この記事は、工事担任者試験の直前対策資料である「工事担任者 基礎 穴埋め暗記セレクション 総合通信2024受験版」に対応しています。PDFは期間限定で下記リンクより配布いたします。
基礎→https://drive.google.com/file/d/1bpA01px0v0FhtfG4l50v3nZ4gTq95lpn/view?usp=sharing
資料は必要最小限の記述に絞りスリム化を図っていますが、こちらのブログでは、出典となる過去問も引用して掲載しています。問題集としてもご利用いただけるほか、解説を確認する目的にもお役立ていただけます。
なお、分量が多いため、大問ごとに記事を分けて掲載しております。
皆様の試験対策に微力ながらお力添えできれば幸いです。心より、皆様の合格をお祈り申し上げます。
問題1 変調度
出典:令和3年度第1回第5問(1)
解答
⑤
解説
変調度の定義
変調度 (m) は振幅変調の深さを示す指標で、以下の式で定義されます:
\( \LARGE m = \frac{A_{max} – A_{min}}{A_{max} + A_{min}} \)ここで:
- Amax=a:変調波形の振幅の最大値
- Amin=b:変調波形の振幅の最小値
適用
与えられた条件に基づき、最大振幅 a と最小振幅 b を用いると、変調度は以下のように計算されます:
\( \LARGE m = \frac{a – b}{a + b} \)まとめ
変調度は、振幅変調の特性を定量的に表す重要な指標であり、この式を覚えておくと類似問題に対応できます。特に、振幅変調では最大値と最小値を適切に読み取ることがポイントです。
参考資料
該当ページ 89
該当ページ 128
問題2 過変調
出典:令和3年度第2回第5問(1)
解答
⑤
解説
変調度の定義
振幅変調における変調度 (m) は、信号波の振幅の最大値 (As) と 搬送波の振幅の最大値 (Ac) の比率で定義されます:
\( \LARGE m = \frac{A_s}{A_c} \)過変調とは
変調度 m が 1 を超える場合(m>1)、これを過変調と呼びます。過変調が発生すると:
- 復調波にひずみが生じる:
信号波が正確に復元されず、音声やデータが歪んでしまいます。 - 帯域外の不要波成分が増加:
不要波成分が通信帯域外に影響を与え、隣接チャネルへの干渉が発生する可能性があります。
まとめ
振幅変調方式においては、変調度を適切に制御し、1以下に抑えることが重要です。過変調を防ぐことで、復調波の品質を保ち、通信品質を向上させることができます。
参考資料
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該当ページ 90
該当ページ 不明
問題3 BPSK
出典:令和5年度第2回第5問(1)
解答
③
解説
BPSKの概要
BPSK(Binary Phase Shift Keying) は、デジタル変調方式の一種であり、位相を2つの状態(例えば、0度と180度)で変調する方式です。この方式では、1シンボルあたり1ビットの情報を伝送します。
理由
- シンボルとは?
デジタル通信において、1つのシンボルは情報の単位を表します。シンボルごとに異なる位相、振幅、または周波数を使用して情報を表現します。 - BPSKの特徴
BPSKでは、位相の2つの状態(0度、180度)を使用するため、各シンボルで表現できる情報は2通り(ビットでは「0」または「1」)となります。したがって、1シンボルあたり1ビットを伝送します。
まとめ
BPSKは、最も基本的なデジタル変調方式であり、ノイズ耐性が高いですが、伝送効率は低いです。そのため、高速通信ではより多くの情報を伝送できる高次変調方式(QPSKやQAM)が使用されることが多いです。
参考資料
参考資料の該当ページです。
該当ページ 91
該当ページ 131
問題4 マルチキャリア変調方式
出典:令和5年度第1回第5問(1)
解答
②
解説
OFDMの概要
OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing) は、マルチキャリア変調方式の一つで、以下の特徴を持ちます:
- 複数のサブキャリアを使用
異なる周波数を持つサブキャリアを直交(数学的に干渉しない状態)させて、効率よくデータを伝送します。 - 周波数間隔を密に配置
サブキャリア間をギリギリまで詰めて配置できるため、周波数帯域の利用効率が非常に高いです。 - 干渉を最小限に抑える
直交性を保つことで、隣接するサブキャリア間の干渉を防ぎます。
OFDMの利点
- 周波数利用効率が高い。
- マルチパスフェージング(信号の反射による歪み)への耐性が強い。
- 各サブキャリアで異なるデータを伝送可能。
適用例
- Wi-Fi(IEEE 802.11a/g/n/ac)
- LTE(Long Term Evolution)
- 地上デジタル放送(DVB-T)
選択肢の確認
- ①QAM(Quadrature Amplitude Modulation)
振幅と位相を組み合わせた変調方式で、OFDMとは異なる技術。 - ②OFDM
正しい選択肢。説明の通り、複数のサブキャリアを直交させる技術。 - ③BPSK(Binary Phase Shift Keying)
位相を2つに分ける単一キャリア方式で、OFDMとは異なる。 - ④CDMA(Code Division Multiple Access)
符号分割多元接続方式であり、OFDMとは異なる。 - ⑤FSK(Frequency Shift Keying)
周波数変調方式の一つで、マルチキャリアを使用しない。
参考資料
参考資料の該当ページです。
該当ページ 92
該当ページ 136
問題5 伝送データ量
出典:令和4年度第2回第5問(1)
解答
③
解説
サンプリング間隔と量子化ビット数について
- サンプリング間隔
サンプリング間隔が短いほど、1秒間に行われるサンプリングの回数が増えます。この値は音声信号の周波数帯域幅に基づき設定されます(ナイキスト定理により、帯域幅の2倍以上のサンプリング周波数が必要)。 - 量子化ビット数 \( \large n \)
各サンプリング値を表現するために用いられるビット数を指します。
データ量 V の定義
PCM符号化された信号では、1秒間に伝送されるデータ量 V は、サンプリング周波数\( \large f_s \)
と量子化ビット数 \( \large n \) の積で表されます:
ここで、
- \( \large f_s \) はサンプリング周波数(1秒間に何回サンプリングするか)。
- \( \large n \) は1回のサンプリングで用いるビット数。
サンプリング周波数\( \large f_s \)の表現
サンプリング間隔 T (サンプリングの間隔時間)は、サンプリング周波数の逆数で表されます:
データ量 V に\( \large f_s \) を代入
\(\large f_s = \frac{1}{T} \) をデータ量 V の式に代入します:
サンプリング間隔 T を求める
この式を T について整理すると:
まとめ
- サンプリング間隔 T は、1秒間のデータ量 V を量子化ビット数 n で割った値です。
- この式は、サンプリング間隔が長くなるほどデータ量が減少し、量子化ビット数が多くなるほどデータ量が増加するという関係を示しています。
参考資料
参考資料の該当ページです。
該当ページ なし
該当ページ 不明
問題6 量子化雑音を低減する方法
出典:令和4年度第1回第5問(4)
解答
⑤
解説
音声信号のPCM符号化では、従来の直線的な量子化方式では信号レベルが低い部分で量子化雑音が目立ちやすいという問題がありました。これに対し、非直線量子化では、信号レベルに応じて量子化の間隔を調整することで、この問題を緩和します。
具体的には、信号レベルが高い領域では粗い間隔で量子化を行い、信号レベルが低い領域では細かい間隔で量子化を行います。これにより、量子化ビット数を一定に保ちながら、信号レベルの低い部分の量子化雑音を低減することができます。
非直線量子化は、電話通信などにおいて標準的に使用される方法であり、例えば、ITU-T G.711勧告で規定されているA-lawやμ-law方式も非直線量子化の一種です。
まとめ
- 非直線量子化:信号レベルに応じて量子化の間隔を調整する手法。
- 効果:量子化ビット数を一定に保ちながら、信号レベルの低い部分の量子化雑音を低減。
- 利用例:ITU-T G.711のA-lawやμ-law方式が非直線量子化を採用。
参考資料
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該当ページ 93
該当ページ 134
問題7 光受信器における雑音
出典:令和4年度第1回第5問(2)
解答
④
解説
光伝送システムにおいて、光受信器で発生する雑音の一つがショット雑音です。ショット雑音は、光が受信器に入射し、光電効果によって電子が放出される際に発生します。この現象は電子が不規則に放出されるため、信号電流に揺らぎを生じさせます。
この雑音は、光強度が増加するとともに大きくなりますが、完全に防ぐことは難しく、受信信号の品質を制限する重要な要因の一つです。ショット雑音は量子力学的な性質に起因するため、ランダム性を伴う特徴があります。
他の選択肢について
- モード分配雑音
光ファイバ内のモード分布の変化によって発生する雑音で、主に多モードファイバで問題となります。 - ビート雑音
光信号の異なる周波数成分が干渉することで発生する雑音で、特に波長分割多重(WDM)システムで問題になることがあります。 - インパルス雑音
短時間で発生する大きな雑音で、主に外部の干渉要因(雷など)によって生じます。 - ASE雑音
光増幅器(特にエルビウム添加光ファイバ増幅器:EDFA)によって生じる増幅自発放射雑音です。
まとめ
- ショット雑音:受光時に電子が不規則に放出されるために生じる信号電流の揺らぎによる雑音。
- 特徴:量子力学的な性質に起因し、ランダム性がある。
- 関連性:光強度が大きくなるほど影響が大きくなる。
- 重要性:光受信器の信号品質を制限する要因の一つ。
参考資料
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該当ページ 92
該当ページ 147
問題8 自然放出光による雑音
出典:令和5年度第2回第5問(4)
解答
②
解説
光ファイバ増幅器(特にエルビウム添加光ファイバ増幅器:EDFA)を使用する光中継システムでは、信号光を増幅する際に同時に発生する増幅自発放射(ASE: Amplified Spontaneous Emission)雑音が問題となります。これは自然放出光が増幅されて生じる雑音であり、以下の影響を及ぼします。
- 受信端でのSN比の低下
光信号と雑音が同時に増幅されるため、信号対雑音比(SN比)が低下します。これにより、伝送信号の品質が劣化します。 - 多段中継時の雑音の蓄積
光増幅器を複数段にわたって使用する場合、各段でASE雑音が増加し、累積的に伝送品質が悪化します。
ASE雑音は波長分割多重(WDM)システムのような高密度光伝送システムにおいて特に顕著に影響します。
他の選択肢について
- モード分配雑音
光ファイバ内のモード分布の不均一性による雑音。主に多モードファイバで発生します。 - 熱雑音
受信器の抵抗素子などに起因する熱的な電子運動による雑音。 - 補間雑音
一般的には符号間干渉による雑音を指しますが、本問題では関連性がありません。 - 暗電流
光受信器が光を受けていない状態でも発生する電流に起因する雑音。
まとめ
ASE雑音とは
- 発生原因:光信号の増幅中に自然放出光が増幅されることによる。
- 影響:
- SN比の低下:受信信号の品質劣化。
- 雑音の蓄積:多段中継で問題が深刻化。
- 対策:低雑音光増幅器の使用、増幅段数の最適化など。
ASE雑音は、特に高密度光通信における重要な設計要素です。
参考資料
参考資料の該当ページです。
該当ページ 93
該当ページ 147
問題9 パルスの繰り返し周期
出典:令和5年度第1回第5問(2)
解答
④
解説
この問題は、時分割多重方式(TDM: Time Division Multiplexing) による伝送に関するものです。時分割多重方式では、複数の信号を1本の伝送路で順番に送信するために、元の各信号の繰り返し周期を調整する必要があります。
ポイント
- 時分割多重とは
時間を分割して複数の信号を順番に伝送する方式です。各信号はその順番が来たときに伝送されるため、多重化後の繰り返し周期は元の繰り返し周期よりも短くなる必要があります。 - 繰り返し周期の計算
- 元の繰り返し周期を T とすると、 N 個の信号を多重化するとき、多重化後の繰り返し周期 \(T_{\text{多重化後}} \) は次のようになります:
\( \large T_{\text{多重化後}} = \frac{T}{N} \) - \(T_{\text{多重化後}} \) は元の周期の\( \large \frac{1}{N}\) 倍以下となる必要があります。
- 元の繰り返し周期を T とすると、 N 個の信号を多重化するとき、多重化後の繰り返し周期 \(T_{\text{多重化後}} \) は次のようになります:
参考資料
参考資料の該当ページです。
該当ページ 94
該当ページ 137
問題10 多元接続方式
出典:令和5年度第2回第5問(2)
解答
①
解説
**CDMA(Code Division Multiple Access)**は、デジタル移動通信で用いられる多元接続方式の一つで、以下の特徴があります。
- 符号分割多元接続(Code Division Multiple Access)の略。
- 各ユーザに異なる符号を割り当てることで、同じ周波数帯を複数のユーザが同時に利用可能。
- スペクトル拡散技術を活用しているため、他のユーザの信号をノイズとして扱うことが可能。
- 干渉が抑えられ、通信品質を維持しやすい。
たとえば、GPSの通信や携帯電話の第3世代(3G)技術などで使用されています。
他の選択肢について
- CSMA(Carrier Sense Multiple Access)
- キャリアセンス多重アクセス方式で、送信前に通信路が空いているかを確認する技術。主に有線LAN(イーサネット)で使用。
- FDMA(Frequency Division Multiple Access)
- 周波数分割多元接続方式で、各ユーザに異なる周波数を割り当てる。アナログ通信で広く利用。
- OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)
- 直交周波数分割多元接続方式で、ユーザごとに異なるサブキャリアを割り当てる。主に4Gや5Gで使用。
- TDMA(Time Division Multiple Access)
- 時分割多元接続方式で、ユーザごとに異なる時間スロットを割り当てる。2G(GSM)で採用されていた。
まとめ
CDMAの利点:
- スペクトル利用効率が高い。
- 干渉を軽減し、通信品質を向上。
- 高密度のユーザ接続が可能。
CDMAの課題:
- システムの設計と管理が複雑。
- 同期が重要であり、タイミングエラーの影響を受けやすい。
CDMAは、携帯通信技術の進化に大きく貢献した多元接続方式です。
関連数式
CDMAで利用される拡散スペクトルは以下で表されます:
\( S_{\text{拡散}} = S_{\text{元信号}} \cdot P_{\text{符号}} \)ここで、
\( S_{\text{拡散}} \):拡散後の信号
\( S_{\text{元信号}} \): 元の信号
\( P_{\text{符号}} \): 拡散に用いる符号
参考資料
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該当ページ 94
該当ページ 138
問題11 光の波長変動
出典:令和4年度第1回第5問(5)
解答
①
解説
波長チャーピング(Wavelength Chirping)とは、半導体レーザを直接変調する際に、レーザ光の波長が変動する現象を指します。この現象は、特に高速で変調を行う場合に顕著に現れます。
波長チャーピングの仕組み
- 半導体レーザの駆動電流を変化させることで、光の強度(振幅)が変調される。
- 駆動電流の変化が、レーザ内の屈折率や光共振器の特性に影響を与える。
- その結果、発振波長が微妙にシフトする。この波長の変動を波長チャーピングと呼びます。
波長チャーピングの影響
- 高速変調時に光の波長が変動するため、伝送路での分散が増大し、伝送品質に影響を与える。
- 特に長距離伝送や高周波数帯域の光通信システムでは、波長チャーピングの影響を抑える必要があります。
他の選択肢について
- 光カー効果
- 光が高強度になると媒質の屈折率が変化する現象。
- 高速光通信には直接関係しない。
- 回折現象
- 光が障害物や開口部を通過する際に波が広がる現象。
- 通信波長の変動には関係しない。
- ドップラー効果
- 光源と観測者の相対運動により波長が変化する現象。
- 半導体レーザの直接変調には無関係。
- ポッケルス効果
- 電場を加えた際に結晶の屈折率が変化する現象。
- これは光変調器で利用されるが、波長チャーピングとは異なる。
まとめ
波長チャーピングの特徴:
- 半導体レーザの直接変調時に発生。
- 高速伝送や広帯域通信では影響が大きい。
- 波長変動を抑えるために、外部変調方式(マッハ・ツェンダ変調器など)が採用されることが多い。
数式による表現
波長チャーピングの波長変化量は以下で表されます:
\( \Delta \lambda = \frac{\lambda^2}{c} \cdot \Delta n \)ここで、
Δλ: 波長の変化量
λ: 中心波長
c: 光速
Δn: 屈折率の変化
この現象の理解は、高速光通信技術において重要です。
関連知識:
波長チャーピングを抑制するために、外部変調方式が一般的に使用されます。この方式では、レーザ光を一定の強度で発振させた後、外部で光信号を変調します。
参考資料
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該当ページ 95
該当ページ 142
問題12 光の変調方法
出典:令和4年度第2回第5問(3)
解答
②
解説
ポッケルス効果(Pockels Effect)とは、特定の結晶性物質に電場を加えることで、その物質の屈折率が変化する現象を指します。この現象は光変調の方法として広く利用されています。
ポッケルス効果の仕組み
- 電場を加えると、結晶の屈折率が線形的に変化する。
- この屈折率の変化により、通過する光の位相が変調される。
- 位相変調された光は、マッハ・ツェンダ干渉計などの構造で振幅変調に変換され、デジタル通信で利用されます。
ポッケルス効果を利用した光変調器
- マッハ・ツェンダ変調器やLiNbO₃(リチウムニオベート)変調器などが代表的な例。
- 高速・高精度な光通信において欠かせない技術です。
他の選択肢について
- ファラデー効果
- 磁場を加えることで光の偏光面が回転する現象。
- 光アイソレータなどに使用されるが、光の屈折率変化とは無関係。
- ラマン効果
- 光が物質と相互作用し、エネルギーが変化して散乱される現象。
- 光ファイバセンサーや光増幅に利用される。
- ブリルアン効果
- 音波(音響フォノン)と光の相互作用による光散乱現象。
- 光ファイバ増幅やセンサー技術で利用される。
- ドップラー効果
- 光源と観測者の相対運動による波長変化の現象。
- 光通信の変調技術には直接関係しない。
まとめ
ポッケルス効果の特徴:
- 結晶の屈折率を電場で制御。
- 高速な光変調に対応。
- 光通信システムの基盤技術。
参考資料
参考資料の該当ページです。
該当ページ 96
該当ページ 142
問題13 3R機能
出典:令和4年度第2回第5問(5)
解答
⑤
解説
タイミング抽出は、光中継伝送システムにおいて、信号波形を再生するための重要な機能の一つです。伝送中に劣化した信号を正確に再生するためには、信号のタイミングを正確に把握し、同期を取る必要があります。
再生中継器の機能
- 等化増幅
- 信号が減衰した場合にそのレベルを元に戻す機能。
- 伝送路による周波数特性の劣化を補正する役割も担います。
- タイミング抽出
- 信号波形に含まれるクロック成分を基にタイミングを再生成する機能。
- タイミング同期が正確でないと、後続の識別再生が正確に行えません。
- 識別再生
- 信号波形を再構築し、元のデジタル信号に戻す機能。
- 雑音やひずみによる劣化を取り除くことを目的としています。
他の選択肢について
- 位相検波
- 位相変調方式(例:PSK)で使用される技術。
- 再生中継器で必須とは限りません。
- 波長多重
- WDM(波長分割多重)技術を指します。
- 中継器自体ではなく、伝送容量の拡大を目的としたシステム全体の機能。
- 光合分波
- 光信号を分離・結合する技術。
- WDMやPONシステムなどで使用されるが、再生中継器の内部機能ではありません。
- 強度変調
- 光信号を強度で変調する技術(例:IM-DD)。
- 中継機能そのものには直接関係しません。
まとめ
再生中継器の必須機能
- 等化増幅
- タイミング抽出
- 識別再生
これらの機能を組み合わせることで、劣化した信号を元の形に再生し、長距離伝送を実現しています。
タイミング抽出の重要性
- タイミング抽出は信号同期の基盤。
- 正確なクロック信号を再生成することで、信号波形を正常に再生可能。
伝送システムの品質向上に不可欠な技術の一つです。
参考資料
参考資料の該当ページです。
該当ページ 96
該当ページ 143
問題14 レイリー散乱
出典:令和4年度第2回第5問(4)
解答
②
解説
レイリー散乱は、光ファイバ中のガラス材料における微小な屈折率の揺らぎに起因する現象で、光の一部が散乱されることで損失が発生します。この現象は主に短波長の光で顕著になります。
レイリー散乱の特徴
- 光波長の依存性
- レイリー散乱による損失は、光の波長の 4乗に反比例 します。
- 数式で表すと次のようになります:
\(\text{損失} \propto \frac{1}{\lambda^4}\)
(ここで \(\lambda\) は光波長)
- 波長の短い光の影響
- 波長が短い(青色光など)ほど散乱損失が大きくなり、長波長の光(赤色光など)は散乱損失が少なくなります。
- このため、光通信では赤外線領域(波長が長い光)が主に使用されます。
- 光ファイバの材料特性
- ガラス材料中の原子レベルの密度揺らぎが主な原因です。
他の選択肢について
- 光周波数
- 波長と周波数は逆数の関係にありますが、レイリー散乱の依存性は波長に着目して議論されます。
- 光ファイバ長
- ファイバ長が長いほど損失は増加しますが、レイリー散乱そのものの特性ではありません。
- 光の伝搬モード数
- シングルモードファイバやマルチモードファイバでは、モード数の違いによって損失特性が変わる場合がありますが、レイリー散乱自体とは直接の関係がありません。
- 光ファイバのコア径
- コア径の設計は散乱損失に影響を与える可能性はありますが、レイリー散乱の波長依存性には影響しません。
まとめ
レイリー散乱の特性
- 損失は 光波長の4乗に反比例。
- 波長の短い光(青色光)は散乱が大きく、長波長(赤外線領域)は散乱が小さい。
実務での影響
- 光通信では、レイリー散乱を避けるために波長が長い赤外線領域(1,310 nm、1,550 nm)が使用されます。
参考資料
参考資料の該当ページです。
該当ページ 96
該当ページ 144
問題15 線形中継器
出典:令和5年度第1回第5問(4)
解答
④
解説
線形中継器は、光ファイバ伝送路において光信号を増幅する役割を持つ中継器で、光信号を電気信号に変換する必要がありません。これにより、以下の特徴があります:
特徴
- 伝送速度の制約がない
- 光信号をそのまま増幅するため、電気信号への変換による遅延や速度の制約を受けません。
- 波長の異なる光信号の一括増幅が可能
- エルビウムドープ光ファイバ増幅器 (EDFA) などが代表的な例で、波長分割多重(WDM)信号において、複数波長の光信号を同時に増幅することができます。
- 数式的には、一括増幅の利点は以下のように説明できます:
\(P_{\text{out}} = G \cdot P_{\text{in}}\)
ここで、\(P_{\text{in}}\) は入力光信号の総パワー、\(G\) は増幅器の利得、\(P_{\text{out}}\) は増幅後の総パワーです。
- 電気信号への変換が不要
- 従来の再生中継器では、光信号を電気信号に変換し、波形を再生する必要がありましたが、線形中継器ではこの過程を省略します。
他の選択肢について
- 識別再生
- 光信号を電気信号に変換し、デジタル的に再生する方式ですが、線形中継器には当てはまりません。
- 分散制御
- 波長分散を補償するための技術であり、中継器そのものの一括増幅機能ではありません。
- モード結合
- マルチモードファイバに関連する概念であり、線形中継器には直接関係しません。
- 遅延制御
- 光信号の遅延を制御する技術ですが、一括増幅とは異なる内容です。
まとめ
線形中継器の利点
- 波長分割多重 (WDM) の複数波長を同時に増幅可能。
- 電気信号に変換せず光信号のまま処理するため、高速かつ効率的。
実務での利用
- 長距離光通信(海底ケーブルなど)で重要な役割を果たす。
- EDFAによる効率的な増幅が、通信コストを抑える鍵となっています。
参考資料
参考資料の該当ページです。
該当ページ 96
該当ページ 143
問題16 光の散乱
出典:令和3年度第2回第5問(5)
解答
①
解説
レイリー散乱は、光ファイバ中の光損失の主要な要因の一つです。この現象は、光ファイバの材料中の屈折率の微小な揺らぎ(ランダムな不均一性)によって光が散乱する現象を指します。
特徴
- 光波長の影響
- レイリー散乱による損失は光波長 \(\lambda\) の 4乗に反比例 します。
具体的には、散乱損失 \(R\) は以下のように表されます:
\(R \propto \frac{1}{\lambda^4}\) - より短い波長では散乱が大きくなり、損失が増加します。したがって、長波長の光(例:1550 nm)が光通信に適している理由の一つです。
- レイリー散乱による損失は光波長 \(\lambda\) の 4乗に反比例 します。
- 光ファイバの透明性
- レイリー散乱は、光ファイバの透明性が高いほど小さくなりますが、完全に消えることはありません。
- 損失の規模
- 標準的なシングルモードファイバでは、レイリー散乱による損失は約 0.2 dB/km(1550 nm)程度です。
他の選択肢について
- ラマン散乱
- 非線形現象の一種で、光ファイバ中を伝搬する光が原子振動エネルギーに転換される現象。波長の変化を伴います。
- ブリルアン散乱
- 光が音波と相互作用することで生じる散乱現象で、高出力光通信では影響が大きくなります。
- トムソン散乱
- 電子による光の弾性散乱で、自由電子が関与する現象です。
- コンプトン散乱
- 高エネルギーの光子が電子と衝突し、波長が変化する現象。光通信には関連しません。
まとめ
レイリー散乱の要点
- 原因:光ファイバ材料中の屈折率の揺らぎ。
- 特徴:損失は光波長の4乗に反比例する。
- 影響:短波長で損失が増大するため、長波長(1550 nm)が好まれる。
実用的視点
- レイリー散乱は光ファイバの製造品質や材料選定で最小化することが重要です。
参考資料
参考資料の該当ページです。
該当ページ 97
該当ページ 144
問題17 信号波形の劣化要因
出典:令和5年度第2回第5問(5)
解答
④
解説
マルチモード光ファイバ では、光が異なるモードで伝搬します。異なるモードは光ファイバ内を通過する距離がそれぞれ異なるため、同一パルスで送信された光でも到達する時間にばらつきが生じます。この時間的なばらつきが「モード分散」であり、光パルスの波形が広がる原因となります。
他の選択肢について:
- 構造分散
ファイバの幾何学的構造による分散ですが、モード分散に比べて影響は小さいです。 - 材料分散
光ファイバを構成する材料の屈折率が波長に依存するために生じる分散です。これは主にシングルモードファイバで問題になります。 - ブリルアン散乱
光と音波の相互作用による非線形現象です。波形の広がりには直接関係しません。 - モード分散
正解。マルチモード光ファイバで主に影響を与える分散です。 - ラマン散乱
光が物質と相互作用して、波長が変化する非線形現象です。波形の広がりには関係ありません。
まとめ
モード分散は、マルチモード光ファイバにおける信号波形の劣化の主な要因です。
参考資料
参考資料の該当ページです。
該当ページ 97
該当ページ 144
問題18 構造分散と材料分散との和
出典:令和5年度第1回第5問(5)
解答
⑤
解説
シングルモード光ファイバ における伝送帯域の制限要因の一つは、光ファイバ中で生じる 波長分散 です。この分散は、光ファイバの構造分散と材料分散の和で表されます。
- 材料分散 は、光ファイバの材料(主にシリカガラス)の屈折率が波長に依存することにより生じます。
- 構造分散 は、光ファイバの幾何学的構造やコア径の設計による屈折率分布が波長に依存することにより生じます。
波長分散が大きいと、異なる波長の光が光ファイバ中を異なる速度で伝搬するため、光パルスの波形が広がり、伝送信号の品質が劣化します。
他の選択肢について:
- 散乱損失
光ファイバ中で光が散乱して失われる現象です。帯域制限よりも信号損失に関連します。 - 吸収損失
光がファイバ材料によって吸収される現象です。これも帯域制限よりも信号損失に関連します。 - モード分散
マルチモード光ファイバで発生する分散であり、シングルモード光ファイバではほとんど問題になりません。 - 偏波分散
シングルモード光ファイバで発生することはありますが、波長分散ほど大きな影響を与えません。 - 波長分散
正解。構造分散と材料分散の和で表され、シングルモード光ファイバの帯域制限に直接影響します。
まとめ:
シングルモード光ファイバの伝送帯域は、波長分散(構造分散と材料分散の和)が主な制限要因です。
参考資料
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問題19 伝送品質評価
出典:令和5年度第1回第5問(3)
解答
②
解説
デジタル回線の伝送品質 を評価する尺度の一つに %SES があります。この指標は以下のように定義されます:
- SES(Severely Errored Seconds) は、平均符号誤り率(BER: Bit Error Rate)が \( 1 \times 10^{-3} \)を超えた秒(符号誤りの激しい秒)の時間を計測します。
- その延べ時間を稼働時間で割ったものが %SES として表され、全稼働時間の中で「符号誤りが激しい秒」が占める割合を示します。
これにより、デジタル回線の信号品質が長期間にわたってどの程度安定しているかを評価できます。
他の選択肢について:
- ①%ES(Errored Seconds):
符号誤りが発生した全ての秒の割合を表します。SES(符号誤りが激しい秒)より広い範囲をカバーします。 - ③%EFS(Errored Frame Seconds):
符号誤りフレームが発生した秒の割合を示しますが、SESとは異なります。 - ④BER(Bit Error Rate):
デジタル回線の品質を表す基本指標で、単位時間当たりの符号誤り率そのものを示します。
まとめ:
%SES(Severely Errored Seconds) は、符号誤りが特に激しい秒の割合を示し、デジタル回線の伝送品質の重要な評価基準です。
参考資料
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基礎第5問は以上です。ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
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