この記事は、工事担任者試験の直前対策資料である「工事担任者 基礎 穴埋め暗記セレクション 総合通信2024受験版」に対応しています。PDFは期間限定で下記リンクより配布いたします。
基礎→https://drive.google.com/file/d/1bpA01px0v0FhtfG4l50v3nZ4gTq95lpn/view?usp=sharing
資料は必要最小限の記述に絞りスリム化を図っていますが、こちらのブログでは、出典となる過去問も引用して掲載しています。問題集としてもご利用いただけるほか、解説を確認する目的にもお役立ていただけます。
なお、分量が多いため、大問ごとに記事を分けて掲載しております。
皆様の試験対策に微力ながらお力添えできれば幸いです。心より、皆様の合格をお祈り申し上げます。
問題1 n形半導体
出典:令和5年度第1回第2問(1)
解答
④
解説
シリコンに不純物を加えた際の半導体の性質:n形半導体の生成
シリコンをベースとする半導体に、特定の不純物を加えることで、その電気的特性を制御できます。この問題は、n形半導体を形成するために必要な不純物(ドーパント)の種類を問うものです。
n形半導体とは
- n形半導体は、**負の電荷(電子)**が主なキャリアとなる半導体です。
- シリコン(Si)は4価の元素であり、4つの価電子を持っています。このシリコン結晶中に5価の元素(リンやアンチモン)を微量に加えることで、n形半導体が生成されます。
5価元素の役割
- 5価元素(例:リン(P)、アンチモン(Sb))は、5つの価電子を持っています。
- シリコン結晶中で共有結合に必要なのは4つの電子であり、5価元素のうちの1つの電子が余ります。
- この余った電子は、自由電子として電気を運ぶキャリアとなり、半導体の電気伝導性を高めます。
他の選択肢について
- 2価(選択肢①)
2価元素は、主に酸素や硫黄などであり、半導体の電気的特性には関与しません。 - 3価(選択肢②)
3価元素(例:ホウ素(B)、ガリウム(Ga))を添加すると、p形半導体が生成されます。3価元素は電子を1つ欠いた状態(ホール)を形成します。 - 4価(選択肢③)
4価元素はシリコン自身や炭素などであり、不純物としての効果はありません。 - 6価(選択肢⑤)
6価元素(例:硫黄やセレン)は、通常の半導体には使用されません。
まとめ
高純度のシリコンに5価元素(リンやアンチモン)を加えることで、自由電子が主要なキャリアとなるn形半導体が生成されます。この原理は、トランジスタやダイオードなどの半導体デバイスの基礎として非常に重要です。
公式を覚えるだけでなく、不純物の種類と役割をしっかり理解して、問題に対応できるようにしましょう!
参考資料
該当ページ 36
該当ページ 57
問題2 半導体中の濃度差
出典:令和3年度第1回第2問(1)
解答
②
解説
半導体中の自由電子や正孔の移動現象:拡散について
この問題は、半導体物理学で重要な自由電子や正孔の挙動について問うものです。半導体中で濃度差が生じたときに発生する現象を理解することが求められます。
拡散とは
- 拡散は、濃度差があるときに、粒子(ここでは自由電子や正孔)が濃度の高い場所から低い場所へ移動する現象です。
- この現象は、半導体中の電荷キャリア(自由電子や正孔)が統計的に均一になろうとする自然な振る舞いによるものです。
半導体中の自由電子や正孔の移動現象:拡散について
この問題は、半導体物理学で重要な自由電子や正孔の挙動について問うものです。半導体中で濃度差が生じたときに発生する現象を理解することが求められます。
半導体での拡散の具体例
- pn接合:
- pn接合において、p型半導体(正孔の濃度が高い側)からn型半導体(自由電子の濃度が高い側)に、自由電子や正孔が拡散します。
- 拡散により、空乏層が形成され、内部電場が生じます。この内部電場が拡散を抑制する力となります。
- キャリア輸送:
- 半導体デバイスでは、拡散とドリフト(電場による移動)の2つのメカニズムがキャリア輸送を支配しています。
他の選択肢について
- 整合(選択肢①)
- 「整合」という用語は一般的には半導体物理には使われません。文脈に合わないため不正解。
- 拡散(選択肢②)
- 正解。濃度差が原因でキャリアが移動する現象を指します。
- イオン化(選択肢③)
- イオン化は、原子が電子を失ったり得たりしてイオンになる現象であり、拡散とは無関係です。
- 再結合(選択肢④)
- 再結合は、自由電子と正孔が結合して消失する現象を指し、拡散とは異なります。
- 帰還(選択肢⑤)
- 帰還(フィードバック)は、回路やシステム制御に関連する用語であり、半導体中のキャリア移動とは関係ありません。
まとめ
半導体中の自由電子や正孔が濃度の高い方から低い方へ移動する現象は拡散です。この現象は、pn接合や半導体デバイスの動作原理において非常に重要な役割を果たしています。
正しい理解を深めるために、拡散とドリフト(電場による移動)の違いもあわせて学習しておきましょう!
参考資料
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該当ページ 36
該当ページ 58
問題3 サイリスタ
出典:令和5年度第2回第2問(1)
解答
②
解説
サイリスタの構造と役割:スイッチング素子としての働き
サイリスタは、電力制御や整流において重要な役割を果たす半導体素子です。この問題では、サイリスタの構造と用途について問われています。
サイリスタの特徴
- サイリスタは、p形半導体とn形半導体を交互に重ねたpnpn構造を持つ半導体素子です。
- 主な役割は、電流をオン・オフするスイッチング動作を行うことです。
サイリスタの基本動作
- スイッチング機能:
- サイリスタは、特定の条件下で「オン」状態にし、トリガー信号がなくても電流を流し続けることができます。
- 「オフ」にするには、外部で電流を止める必要があります。
- シリコン制御整流素子(SCR:Silicon Controlled Rectifier):
- サイリスタは、直流回路や交流回路で電力制御を行う素子としてよく使用されます。
- 用途:
- 電力制御(交流から直流への変換、モータ制御など)
- 電流のスイッチング
- 電圧制御
他の選択肢について
- 受光(選択肢①)
- 光を検知する半導体素子(例:フォトダイオード)であり、サイリスタの用途ではありません。
- スイッチング(選択肢②)
- 正解。サイリスタの主な役割です。
- 発光(選択肢③)
- LED(発光ダイオード)のような光を放出する半導体素子の特徴であり、サイリスタには該当しません。
- 圧電(選択肢④)
- 圧電素子は、圧力や振動を電気信号に変換するための素子であり、サイリスタの用途とは無関係です。
- フィルタリング(選択肢⑤)
- 電気信号を特定の周波数帯域で制御する回路に用いられるもので、サイリスタの用途ではありません。
まとめ
サイリスタは、pnpnの4層構造を持つスイッチング素子であり、電力制御や整流において重要な役割を果たします。特に、高電力回路でのオン・オフ制御に使用されるため、電力機器や産業機械など幅広い分野で活躍しています。
サイリスタの基本動作や用途をしっかり理解して、試験や実務に役立てましょう!
参考資料
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問題4 定電圧ダイオード
出典:令和4年度第1回第2問(4)
解答
①
解説
定電圧ダイオード(ツェナーダイオード)の動作原理:降伏現象
定電圧ダイオード、特にツェナーダイオードは、電圧を安定させるための重要な半導体素子です。この問題は、その動作原理である「降伏現象」について問うものです。
定電圧ダイオードの動作
定電圧ダイオード(ツェナーダイオード)は、特定の電圧(降伏電圧)で動作するダイオードであり、逆方向に使用されます。
- 降伏現象(Breakdown):
- ダイオードに逆方向電圧を加えると、ある電圧値を超えた時点で急激に電流が流れる現象を「降伏現象」といいます。
- この電圧値を**降伏電圧(またはツェナー電圧)**と呼びます。
- 降伏後も電圧は一定に保たれるため、電源の安定化や電圧リファレンスとして利用されます。
- 用途:
- 定電圧回路
- 過電圧保護
- 電圧基準の生成
他の選択肢について
- 降伏(選択肢①)
- 正解。逆方向電圧が一定値を超えると発生する現象です。
- ドリフト(選択肢②)
- キャリアが電場により移動する現象であり、降伏とは異なります。
- 誘導(選択肢③)
- 誘導電流や電磁誘導を指し、降伏現象とは関係ありません。
- 漏話(選択肢④)
- 漏話は回路や信号間での干渉を指す用語であり、降伏現象には関連しません。
- 発振(選択肢⑤)
- 発振は電気信号が周期的に変化する現象を指し、降伏とは異なります。
ツェナーダイオードの降伏特性
降伏電圧 Vz において、ツェナーダイオードの電圧は一定に保たれます。この特性を活かして、以下のような用途に利用されます:
- 電圧安定化:一定電圧を供給するためのリファレンス回路。
- 過電圧保護:降伏電圧を超える場合に保護素子として機能。
まとめ
定電圧ダイオード(ツェナーダイオード)は、逆方向に加えた電圧が降伏電圧を超えると急激に電流が増加する「降伏現象」を利用して、電圧を一定に保つ半導体素子です。この動作原理を理解することで、電源回路の設計や保護回路の構築に役立てることができます。
参考資料
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該当ページ 60
問題5 バリスタ
出典:令和4年度第2回第2問(4)
解答
①
解説
バリスタの特性と用途:電圧-電流特性に基づく動作
バリスタは、過電圧の抑制やノイズの吸収に用いられる重要な半導体素子です。この問題では、その特性である「電圧-電流特性」について問われています。
バリスタの特徴
- 電圧-電流特性:
- バリスタは、電圧と電流の関係が非直線的であり、特に高電圧が印加された際に急激に電流を流す性質を持っています。
- この特性により、バリスタは過電圧を抑制するためのデバイスとして利用されます。
- 動作原理:
- 通常時(電圧が低い場合)では、高い抵抗を示し、ほとんど電流を流しません。
- 一定の電圧(しきい値)を超えると、抵抗が急激に下がり、大電流を流すことで過電圧を抑制します。
- 用途:
- 電源回路や通信機器での過電圧保護。
- 衝撃性雑音(サージ電圧)の吸収。
他の選択肢について
- 電圧-電流(選択肢①)
- 正解。バリスタの特性を表す正しい関係です。
- 損失-位相(選択肢②)
- これは高周波回路や材料特性に関連する用語であり、バリスタとは無関係です。
- 静電容量-温度(選択肢③)
- コンデンサなどの特性に関連する用語であり、バリスタには該当しません。
- 周波数-振幅(選択肢④)
- 振動や信号に関連する特性を表しますが、バリスタの動作原理には関係ありません。
まとめ
バリスタは、電圧-電流特性が非直線的であることを利用し、過電圧の抑制やノイズの吸収に役立つ半導体素子です。この特性により、電源回路や電子機器の保護に広く利用されています。
バリスタの特性を理解することで、電気回路の安全性を高める設計が可能になります。
参考資料
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該当ページ 38
該当ページ 88
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