問題6 波形整形回路

出典:令和4年度第1回第2問(3)
解答
⑤
解説
波形整形回路のスライサ:中央部の波形を取り出す
波形整形回路は、特定の基準電圧に基づいて信号波形を加工するための回路です。この問題では、上下の基準電圧で信号を切り取り、中央部分のみを取り出す回路について問われています。
スライサとは
- スライサ回路は、特定の基準電圧を設定し、その間にある波形成分だけを取り出す回路です。
- 上下の基準電圧を超える部分の信号はクリップ(切り取り)され、基準電圧内の中央部分だけが出力されます。
- 主に波形整形や信号処理に用いられます。
動作原理
- 基準電圧の設定:
- 回路には2つの基準電圧(上限と下限)が設定されています。
- ダイオードの役割:
- ダイオードを用いることで、基準電圧を超えた部分をクリップ(除去)します。
- 波形整形:
- 上限基準電圧を超える信号と、下限基準電圧を下回る信号が除去され、中央部分の波形のみが出力されます。
用途
- 信号処理:特定の信号成分を強調または抽出。
- ノイズ除去:基準電圧外の不要な信号成分を除去。
- デジタル回路の前段処理:アナログ信号から有効な信号成分を取り出す。
他の選択肢について
- フリップフロップ(選択肢①)
- デジタル回路で用いられる記憶素子の一種であり、スライサ回路とは異なります。
- ドライバ(選択肢②)
- 信号を増幅して負荷に伝える役割を持つ回路で、波形整形とは無関係です。
- ベースクリッパ(選択肢③)
- 信号の基準レベルをクリップする回路ですが、中央部だけを取り出すスライサ回路とは異なります。
- ピーククリッパ(選択肢④)
- 信号のピーク部分をクリップする回路であり、スライサとは異なります。
- スライサ(選択肢⑤)
- 正解。上下の基準電圧で波形を整形し、中央部分だけを取り出す回路です。
まとめ
スライサ回路は、上下の基準電圧を設定し、その間の波形部分だけを取り出す波形整形回路です。この特性は、信号処理やノイズ除去など、幅広い用途で活用されています。
試験においては、回路の動作原理を正確に理解し、他の波形整形回路との違いを押さえておきましょう!
参考資料
問題7 トランジスタの接地方式

出典:令和5年度第1回第2問(5)
解答
③
解説
トランジスタ増幅回路の接地方式:ベース接地回路の特性
トランジスタ増幅回路は、接地方式(どの端子を共通接地とするか)によって特性が変わります。この問題では、入力インピーダンスと出力インピーダンスに注目して、該当する接地方式を問うています。
ベース接地回路の特徴
- 入力インピーダンス:
- 入力端子がエミッタであり、エミッタ電流の小さな変化に対して入力電圧がほとんど変わらないため、非常に低い値を持ちます。
- 出力インピーダンス:
- 出力端子がコレクタであり、コレクタ側は高いインピーダンス特性を示します。結果として、出力インピーダンスが最も高い増幅回路になります。
- 電流利得:
- ベース接地回路の電流利得はほぼ1(つまり、増幅はありません)ですが、高速な周波数特性を持つため、高周波回路で用いられることが多いです。
トランジスタの接地方式の比較
接地方式 | 入力端子 | 出力端子 | 入力インピーダンス | 出力インピーダンス | 主な用途 |
---|---|---|---|---|---|
ベース接地 | エミッタ | コレクタ | 小さい | 大きい | 高周波増幅 |
エミッタ接地 | ベース | コレクタ | 中程度 | 中程度 | 一般的な電圧増幅 |
コレクタ接地 | ベース | エミッタ | 大きい | 小さい | インピーダンス変換) |
他の選択肢について
- コレクタ接地(選択肢①)
- 入力インピーダンスが非常に高く、出力インピーダンスが低い回路です。インピーダンス変換用途に使用されます。
- エミッタ接地(選択肢②)
- 一般的な増幅回路で、入力・出力インピーダンスは中程度です。
- ベース接地(選択肢③)
- 正解。入力インピーダンスが最も小さく、出力インピーダンスが最も大きい回路です。
- カソード接地(選択肢④)
- 真空管回路における用語であり、トランジスタ回路では使用されません。
- ソース接地(選択肢⑤)
- FET(電界効果トランジスタ)の接地方式であり、トランジスタの接地方式とは直接関係がありません。
まとめ
ベース接地回路は、入力インピーダンスが非常に小さく、出力インピーダンスが非常に大きい特性を持つ増幅回路です。この特性により、高周波回路で使用されることが多いのが特徴です。接地方式ごとの特性を比較して、問題のポイントを正確に理解しましょう!
参考資料

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問題8 トランジスタのバイアス回路

出典:令和5年度第2回第2問(4)
解答
④
解説
トランジスタ増幅回路におけるバイアス回路の役割:動作点の設定
トランジスタを用いた増幅回路では、正しく動作させるために「バイアス回路」によって動作点を設定する必要があります。この問題では、バイアス回路の役割に関する基本的な知識が問われています。
動作点とは
- 動作点(Q点):
トランジスタを用いた回路において、入力信号がない状態でトランジスタがどのような動作をするかを決定するポイントを指します。- 電圧:コレクタ-エミッタ間電圧(\(V_{CE}\))
- 電流:コレクタ電流(\(I_C\))
- 役割:
動作点を適切に設定することで、入力信号が小さい範囲で増幅が可能になります。また、動作点が適切でない場合、信号のひずみや増幅動作の停止が起こります。
バイアス回路の役割
- バイアス回路は、トランジスタに適切な直流電流を供給することで、動作点を設定します。
- 動作点は、入力信号に対するトランジスタの出力特性を安定化させるために重要です。
他の選択肢について
- 発振周波数(選択肢①)
- 発振回路の特性に関する用語で、増幅回路の動作点設定とは無関係です。
- 遮断周波数(選択肢②)
- トランジスタ回路の周波数特性に関連する用語で、バイアス回路の役割ではありません。
- 飽和点(選択肢③)
- トランジスタが飽和領域に達する電圧・電流のポイントであり、バイアス設定の直接の目的ではありません。
- 動作点(選択肢④)
- 正解。トランジスタ増幅回路の安定動作のために設定する重要なポイントです。
- 降伏電圧(選択肢⑤)
- ダイオードやトランジスタの降伏現象に関連する用語であり、バイアス回路の役割とは無関係です。
まとめ
トランジスタ増幅回路では、バイアス回路によって**動作点(Q点)**を適切に設定することが必要不可欠です。これにより、入力信号がひずむことなく増幅され、回路が安定して動作するようになります。
動作点の設定やバイアス回路の役割を理解することは、トランジスタ回路設計の基礎です。この知識を実務や試験に役立てましょう!
参考資料

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問題9 トランジスタの出力特性

出典:令和3年度第1回第2問(5)
解答
②
解説
トランジスタの出力特性:エミッタ接地方式の特性関係
トランジスタの静特性の中で「出力特性」は、エミッタ接地方式におけるコレクタ電流とコレクタ-エミッタ間の電圧の関係を示す重要なグラフです。この問題では、出力特性における電流と電圧の関係を問うています。
出力特性とは?
出力特性とは、トランジスタのエミッタ接地方式において、以下の条件で測定される静特性の一つです:
- ベース電流\( I_B \)を一定に固定。
- 入力側の電流(ベース電流)を一定にした状態で、出力側の動作を観測します。
- コレクタ電流 \( I_C \) とコレクタ-エミッタ間電圧\( V_{CE} \) の関係を示す。
- コレクタ-エミッタ間の電圧を変化させた際の、コレクタ電流の動きをグラフで示します。
出力特性のグラフ
https://jeea.or.jp/course/contents/02106/
- 横軸:コレクタ-エミッタ間電圧 \(V_{CE}\)
- 縦軸:コレクタ電流 \(I_C\)
グラフは以下のような特徴を持ちます:
- 線形領域:
- \(V_{CE} \) が小さいとき、コレクタ電流\(I_C\) は \(V_{CE} \) に比例して増加します。
- 飽和領域:
- \(V_{CE} \) がある一定値を超えると、コレクタ電流 \(I_C\) はほぼ一定になります(トランジスタが正常に動作する領域)。
- 遮断領域:
- ベース電流\(I_B \) がゼロに近い場合、コレクタ電流もほぼゼロとなります。
他の選択肢について
- ベース-コレクタ間の電圧\(V_{BC} \)(選択肢①)
- トランジスタの動作特性に関わる要素ではありますが、出力特性とは直接の関係がありません。
- コレクタ-エミッタ間の電圧 \(V_{CE} \)(選択肢②)
- 正解。出力特性の横軸として用いられる電圧です。
- エミッタ電流\(I_E \)(選択肢③)
- トランジスタ全体の電流ですが、出力特性では観測対象ではありません。
- ベース-エミッタ間の電圧 \(V_{BE} \)(選択肢④)
- 入力特性や遷移周波数の特性には関係しますが、出力特性とは無関係です。
まとめ
トランジスタの出力特性は、エミッタ接地方式において、コレクタ電流\(I_C \)
とコレクタ-エミッタ間電圧\(V_{CE} \) の関係を示します。この特性を理解することで、トランジスタ回路の動作領域を把握し、増幅器としての動作を正確に設計できるようになります。
試験や実務では、入力特性・出力特性・電流伝達特性の違いをしっかり理解しておきましょう!
参考資料

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問題10 トランジスタの電流伝達特性

出典:令和3年度第2回第2問(5)
解答
①
解説
トランジスタの電流伝達特性:ベース電流とコレクタ電流の関係
トランジスタの静特性の一つである「電流伝達特性」は、エミッタ接地方式で重要な特性の一つです。この問題では、ベース電流と関連する電流について問われています。
電流伝達特性とは?
- 電流伝達特性は、トランジスタの入力電流であるベース電流\(I_B \) と、出力電流であるコレクタ電流 \(I_C \) の関係を示す特性です。
- コレクタ-エミッタ間の電圧\(V_{CE} \) を一定に保つ。
- ベース電流 \(I_B \)を変化させた際のコレクタ電流\(I_C \) の変化を測定する。
電流利得(増幅率)
- コレクタ電流\(I_C \)とベース電流\(I_B \) の比を「直流電流増幅率 β 」または「hFE」と呼びます。 \( \beta = \frac{I_C}{I_B} \)
- 電流伝達特性グラフは、この直流電流増幅率をもとに描かれます。
他の選択肢について
- コレクタ電流\(I_C \) (選択肢①)
- 正解。電流伝達特性で観測される出力側の電流です。
- ベース電圧\(V_B \) (選択肢②)
- ベース端子の電圧ですが、電流伝達特性とは直接関係ありません。
- エミッタ電流 \(I_E \) (選択肢③)
- エミッタ電流は入力と出力の合計ですが、電流伝達特性では考慮されません。
- ベース-エミッタ間の電圧\(V_{BE} \) (選択肢④)
- 入力特性で観測される電圧であり、電流伝達特性には関係しません。
グラフの特徴
- 横軸:ベース電流\(I_B \)
- 縦軸:コレクタ電流\(I_C \)
- 直線的な増加を示し、電流利得 β が一定の範囲で増幅されることを確認できます。
まとめ
トランジスタの電流伝達特性は、ベース電流とコレクタ電流の関係を示し、エミッタ接地方式で動作を理解する上で重要な指標です。この特性を把握することで、トランジスタ回路の設計や動作解析に役立ちます。
正確な静特性の理解を深め、試験や実務に活用しましょう!
参考資料

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