するという前提に基づいている。
① 入線数と出線数が同数 ② 入線数無限、出線数無限 ③ 入線数有限、出線数有限 ④ 入線数有限、出線数無限 ⑤ 入線数無限、出線数有限
出典:令和6年度第2回第5問(1)
解答
⑤
解説
アーランB式とは
アーランB式は、電話網や通信ネットワークにおける呼損率(ブロッキング確率) を確率的に求めるモデルです。この式は、次のような前提条件に基づいています。
- 入線数無限(Infinite Sources)
- 呼の発生元が無限と仮定します。これにより、新しい呼が継続的にランダムに発生するというモデルが構築されます。
- 入線元が無限であるため、呼の発生確率は時間に依存しません。
- 出線数有限(Finite Servers)
- 同時に接続可能な回線(出線数)は有限です。すべての回線が使用中の場合、新たな呼は処理されずに消滅(損失呼) します。
- 同時に接続可能な回線(出線数)は有限です。すべての回線が使用中の場合、新たな呼は処理されずに消滅(損失呼) します。
- 呼保留時間分布が指数分布に従う
- 呼の保留時間(つまり、回線を使用する時間)は、平均が一定の指数分布に従います。
- 呼の保留時間(つまり、回線を使用する時間)は、平均が一定の指数分布に従います。
- 損失呼は消滅する
- すべての回線が使用中の場合、発生した呼は保留されず、そのまま消滅します。これが「損失呼消滅」の条件です。
- すべての回線が使用中の場合、発生した呼は保留されず、そのまま消滅します。これが「損失呼消滅」の条件です。
選択肢の分析
- ① 入線数と出線数が同数
- 入線数と出線数が同数の場合、このモデルはアーランB式の前提(入線数無限)に反します。
- 入線数と出線数が同数の場合、このモデルはアーランB式の前提(入線数無限)に反します。
- ② 入線数無限、出線数無限
- 出線数が無限の場合、損失呼が発生せず、呼損率を計算する必要がありません。このため、アーランB式の前提には該当しません。
- 出線数が無限の場合、損失呼が発生せず、呼損率を計算する必要がありません。このため、アーランB式の前提には該当しません。
- ③ 入線数有限、出線数有限
- 入線数が有限であると、呼の発生が一定数で制限されるため、アーランB式のモデルには適合しません。
- 入線数が有限であると、呼の発生が一定数で制限されるため、アーランB式のモデルには適合しません。
- ④ 入線数有限、出線数無限
- 出線数が無限である場合、呼損が発生しないため、このモデルもアーランB式には適合しません。
- 出線数が無限である場合、呼損が発生しないため、このモデルもアーランB式には適合しません。
- ⑤ 入線数無限、出線数有限
- 正解。アーランB式の基本モデルに最も適合します。無限の呼の発生元と有限の出線数の組み合わせにより、呼損率を確率的に求めることができます。
- 正解。アーランB式の基本モデルに最も適合します。無限の呼の発生元と有限の出線数の組み合わせにより、呼損率を確率的に求めることができます。
まとめ
アーランB式 は「入線数無限、出線数有限」という条件下で呼損率を計算する式です。選択肢の中でこれに該当するのは ⑤ です。
参考資料
問5(2) リトルの公式
待時式トラヒックモデルにおいて、出線全塞がりのとき生起した呼は接続されるまで待つと ともに待ち呼数に制限がない場合、呼の生起率λ、呼の平均待ち時間W及び平均待ち呼数Lは、L= (イ) の関係で表され、これは、一般に、リトルの公式といわれる。 (2点)
① \(\displaystyle \frac{\lambda}{W} \) ② \(\displaystyle \frac{W}{λ}\) ③ \(\displaystyle \frac{1}{λW}\) ④ λW ⑤ \(\sqrt{λW}\)
出典:令和6年度第2回第5問(2)
解答
④
解説
リトルの公式とは
リトルの公式 は、待ち行列理論の基本的な公式で、システム内の平均待ち呼数(L)、呼の生起率(λ)、平均待ち時間(W) の関係を示す式です。
公式: L=λW
公式の意味
- L(平均待ち呼数)
システム内に存在する平均的な呼(顧客やタスクなど)の数。 - λ(呼の生起率)
単位時間あたりにシステムに到着する呼(またはタスク)の数。 - W(平均待ち時間)
システム内における各呼の平均滞在時間(待ち時間+処理時間)。
公式の適用条件
リトルの公式は、以下の条件下で成立します。
- システムが安定状態にある(呼の到着率とサービス完了率がバランスしている)。
- 待ち行列に制限がない(無制限に待つことができる)。
- サービスが呼を順序よく処理する。
まとめ
リトルの公式L=λW を正しく表現している選択肢は ④ λW です。この公式は待ち行列理論における基本式で、システム内のリソース管理や効率的な設計に重要です。
参考資料

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問5(3) 即時式完全線群のトラヒック
即時式完全線群のトラヒックについて述べた次の二つの記述は、 (ウ) 。 (2点)
A ある回線群に加わった呼量が32.0アーラン、運ばれた呼量が19.2アーランであるとき、この回線群における呼損率は、0.6である。
B ある回線群についてトラヒックを30分間調査し、保留時間別に呼数を集計したところ、 表に示す結果が得られた。調査時間中におけるこの回線群の呼量は、1.5アーランである。

①Aのみ正しい ② Bのみ正しい ③ AもBも正しい ④ AもBも正しくない
出典:令和6年度第2回第5問(3)
解答
②
解説
この問題は、トラヒック理論に基づいて即時式完全線群(Erlang-B式)の呼損率と呼量についての正誤を判断するものです。正解は ② Bのみ正しい です。
選択肢Aについて
- 記述
「ある回線群に加わった呼量が32.0アーラン、運ばれた呼量が19.2アーランであるとき、この回線群における呼損率は0.6である。」 - 考え方
呼損率(\(R_b\)) は以下の式で表されます:
\(\displaystyle R_b = \frac{\text{呼損呼量}}{\text{加わった呼量}}\)
呼損呼量は、加わった呼量(32.0アーラン)から運ばれた呼量(19.2アーラン)を引いた値です。
呼損呼量=32.0−19.2=12.8アーラン
したがって、呼損率は:\(\displaystyle R_b = \frac{12.8}{32.0}\) = 0.4
結論:呼損率は 0.4 であり、記述の「0.6」は誤りです。
選択肢Bについて
- 記述
「ある回線群についてトラヒックを30分間調査し、保留時間別に呼数を集計したところ、表に示す結果が得られた。調査時間中におけるこの回線群の呼量は、1.5アーランである。」 - 表の読み取り
呼量 (A) は以下の式で計算されます:
\(\displaystyle A = \frac{\text{総保留時間}}{\text{調査時間}}\)
1呼当たりの保留時間を呼数で掛け合わせて、総保留時間を求めます:
総保留時間=(100×4)+(150×6)+(200×7)=400+900+1400=2700秒
調査時間は30分、つまり:調査時間=30×60=1800秒
したがって、呼量は:
\(\displaystyle A = \frac{2700}{1800} = 1.5 \text{アーラン}\)
結論:選択肢Bは正しいです。
まとめ
- 選択肢A:誤り(呼損率の計算結果が0.6ではなく0.4)
- 選択肢B:正しい(呼量が1.5アーランと正しく計算される)
正解:② Bのみ正しい
参考資料

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問5(4) ベンダ識別子
ネットワークインタフェースカード(NIC)に固有に割り当てられたMACアドレスの先頭の (エ) はベンダ識別子(OUI)などといわれ、IEEEが管理・割当てを行っている。 (2点)
① 10ビット ② 18ビット ③ 3バイト ④ 4バイト ⑤ 6バイト
出典:令和6年度第2回第5問(4)
解答
③
解説
ネットワークインタフェースカード(NIC)に固有に割り当てられる MACアドレス は、48ビット(6バイト)で構成されています。このMACアドレスは以下の2つの部分に分かれています:
- ベンダ識別子(OUI: Organizationally Unique Identifier)
- 最初の 3バイト(24ビット) に相当します。
- ベンダ識別子は、そのNICを製造した会社を識別するために使用されます。
- IEEE(米国電気電子技術者協会)が管理し、製造業者ごとに割り当てを行っています。
- デバイス固有部分
- 後半の 3バイト(24ビット) に相当します。
- 各ベンダが独自にデバイスごとに一意の値を設定します。
問題のポイント
- MACアドレス全体は 6バイト(48ビット)ですが、この問題では 「先頭の部分」 に関する問いです。
- 先頭の 3バイト(24ビット) がベンダ識別子(OUI)と呼ばれ、IEEEが管理しています。
参考資料

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問5(5) LANを構成する機器
LANを構成する機器について述べた次の記述のうち、正しいものは、(オ) である。
① L2スイッチは、OSI参照モデルにおけるネットワーク層が提供する機能を利用して、異なるネットワークアドレスを持つLAN相互の接続ができる。
② L3スイッチでは、RIP、OSPFなどのルーティングプロトコルを用いることができる。
③ L3スイッチには、一般に、受信したフレームをIPアドレスに基づいて中継する レイヤ2処理部と、受信したパケットをMACアドレスに基づいて中継するレイヤ3 処理部がある。
④ リピータハブは、スター型のLANで使用され、OSI参照モデルにおけるデータリンク層が提供する機能を利用して、信号の増幅、整形及び中継を行う。
⑤ ブリッジは、イーサネットを構成する機器として用いることができ、IPアドレスに基づいて信号の中継を行う。
出典:令和6年度第2回第5問(5)
解答
②
解説
以下に各選択肢の正否を解説します。
① L2スイッチは、ネットワーク層が提供する機能を利用して、異なるネットワークアドレスを持つLAN相互の接続ができる。
- 誤り
- L2スイッチはOSI参照モデルの データリンク層(Layer 2) に基づいて動作します。
- MACアドレス に基づいてフレームを中継しますが、異なるネットワークアドレス(IPアドレス)を持つLAN相互の接続はできません。
- 異なるネットワークを接続するには L3スイッチ または ルータ が必要です。
② L3スイッチでは、RIP、OSPFなどのルーティングプロトコルを用いることができる。
- 正しい
- L3スイッチは、OSI参照モデルの ネットワーク層(Layer 3) の機能を備えています。
- ルーティングプロトコル(例: RIP, OSPF) を使用して、異なるサブネット間の通信を管理することができます。
③ L3スイッチには、受信したフレームをIPアドレスに基づいて中継するレイヤ2処理部と、受信したパケットをMACアドレスに基づいて中継するレイヤ3処理部がある。
- 誤り
- レイヤ3スイッチは IPアドレス に基づくルーティングを行う機能を備えています。
- この選択肢では レイヤ2(MACアドレス)とレイヤ3(IPアドレス)の処理が逆 に記述されています。
④ リピータハブは、スター型のLANで使用され、OSI参照モデルにおけるデータリンク層が提供する機能を利用して、信号の増幅、整形及び中継を行う。
- 誤り
- リピータハブはOSI参照モデルの 物理層(Layer 1) に基づいて動作します。
- 信号の増幅や中継のみを行い、データリンク層(Layer 2)の機能は提供しません。
⑤ ブリッジは、イーサネットを構成する機器として用いることができ、IPアドレスに基づいて信号の中継を行う。
- 誤り
- ブリッジはOSI参照モデルの データリンク層(Layer 2) に基づいて動作します。
- MACアドレス に基づいてフレームを中継しますが、IPアドレスに基づく中継は行いません。
まとめ
L3スイッチはRIPやOSPFなどのルーティングプロトコルを使用できるため、この記述が正しいです。
参考資料

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第5問の解説は以上です。ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
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