この記事は、工事担任者試験の直前対策資料である「工事担任者 基礎 穴埋め暗記セレクション 総合通信2024受験版」に対応しています。PDFは期間限定で下記リンクより配布いたします。
基礎→https://drive.google.com/file/d/1bpA01px0v0FhtfG4l50v3nZ4gTq95lpn/view?usp=sharing
資料は必要最小限の記述に絞りスリム化を図っていますが、こちらのブログでは、出典となる過去問も引用して掲載しています。問題集としてもご利用いただけるほか、解説を確認する目的にもお役立ていただけます。
なお、分量が多いため、大問ごとに記事を分けて掲載しております。
皆様の試験対策に微力ながらお力添えできれば幸いです。心より、皆様の合格をお祈り申し上げます。
問題1 漏話の大きさ
出典:令和5年度第1回第4問(2)
解答
②
解説
平衡対ケーブルの漏話と誘導回線インピーダンスの関係
平衡対ケーブルが外部からの干渉(特に誘導回線からの電磁的結合)による漏話をどの程度受けるかは、ケーブルの構造だけでなく、外部回路のインピーダンス特性にも依存します。この問題では、誘導回線のインピーダンスと漏話の関係を問うています。
漏話とは?
漏話(クロストーク)は、信号伝送に使用されるケーブルが近接する別の回線(誘導回線)からの電磁的干渉を受ける現象を指します。この漏話の大きさは、次の要因に依存します:
- 誘導回線のインピーダンス
- 誘導回線のインピーダンスが高いほど、結合される電流が小さくなり、漏話が減少します。
- 逆に、インピーダンスが低い場合、電流が増加して漏話が大きくなります。
- 結合の効率
- ケーブルの構造(ツイストペア構造やシールドの有無)によっても漏話の大きさが変わります。
誘導回線インピーダンスとの関係
漏話の大きさは、誘導回線のインピーダンス Z に 反比例 します。これは以下の関係式で表されます:\( I = \frac{V}{Z} \)
- I:誘導回線から結合される電流
- V:誘導回線の信号電圧
- Z:誘導回線のインピーダンス
インピーダンス Z が大きいほど、結合される電流 I は小さくなり、漏話が減少することがわかります。
まとめ
平衡対ケーブルが誘導回線から受ける漏話の大きさは、誘導回線のインピーダンスに反比例します。したがって、インピーダンスを高く設計することで漏話の影響を抑えることが可能です。
参考資料
該当ページ 74
該当ページ 119
問題2 同軸ケーブルの伝送損失
出典:令和5年度第2回第4問(2)
解答
②
解説
同軸ケーブルの伝送損失と信号周波数の関係
同軸ケーブルは、通信や信号伝送に広く用いられるケーブルであり、その伝送損失は信号の周波数に依存します。この問題では、信号の周波数が変化したときの伝送損失の変化を問うています。
伝送損失の特徴
- 同軸ケーブルの伝送損失は、主に 周波数の平方根 に比例します。
- 周波数 f が増加すると、伝送損失は以下の式に従います:
ここで:
- L:伝送損失(dB単位で表現)
- f:信号の周波数(Hz)
周波数4倍の場合
周波数が 4 倍になると、伝送損失は次のように変化します:
\( L_2 = \sqrt{4} \cdot L_1 = 2 \cdot L_1 \)つまり、周波数が4倍になると、伝送損失は約 2倍 になります。
実用上のポイント
- 伝送距離が長く、周波数が高い場合、同軸ケーブルの伝送損失は大きくなるため、高周波帯での長距離通信では 光ファイバ の使用が一般的です。
- ケーブル選択時には、周波数特性を考慮し、損失を抑える設計が必要です。
まとめ
同軸ケーブルの伝送損失は信号の周波数の平方根に比例します。周波数が4倍になると、損失は約2倍になるため、この特性を理解してケーブルの適切な選択や設計に活用しましょう。
参考資料
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該当ページ 75
該当ページ 121
問題3 メタリック線路の減衰定数
出典:令和4年度第2回第4問(2)
解答
②
解説
メタリック線路の減衰定数と周波数の関係
メタリック線路の減衰定数は、信号の伝送における損失を表す重要なパラメータであり、線路の一次定数と信号の特性に依存します。この問題では、減衰定数に影響を与える信号の特性について問われています。
減衰定数とは?
- 減衰定数は、伝送線路を伝わる信号の振幅が減少する割合を示します。
- 単位長さ当たりの減衰量をdB/kmなどで表します。
線路の一次定数と減衰定数の関係
メタリック線路の一次定数は以下の4つです:
- 抵抗 (R):単位長さあたりの線路の直流抵抗
- インダクタンス (L):単位長さあたりの自己インダクタンス
- コンダクタンス (G):単位長さあたりの漏れ電流に関係する定数
- 静電容量 (C):単位長さあたりの導体間静電容量
減衰定数 α はこれらの一次定数と信号の周波数 f によって次の式で表されます:
\( \alpha = \sqrt{(R + j \omega L)(G + j \omega C)} \)ここで、ω=2πf(角周波数)
周波数の影響
- 信号の周波数 f が高くなると、以下の理由で減衰定数が増加します:
- スキン効果により、導体の有効断面積が減少し、抵抗 R が増加。
- 漏れ電流や誘導成分が周波数と共に増大。
- したがって、減衰定数は信号の周波数に依存します。
他の選択肢について
- 信号の位相(選択肢①)
- 減衰定数は信号の位相には影響されません。
- 信号の周波数(選択肢②)
- 正解。減衰定数は周波数に依存し、周波数が高くなると増加します。
- 減衰ひずみ(選択肢③)
- 減衰定数はひずみではなく、一次定数と周波数によって決まります。
- 負荷インピーダンス(選択肢④)
- 負荷インピーダンスは反射やマッチングに関与しますが、減衰定数そのものには関与しません。
- 信号の振幅(選択肢⑤)
- 振幅そのものは減衰定数に影響を与えません。
まとめ
メタリック線路の減衰定数は、線路の一次定数と信号の周波数に依存します。特に、周波数が高くなるほど減衰定数が大きくなる特性を理解しておくことが重要です。
参考資料
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該当ページ 75
該当ページ 114
問題4 信号のひずみ
出典:令和5年度第1回第4問(4)
解答
②
解説
非直線ひずみ:伝送回路における信号のひずみ
通信や信号処理において、伝送回路で発生する信号のひずみは、システムの性能や信号の正確な伝送に大きな影響を与えます。この問題は、特定の種類のひずみの発生原因とその名称について問うています。
非直線ひずみとは?
- 非直線ひずみは、伝送回路の入力信号と出力信号が比例関係にない場合に発生します。
- 比例関係が保たれていれば、入力信号と出力信号の形状は同一で、ひずみは生じません。
- このひずみは、信号の振幅や周波数特性に応じて、出力が入力と異なる形状を示す現象を指します。
非直線ひずみの発生原因
- 増幅器の動作範囲外:
- 増幅器がリニア領域を超えた動作をすると、信号が歪む。
- システムの非線形性:
- 伝送路や電子回路が非線形特性を持つ場合、信号の一部が変形します。
- 結果的な影響:
- 非直線ひずみにより信号波形が歪むと、情報の正確な伝達が困難になります。
他の選択肢について
- 群遅延(選択肢①)
- 信号の異なる周波数成分が伝送路で異なる遅延時間を持つことで発生するひずみです。
- 非直線(選択肢②)
- 正解。入力と出力の関係が非線形である場合に発生するひずみです。
- 波形(選択肢③)
- 波形ひずみは、非直線ひずみや位相ひずみの結果として発生することがあります。
- 位相(選択肢④)
- 信号の異なる周波数成分間で位相が異なる変化を示した場合に発生するひずみです。
- 減衰(選択肢⑤)
- 信号の振幅が減少する現象を指し、ひずみとは異なります。
まとめ
非直線ひずみは、入力と出力の信号電圧が比例関係にない場合に発生します。この現象を理解することで、伝送回路や増幅器の設計における非線形性の影響を適切に抑制できるようになります。
参考資料
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該当ページ 75
該当ページ 122
問題5 電磁誘導電圧
出典:令和4年度第1回第4問(4)
解答
③
解説
電磁誘導電圧と電力線の特性:電力線からの影響
通信線と電力線が近接している場合、電力線の作用によって通信線に誘導電圧が生じます。この問題では、電磁誘導電圧が電力線のどの特性に比例するかを問うています。
誘導電圧とは?
誘導電圧は、電力線が近接する通信線に誘起される電圧であり、以下の2種類があります:
- 電磁誘導電圧:
- 電力線を流れる電流の時間的変化(交流電流など)によって発生する電磁場の影響で生じます。
- 磁界の変化が通信線に誘導電圧を生じさせます。
- 静電誘導電圧:
- 電力線の電圧の変動により、通信線に静電場の影響で生じます。
電磁誘導電圧の特性
電磁誘導電圧は、電力線を流れる電流 I に比例します。これは、ファラデーの電磁誘導の法則に基づいています。
\( V = -N \frac{d\Phi}{dt} \)ここで:
- V:誘導電圧
- N:通信線の巻数(一般的には1回巻きと考える)
- Φ:電磁誘導による磁束
電磁誘導による磁束 Φ は、電力線の電流 I に比例します。そのため、誘導電圧も電流に比例します。
他の選択肢について
- インダクタンス(選択肢①)
- 電磁誘導に関与する要素ですが、電力線の特性そのものを示しているわけではありません。
- 電圧(選択肢②)
- 電圧は静電誘導電圧に影響を与えますが、電磁誘導電圧には直接関与しません。
- 電流(選択肢③)
- 正解。電磁誘導電圧は電力線の電流に比例します。
- コンダクタンス(選択肢④)
- コンダクタンスは漏れ電流に関係しますが、誘導電圧とは関係ありません。
- 抵抗(選択肢⑤)
- 抵抗は電流による電圧降下に関係しますが、電磁誘導電圧には影響しません。
実用上の注意
電磁誘導電圧が通信線に与える影響を最小化するには以下の対策が有効です:
- 通信線と電力線の距離を確保する。
- 通信線にシールド(遮蔽)を施す。
- ツイストペアケーブルを用いることで電磁誘導の影響を相殺する。
まとめ
電磁誘導電圧は、電力線の電流に比例します。電力線に流れる交流電流の時間変化が大きいほど、通信線に誘起される電磁誘導電圧も増加します。この基本的な特性を理解することで、ノイズ対策や設計に役立てましょう。
参考資料
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該当ページ 75
該当ページ 不明
問題6 電圧反射係数
出典:令和3年度第1回第4問(4)
解答
②
解説
電圧反射係数の計算:通信線路の接続点における特性インピーダンス
伝送路や通信線路では、異なる特性インピーダンスを持つ線路が接続される場合、インピーダンスの不整合により反射が発生します。この問題では、電圧反射係数の計算式について問われています。
電圧反射係数とは?
電圧反射係数 \(Γ \) は、伝送線路における電圧の反射量を示す指標であり、次の式で定義されます:
\( \Gamma = \frac{Z_{02} – Z_{01}}{Z_{01} + Z_{02}} \)ここで:
- \(Z_{L} \):負荷側の特性インピーダンス(この場合 \(Z_{02} \))
- \(Z_{S} \):信号源側の特性インピーダンス(この場合\(Z_{01} \) )
実用上のポイント
- インピーダンス整合が取れている場合(\(Z_{01} \)=\(Z_{02} \))、反射係数 \(Γ \) はゼロとなり、反射が発生しません。
- インピーダンス整合が取れていない場合、信号の反射が発生し、伝送効率が低下するため注意が必要です。
まとめ
電圧反射係数は、特性インピーダンスの不整合による反射の大きさを定量的に表す重要な指標です。この式を正しく理解することで、通信や伝送路設計におけるインピーダンス整合の重要性を理解できます。
参考資料
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該当ページ 76
該当ページ 117
問題7 電流反射係数
出典:令和4年度第2回第4問(4)
解答
④
解説
異なる特性インピーダンスを持つ通信線路 \(Z_{01} \) と \(Z_{02} \)}Z02 を接続し、電圧反射係数を m とした場合における電流反射係数を求める問題です。
電圧反射係数と電流反射係数の関係式
電圧反射係数 \(Γ \) と電流反射係数 \(Γ_1 \)の関係は以下の式で表されます:
\( \Gamma_I = -\Gamma \)ここで、\(Γ \) は電圧反射係数です。
したがって、本問題では以下の式を使用します:
\( \Gamma_I = -m \)電流反射係数の符号
電流反射係数は電圧反射係数と符号が逆になります。そのため、電圧反射係数が m であれば、電流反射係数は −m です。
物理的な解釈
電流と電圧には位相差が存在する場合があるため、反射時には電流の方向が電圧の反射方向と逆向きになる場合があります。これが符号の逆転として現れます。
まとめ
電流反射係数 \(Γ_1 \) は、電圧反射係数 \(Γ \) の符号を反転させた形で表されます。
参考資料
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該当ページ 76
該当ページ 118
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