工事担任者 過去問解説 令和6年第1回 技術第1問&第2問(総合通信)

令和6年度第1回 技術科目(総合通信)の過去問解説です。分量が多いため、こちらでは第1問と第2問のみを掲載しております。、また、基礎科目、法規科目も別記事でまとめております。

第1問(1)デジタルコードレス電話

問題

解答

解説

DECT方式の標準システムにおいて、複数の通話チャネルの中から使用するチャネルを選択する機能は、「キャリアアグリゲーション」とは呼ばれません。正しくは、キャリアセンスチャネルチェックといわれる機能を使用します。キャリアセンスは、指定したチャネルが他の機器に使用されていないかを確認し、空いているチャネルを選択するための機能です。

キャリアアグリゲーションは、通信技術において複数の異なる周波数帯(キャリア)を束ねてデータの高速伝送を行う技術を指し、DECT方式には適用されません。キャリアアグリゲーションは、主にLTEや5Gのようなモバイル通信で用いられる用語です。

他の選択肢について

  • 選択肢①:DECT方式では、1.9 GHz帯の周波数を使用します。この周波数帯は、デジタルコードレス電話で一般的に使用される正しい周波数です。
  • 選択肢②:1.9 GHz帯は、電子レンジや一般的な無線LANの2.4 GHz帯と異なり、干渉が少なく、ノイズが発生しにくいとされています。
  • 選択肢③:混信を防止するため、親機・子機・中継機が識別符号を自動的に送受信する機能を持っていることは正しい記述です。
  • 選択肢④:DECT方式では、無線通信にTDMA/TDD(Time Division Multiple Access/Time Division Duplex)を用いて、親機と子機間の効率的な通信が行われます。

重要度、ひとことアドバイス

重要度:
まなびや

DECT方式に基づくデジタルコードレス電話システムにおけるチャネル選択の機能は、「キャリアアグリゲーション」ではなく「キャリアセンス」や「チャネルチェック」が正しい用語です。(キャリアセンスの方が、試験での出題可能性が高いです)。キャリアアグリゲーションは主に高速データ通信に用いられる技術ですので、適用される範囲を混同しないようにしましょう。

参考資料

まなびや

参考資料の該当ページです。

総合通信要点解説(自著)

該当ページ 105

リックテレコム社

該当ページ 不明

第1問(2)デジタル式PBX

問題

解答

解説

ライン回路の役割

ライン回路は、電話機とPBXの間の接続を管理し、オンフック・オフフックの状態を監視する重要な役割を果たします。内線同士の接続中に、どちらかの送受話器がオンフック(切断状態)になると、ライン回路がその変化を検出し、通話路の切断を行います。これにより、使用していた回線を開放し、次の通話に備えることができます。

他の選択肢について

  • 空間スイッチ(①):音声信号の伝送経路を切り替える装置で、通話路の選択に用いられますが、オンフック監視は行いません。
  • トーンジェネレータ回路(②):呼び出し音や発信音を生成する回路であり、オンフック検出には関与しません。
  • 極性反転検出回路(③):通話中の通話料計算のために極性の変化を検出する回路で、切断の監視機能はありません。
  • 時間スイッチ(④):時分割多重で音声信号を切り替えるためのスイッチで、オンフック検出には使用されません。

重要度、ひとことアドバイス

重要度:
まなびや

デジタル式PBXにおいて、内線通話の切断はライン回路によって行われ、送受話器のオンフック状態が監視されています。この仕組みを理解することで、PBXシステムの基本的な動作を把握することができます。試験では、各回路の役割と機能を正確に覚えておきましょう。

参考資料

まなびや

参考資料の該当ページです。

総合通信要点解説(自著)

該当ページ 112

リックテレコム社

該当ページ 164

第1問(3)夜間閉塞機能

問題

解答

解説

ダイヤルインサービスと夜間閉塞機能の接続シーケンス

ダイヤルインサービスでは、PBXの交換機を通じて、発信者が直接内線番号を指定する形で着信します。この際、内線指定信号が電気通信事業者の交換機からPBXに送出されることで、PBXが特定の内線に対する着信を処理します。

一方、夜間閉塞機能では、夜間受付用の電話機に着信を集約するため、通常のダイヤルインのような内線指定は行われません。この際には、交換機からの内線指定信号が送出されないため、PBXを経由せず、夜間受付用の電話機に直接着信する形で処理されます。

他の選択肢について

  • 1次応答信号(①):PBXが交換機からの呼び出しに対して応答する最初の信号ですが、内線指定には関係しません。
  • 2次応答信号(②):PBXが応答後に送出する追加の信号で、内線指定とは関係がありません。
  • 呼出信号(④):着信の通知を行う信号ですが、内線指定とは異なります。
  • 呼出音(⑤):電話機に着信した際に発生する音であり、PBXの接続シーケンスには関係がありません。

重要度、ひとことアドバイス

重要度:
まなびや

PBXの夜間閉塞機能では、通常のダイヤルイン接続とは異なり、内線指定信号が送出されずに夜間受付用の電話機に着信します。この点を理解することで、PBXの接続シーケンスに関する理解が深まります。試験では、ダイヤルインと夜間閉塞機能の違いをしっかり押さえておきましょう。

参考資料

まなびや

参考資料の該当ページです。

総合通信要点解説(自著)

該当ページ 109

リックテレコム社

該当ページ 167

第1問(4)デジタル回線終端装置

問題

解答

解説

ISDN基本ユーザ・網インタフェースにおけるデジタル回線終端装置の給電について

この問題は、ISDN(Integrated Services Digital Network)基本ユーザ・網インタフェースにおけるデジタル回線終端装置の給電に関する知識が問われています。特に、停電時の遠隔給電と制限給電に関する仕様を正確に理解しておくことが重要です。

記述Aについて

記述Aについて、停電時に基本電話サービスを維持するために39ミリアンペアの遠隔給電を受けることができると規定されています(実務上は通常定電流値40~60ミリアンペア程度で行われている)。600ミリアンペアという値は規定外であり、高すぎる数値です。そのため、記述Aは誤りです。

ちなみに、この600ミリアンペアという数字は、PoE Plusの規格でPSEからPDに給電するときに出てくる数値です。そことの混同を試すような形で、ひっかけ問題として出題されたものと思われます。

記述Bについて

記述Bは正しい内容です。デジタル回線終端装置からISDN端末側に対する制限給電状態での最大給電出力は420ミリワットと規定されています。これにより、制限給電状態においても適切な出力が確保されるようになっています。

重要度、ひとことアドバイス

重要度:
まなびや

ISDN回線終端装置では、停電時に基本電話サービスを維持するため39ミリアンペアの遠隔給電を受けることができます。600ミリアンペアという値は不正確です。PoE Plusに出てくる数値ですので、ひっかけに注意しましょう。一方、制限給電状態における最大給電出力が420ミリワットという点は正しいので、ISDN回線終端装置の仕様を正確に理解しておきましょう。

参考資料

まなびや

参考資料の該当ページです。

総合通信要点解説(自著)

該当ページ 117

リックテレコム社

該当ページ 173

第1問(5)ノイズ対策

解答

解説

記述Aについて:チップビーズインダクタ

チップビーズインダクタは、主に高周波帯域のノイズ対策に使用されます。特に数GHz帯域の放射ノイズを抑制するために効果的であり、ネットワーク機器からの高周波ノイズが他の機器に影響を与えないようにするために利用されます。そのため、記述Aは正しい内容です。

記述Bについて:コモンモードチョークコイル

コモンモードチョークコイルは、ネットワーク機器のコモンモードノイズを抑制するために用いられるデバイスです。コモンモード電流を阻止するインピーダンスを発生させることで、ノイズの流出を抑える役割を果たします。一般的に、電源ラインや信号ラインに挿入されており、外部にノイズが放射されるのを防ぐために使われます。このため、記述Bも正しい内容です。

重要度、ひとことアドバイス

重要度:
まなびや

チップビーズインダクタは数GHz帯域の高周波ノイズ対策コモンモードチョークコイルはコモンモードノイズの抑制に使用され、それぞれが特定の役割を果たしています。ノイズ対策におけるデバイスの用途と機能を把握し、試験に備えましょう。

特に、チップビーズインダクタは比較的新しい出題で、試験対策本に載っていない可能性もありますので、ご注意ください。

参考資料

まなびや

参考資料の該当ページです。

総合通信要点解説(自著)

該当ページ 120

リックテレコム社

該当ページ 178

第2問(1)10G-EPON

問題

解答

解説

この問題は、IEEE 802.3avとして標準化された10G-EPON(10ギガビットイーサネットパッシブ光ネットワーク)システムにおいて、既存のGE-PON(1ギガビットイーサネットパッシブ光ネットワーク)システムと混在収容する際の技術についての理解が求められています。特に、上り・下り通信の際の波長帯の利用方法と多重化技術に注目しましょう。

記述Aについて:下り方向通信の波長分離とWDM技術

記述Aは正しい内容です。10G-EPONシステムでは、OLT(Optical Line Terminal)からの下り方向通信で、10ギガビット/秒と1ギガビット/秒の信号を異なる波長帯で送信します。この波長分離により、異なる速度の信号が同じファイバ上で混在しても干渉を防ぐことが可能です。また、WDM(波長分割多重化)技術を用いることで、10G-EPONとGE-PONの信号を多重化し、ONU(Optical Network Unit)に伝送できます。

記述Bについて:上り方向通信の同一波長帯とTDMA技術

記述Bも正しい内容です。上り方向通信では、10ギガビット/秒と1ギガビット/秒の信号が同一の波長帯を使用します。この際、TDMA(時分割多重接続)技術を用いて、それぞれのONUがOLTからのタイミング指示に従って信号を送信します。これにより、異なる速度の信号でも同一波長で効率的に多重化され、OLTが分離して受信できます。

重要度、ひとことアドバイス

重要度:
まなびや

IEEE 802.3avに準拠する10G-EPONシステムでは、下り方向でWDM技術を使用して異なる波長帯に信号を分離し、上り方向でTDMA技術を使用して同一波長帯で異なる速度の信号を多重化します。こうした技術により、10G-EPONとGE-PONの混在が可能となり、柔軟なネットワーク構成が実現されています。

参考資料

まなびや

参考資料の該当ページです。

総合通信要点解説(自著)

該当ページ 163

リックテレコム社

該当ページ 209

第2問(2)IP-PBX

問題

解答

解説

IP-PBXにおける「可変不在転送」機能の活用

この問題は、**IP-PBX(IP対応の構内交換機)**の機能である「可変不在転送」に関する知識が問われています。可変不在転送は、オフィスで内線番号を使う場合に便利な機能であり、特に不在時に着信を他の内線に転送するために役立ちます。

可変不在転送とは?

可変不在転送は、IP-PBXの機能の一つで、内線利用者が自席を離れる際に、不在中の着信を指定した別の内線番号に自動転送する設定ができる機能です。この機能を使うことで、内線番号Aへの着信を、内線番号Bに転送し、不在時の着信漏れを防ぐことができます。

この機能は、内線電話機のオフフック操作後にアクセスコードを入力し、転送先となる内線番号を登録することで設定できます。その後、内線番号Aにかかってきた着信呼は内線番号Bに転送されるようになります。

他の選択肢について

  • コールパーク(①):着信を一時的に保留し、他の内線からのピックアップを可能にする機能で、転送機能ではありません。
  • コールバックトランスファ(②):通話中の転送機能で、通話終了後に転送元へ呼び戻すことができる機能です。
  • コールホールド(③):通話を一時的に保留にする機能で、不在時の転送とは異なります。
  • 話中転送(④):話中の場合に着信を別の内線に転送する機能ですが、不在時に限った転送ではありません。

重要度、ひとことアドバイス

重要度:
まなびや

IP-PBXの可変不在転送は、不在時に着信を他の内線に転送することで、電話の取り逃しを防ぐ便利な機能です。ビジネス環境では、内線の利用状況に応じて着信を柔軟に管理できるため、職場での連絡ミスや無駄な着信を減らす効果があります。

参考資料

まなびや

参考資料の該当ページです。

総合通信要点解説(自著)

該当ページ 108

リックテレコム社

該当ページ 不明

第2問(3)PoE Type1

問題

解答

解説

IEEE 802.3atのPoE Type 1に関する給電方法と機器検知のポイント

この問題は、IEEE 802.3atで標準化されたPoE(Power over Ethernet)のType 1に関する機能についての理解が求められています。PoEはLANケーブルを通じて給電できるため、様々なネットワーク機器において便利な給電方法として利用されています。特に、PoE対応機器の検知方法や給電方式の種類についての知識が問われています。

記述Aについて:PoE対応機器の検知と混在

記述Aは正しい内容です。PoEの給電側機器である**PSE(Power Sourcing Equipment)**は、接続された機器がPoEに対応しているかを自動的に検知します。PoE対応機器である場合にのみ給電を行い、非対応機器には給電しません。この機能により、PoE対応機器と非対応機器が同じPSEに混在しても安全に使用できるため、ネットワーク構築の柔軟性が向上します。

記述Bについて:オルタナティブAとBの給電方式

記述Bは誤りです。PoEの規格では、10BASE-Tや100BASE-TXのLAN配線において、信号対を使用して給電する方式を「オルタナティブA」、**予備対(空き対)を使用して給電する方式を「オルタナティブB」**と呼びます。つまり、記述Bの説明は逆になっているため、誤った記述です。

重要度、ひとことアドバイス

重要度:
まなびや

PoEのType 1においては、PSEがPoE対応機器か非対応機器かを自動検知するため、対応機器と非対応機器の混在が可能です。また、10BASE-Tや100BASE-TX配線における給電方式については、**信号対を使う「オルタナティブA」予備対を使う「オルタナティブB」**があり、それぞれの違いを把握しておきましょう。

本問のように、オルタナティブAとBをひっかける問題が過去から繰り返し出題されています。覚え方として、予備対(よつい)のと、Bをかけて覚えておくと、混乱せずに思い出すことができます。

参考資料

まなびや

参考資料の該当ページです。

総合通信要点解説(自著)

該当ページ 123

リックテレコム社

該当ページ 191

第2問(4)無線PAN

問題

解答

解説

センサネットワークに利用される無線PAN規格「ZigBee」について

この問題は、**無線PAN(パーソナルエリアネットワーク)**の規格の中で、特にセンサネットワークの構築に適した規格についての理解が求められています。無線PANは、センサや小型機器間の通信に利用されるため、低消費電力と多くのノード接続が可能な規格が必要です。

ZigBeeとは?

ZigBeeは、低速で低消費電力の無線通信規格で、最大通信速度が250キロビット/秒と、比較的低速ですが、多数のノード接続が可能で、理論上最大約6万5千ノードまで接続できます。これにより、センサネットワークやIoT(Internet of Things)用途に非常に適しています。

ZigBeeは特に、電池寿命が求められるセンサや小型機器において、長期間使用できるよう設計されています。したがって、電力消費を抑え、広範囲での機器接続が可能となるため、スマートホームや産業用の監視システムなど、さまざまなセンサネットワークで広く利用されています。

他の選択肢について

  • Wi-Fi(①):高速通信が可能ですが、消費電力が高いためセンサネットワークには不向きです。
  • DS-UWB(②):高帯域幅を利用する超広帯域通信で、センサネットワーク向けではありません。
  • MB-OFDM(④):WiMedia Allianceによって策定された超広帯域無線技術で、主に高速伝送が必要なデータ通信に利用され、低消費電力のセンサネットワークには適しません。
  • Bluetooth(⑤):近距離無線通信規格であり、多くの機器に使われますが、ZigBeeほど多くのノードを接続する用途には適していません。

重要度、ひとことアドバイス

重要度:
まなびや

ZigBeeは、最大250キロビット/秒の通信速度と、約6万5千ノードの接続が可能な特性から、低消費電力かつ多数のデバイスが必要なセンサネットワークに最適な無線PAN規格です。IoTやスマートホーム、産業向けのセンサネットワークでの利用が進んでおり、エネルギー効率の良さが特徴です。

参考資料

まなびや

参考資料の該当ページです。

総合通信要点解説(自著)

該当ページ なし

リックテレコム社

該当ページ 197

第2問(5)MACフレーム

問題

解答

解説

イーサネットMACフレームにおけるFCSの役割

この問題は、**イーサネット(Ethernet)のMACフレーム構成の一部であるFCS(Frame Check Sequence)**の役割についての理解が求められています。FCSは、フレームの伝送誤りを検出するために重要な情報を提供します。

FCS(Frame Check Sequence)とは?

**FCS(フレームチェックシーケンス)**は、イーサネットのMACフレームの最後に位置するフィールドで、フレームの伝送誤りを検出するための情報を含んでいます。FCSは、送信側でフレーム内容をもとに生成され、受信側でフレームの内容と一致するか検査されます。

具体的には、FCSはCRC(循環冗長検査)と呼ばれるエラーチェック手法を使用し、フレームが受信された際に、FCSとデータが一致しない場合は伝送エラーが発生したと判断します。これにより、通信の信頼性が確保され、エラーのあるフレームは破棄されるか再送要求が行われます。

他の選択肢について

  • Preamble(①):フレームの先頭にあるビットパターンで、受信側にフレームの開始を通知します。エラーチェックには関与しません。
  • SA(②:Source Address):送信元アドレスで、フレームの送信元MACアドレスを示します。
  • DA(③:Destination Address):宛先アドレスで、フレームの受信側MACアドレスを示します。
  • SFD(⑤:Start Frame Delimiter):フレームの開始を示すフィールドで、フレームの先頭でPreambleに続いて使われます。エラーチェックには関係しません。

重要度、ひとことアドバイス

重要度:
まなびや

イーサネットのMACフレームにおける**FCS(フレームチェックシーケンス)**は、フレームの伝送エラー検出に使用される重要なフィールドです。FCSを用いることで、通信の信頼性が高まり、エラーが含まれたフレームを識別して排除することができます。エラーチェックに関する知識は、ネットワーク通信の基本として重要なポイントですので、しっかり理解しておきましょう。

参考資料

まなびや

参考資料の該当ページです。

総合通信要点解説(自著)

該当ページ 157

リックテレコム社

該当ページ 260