令和6年度第2回試験 技術科目第9問の過去問解説です。
問9(1) 光ファイバケーブル施工時のけん引速度
OITDA/TP 11/BW:2019ビルディング内光配線システムでは、幹線系光ファイバケーブル施工時のけん引速度は、布設の安全性を考慮し、1分当たり(ア)メー トル以下を目安としている。 (2点)
① 20 ② 25 ③ 30 ④ 35 ⑤40
出典:令和6年度第2回第9問(1)
解答
①
解説
問題文: 「OITDA/TP 11/BW:2019 ビルディング内光配線システム」において、幹線系光ファイバケーブルの施工時のけん引速度は、布設の安全性を考慮し 1分あたり20メートル以下 を目安としているとされています。
ポイント:
- けん引速度の重要性:
光ファイバケーブルは非常に繊細であり、施工時に過度なけん引速度で布設を行うと、ケーブル内部のファイバが損傷を受ける可能性があります。そのため、安全な施工速度が明確に規定されています。 - OITDA/TP 11/BW:2019:
この技術資料は光ファイバ配線における標準的な施工手順を示しており、光ファイバの損傷リスクを最小限に抑えるための基準値が記載されています。 - 規定:
けん引速度は「1分あたり20メートル以下」とされており、この速度を超えないよう施工者が注意を払う必要があります。
参考資料
問9(2) サブネットワークとホストアドレス
IPv4、クラスレスでのLANシステムの設計において、サブネットマスクの値として255.255.252.0を指定すると、1サブネットワーク当たり最大 (イ)個のホストアドレスが付与できる。 (2点)
① 126 ② 254 ③ 510 ④ 1,022 ⑤ 2,046
出典:令和6年度第2回第9問(2)
解答
④
解説
IPv4のクラスレス設計において、サブネットマスクが 255.255.252.0 の場合、1サブネットワーク当たりのホストアドレス数を求める問題です。
ポイント:
- サブネットマスクのビット計算:
- サブネットマスク 255.255.252.0 は、ビット表記で 11111111.11111111.11111100.00000000 となります。
- サブネット部のビット数は、22ビット(上位22ビットが1)。
- ホスト部のビット数:
- IPv4アドレスは32ビットです。ホスト部は、32ビットからサブネット部を引いたものになります。
- つまり、32 – 22 = 10ビット がホスト部です。
- ホストアドレス数の計算式:
- ホストアドレス数 =\(2^{\text{ホスト部のビット数}} – 2\)
(2を引くのは、ネットワークアドレスとブロードキャストアドレスに使用されるためです) - この場合、\(2^{10}\) – 2 = 1,024 – 2 = 1,022。
- ホストアドレス数 =\(2^{\text{ホスト部のビット数}} – 2\)
選択肢の検証:
- ① 126: ホスト部が7ビットの場合(サブネットマスク 255.255.255.128)
- ② 254: ホスト部が8ビットの場合(サブネットマスク 255.255.255.0)
- ③ 510: ホスト部が9ビットの場合(サブネットマスク 255.255.254.0)
- ④ 1,022: ホスト部が10ビットの場合(サブネットマスク 255.255.252.0)
- ⑤ 2,046: ホスト部が11ビットの場合(サブネットマスク 255.255.248.0)
補足:
クラスレス設計では、柔軟にサブネットマスクを指定することで、必要なホスト数に応じてアドレス空間を効率的に分割できます。
参考資料

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問9(3) 水平ケーブルの最大長さ
JIS X 5150-2:2021では、図に示す水平配線設備モデルにおいて、インタコネクト-TOモデル、クラスEのチャネルの場合、機器コード及びワークエリアコードの長さの総和が14メートルのとき、水平ケーブルの最大長さは(ウ)メートルとなる。ただし、 運用温度は20[℃] 、コードの挿入損失 [dB/m]は水平ケーブルの挿入損失 [dB/m]に対して50パーセント増とする。 (2点)

① 81.0 ② 82.0 ③ 83.0 ④ 84.0 ⑤ 85.0
出典:令和6年度第2回第9問(3)
解答
③
解説
本問の図は水平配線設備モデルを示しており、JIS X 5150-2:2021に基づく計算の基準を視覚的に説明しています。
この問題における水平ケーブルの最大長さについて、次の公式を使い計算で求めます。

本問では、”インタコネクト-TOモデル、クラスEのチャネル”とありますので、
H=107-3-FX
の式を使います。
変数の説明
- H: 水平配線ケーブルの長さ(単位: メートル)
- これが最終的に求める長さです。
- これが最終的に求める長さです。
- F: 機器コードの長さ(単位: メートル)
- 配線モデル内で使われるコードの長さを指します。
- 配線モデル内で使われるコードの長さを指します。
- X: 水平ケーブルの挿入損失に対するコードケーブルの挿入損失比(単位: dB/m)
- コードケーブルが水平ケーブルよりどの程度の挿入損失を持つかを反映します。
- コードケーブルの性能による影響が計算に含まれます。
問題文から得られる情報
- クラスEチャネルの最大チャネル長さ: 100メートル
- 機器コードとワークエリアコードの合計: 14メートル
- 運用温度: 20℃
- コードの挿入損失: 水平ケーブルの挿入損失の50%増。
公式を適用
公式:H=107−3−F×X
ここで、
- F=14(機器コードとワークエリアコードの総和)
- X=1.5(水平ケーブル挿入損失の50%増)
- ※本問では運用温度が20℃のため、温度による損失補正は必要なし。
計算手順
- 公式に値を代入
- H=107−3−(14×1.5)
- 計算の実行
- H=107−3−21
- H=83.0
ポイント
- 構成の違い
- クロスコネクタ–TOモデル
- クロスコネクタを経由して通信アウトレット(TO)に接続する構成。
- ケーブル長が短くなる傾向があります。
- インタコネクト–TOモデル
- 配線構成がより直接的で、ケーブル長が少し長くなる傾向があります。
- クロスコネクタ–TOモデル
- カテゴリ(ケーブル性能)の影響
- カテゴリが高くなるほど(クラスE → クラスF)、ケーブルの性能が向上し、計算式に影響を与えます。
- 温度による影響
- ケーブルは非シールドの場合、温度が高くなるにつれて挿入損失が増加します。
- 20℃~40℃: 1℃上昇ごとに 0.4% 減少。
- 40℃~60℃: 1℃上昇ごとに 0.6% 減少。
- ケーブルは非シールドの場合、温度が高くなるにつれて挿入損失が増加します。
参考資料

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問9(4) オートネゴシエーション機能
ツイストペアケーブルを使用したイーサネットによるLANにおいて、対向する二つの機器のオートネゴシエーション機能が共に有効化されている場合、双方の機器が(エ)信号を送受信することで互いのサポートする通信速度と通信モードを検出し、決められた優先順位に基づき適切な通信速度と通信モードを自動的に決定する。 (2点)
① SETUP ② 擬似ランダム ③ ACK ④ ベースバンド ⑤ FLPバースト
出典:令和6年度第2回第9問(4)
解答
⑤
解説
ツイストペアケーブルを使用したイーサネットで、オートネゴシエーション機能が有効な場合、双方の機器が特定の信号を使って通信速度や通信モードを自動的に決定する仕組みについて問われています。
オートネゴシエーション機能とは
- オートネゴシエーションは、イーサネット規格(IEEE 802.3)で定義されている機能です。
- 対向する通信機器(例えば、スイッチとPC)が**リンク速度(10Mbps、100Mbps、1Gbps など)や通信モード(全二重/半二重)**を自動的に協議して最適な設定を選びます。
FLPバーストについて
- FLP(Fast Link Pulse)バーストとは、オートネゴシエーション時に使用される特殊な信号です。
- FLPバースト信号は、データリンク層でリンクパートナーに情報を送信するために使用されます。
- この信号には、以下の情報が含まれます:
- 対応可能な通信速度
- サポートされる通信モード(全二重/半二重)
- FLP信号が送受信されることで、双方の機器が互いの能力を把握し、優先順位に基づいて最適な設定を選択します。
選択肢の解説
①SETUP
設定を意味する一般的な用語であり、オートネゴシエーションで使用される具体的な信号名ではありません。
②擬似ランダム
擬似ランダム信号は、一般的にはエラー検出やデータ暗号化で使用されるものであり、オートネゴシエーションには関係ありません。
③ACK
ACK(Acknowledgment)は、データ通信プロトコルで確認応答を意味する信号ですが、オートネゴシエーションで使用されるものではありません。
④ベースバンド
ベースバンドは信号の伝送方式に関する用語であり、オートネゴシエーションの具体的な信号とは無関係です。
⑤FLPバースト
正解。FLPバースト信号は、オートネゴシエーションで通信速度と通信モードを決定するために使用される信号です。
まとめ
正解は ⑤ FLPバースト です。
FLPバーストは、双方の機器が対応する通信モードを協議し、リンクを確立するための重要な役割を果たします。
参考資料

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※本問は、試験直前期に配布した「技術 穴埋め暗記セレクション2024受験版」で予想的中しました。
問9(5) UTPケーブルの余長処理
UTPケーブルの配線は、一般に、ケーブルルートの変更などに伴うケーブル終端部の多少の延長や移動を想定して施工されるが、機器やパッチパネルが高密度で収納されるラック内での余長処理において、小さな径のループや過剰なループ回数による施工を行うと、ケーブル間の同色対どうしで(オ) が発生し、漏話特性劣化の原因となることがある。 (2点)
① クロスペア ② クロスワイヤ ③ エイリアンクロストーク ④ ショートリンク ⑤ ハムノイズ
出典:令和6年度第2回第9問(5)
解答
③
解説
UTP(Unshielded Twisted Pair)ケーブルの施工における過剰なループや小さな径のループが、ケーブル間の干渉を引き起こし、通信性能に悪影響を与える可能性について問われています。
UTPケーブルと施工時の注意点
- UTPケーブルは、信号伝送時にツイスト構造によって外部ノイズや漏話(隣接する信号の干渉)を低減するように設計されています。
- 適切な施工を行わない場合、以下の問題が発生する可能性があります:
- ケーブル内のペア間での内部クロストーク(NEXT/FEXT)
- 隣接するケーブル間での外部クロストーク(Alien Crosstalk)
エイリアンクロストーク(Alien Crosstalk)とは
- エイリアンクロストークは、異なるケーブル間で発生するノイズ干渉です。
- 特に高密度なラック内や、余長処理時に発生しやすい。
- ケーブルが過剰に曲げられたり、小さなループを作ったりすると、隣接するケーブル間の信号干渉が発生する可能性があります。
- この干渉により、漏話特性が劣化し、通信エラーやデータ損失が生じることがあります。
選択肢の解説
①クロスペア
クロスペアはケーブルの誤配線を指すものであり、本問題の文脈には当てはまりません。
②クロスワイヤ
クロスワイヤも誤配線の一種であり、特定のペアの配線が誤って接続された状態を指します。これも該当しません。
③エイリアンクロストーク
正解。ケーブル間の干渉で漏話特性が劣化する原因を正しく示しています。
④ショートリンク
ショートリンクは、短すぎるケーブル配線のことで、信号の反射やインピーダンス不整合の問題を指します。本問題の状況には該当しません。
⑤ハムノイズ
ハムノイズは、電源やアース不良などが原因で発生する低周波の干渉であり、UTPケーブルの施工には直接関係しません。
まとめ
正解は ③ エイリアンクロストーク です。
UTPケーブル施工時には、ケーブルの曲げやループ処理を適切に行い、隣接するケーブルとの干渉を防ぐことが重要です。
参考資料

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※本問は、試験直前期に配布した「技術 穴埋め暗記セレクション2024受験版」で予想的中しました。
技術第9問の解説は以上です。ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
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