読者の方よりご質問を頂戴致しましたので、回答をさせて頂くと共に、類似問題をまとめさせて頂きます。
ご質問内容は次の設問に関するものでした。
設問

これに対して、次のようなご質問を頂戴致しました。
ご質問内容(概略)
・問題文の「ベース接地トランジスタ回路では、」の文言だけで、なぜ IE が入力電極と決まるのか?
・npn 形か pnp 型か、判断できないのでどちらをいっているかわからない。
・ベース接地の場合、npn 形、pnp 型にかかわらず、エミッタが入力、コレクタが出力と覚えるのか?
ご質問への回答
ベース接地の回路では、エミッタを入力、コレクタを出力と考えます。
本問を解くうえで、npnかpnpかは関係ありません。
工事担任者試験の「基礎」科目に関しては、細かいことを気にしだすとキリが無いので、端的に「解き方」だけを覚えましょう。
工事担任者試験の「基礎」科目は、深い理解を問われません。
ごく浅い知識でも、問題が解けます。
大切なのは「解き方」です。
本問を解説する前に、この問題の重要性について、出題可能性を調査しましたのでご紹介させて頂きます。
出題頻度について
本問について、各試験種別での出題頻度を探りました。
※いずれも個人的観点から分析したものですので、数値の信頼性を保証するものではありません。
出題頻度(同じパターン)
本問と全く同じパターン(数値が異なるだけ)が出た頻度を、過去試験より分析しました。
□AIDD総合種・・・約5% (過去試験20回中1回)
□DD1種・・・無し (過去試験20回中無し)
□DD3種・・・約5% (過去試験20回中1回)
出題頻度(類似パターン)
少しパターンは異なりますが、「電流増幅率」からの計算ということで、挙げられるパターンを分析し、出題頻度を探りました。
□AIDD総合種・・・約15% (過去試験20回中3回)
□DD1種・・・約35% (過去試験20回中7回)
□DD3種・・・約5% (過去試験20回中1回)
得点力アップの可能性
過去の出題頻度が次回試験にも適用されると仮定すると、本問および類似パターンをマスターすることにより、
□AIDD総合種・・・約20%
□DD1種・・・約35%
□DD3種・・・約10%
の確率で、得点につながると考えられます。
ご質問の問題への解説

本問では、「電流増幅率」が聞かれています。
よって、「電流増幅率」の公式を覚えておく必要があります。
電流増幅率の公式は、ベース接地型と、エミッタ接地型とで異なります。
本問に必要なベース接地型の公式は、次の通りです。
ベース接地型電流増幅率の公式

では、さっそく公式を使って解いてみましょう。
問題文では、エミッタ電流が2ミリアンペア、コレクタ電流が1.96ミリアンペアとなっています。
「ミリアンペア」は共通していますので、計算上は単位を無視できます。
そのまま公式にあてはめて

と、答えが出ました。
答えは選択肢方式になっていますので、該当する②が正解となります。
覚えて頂きたい知識としては、公式だけです。
入力電極、出力電極ということは、よく分からなくても本問は解けますので、どんどん進めちゃいましょう。
動画解説
本問の動画解説です
同一パターンの問題&解説
総合種平成29年秋_問題

総合種平成29年秋_解説
本問も、同様に電流増幅率の公式を使います。

問題文では、エミッタ電流が2ミリアンペア、コレクタ電流が1.94ミリアンペアとなっています。
「ミリアンペア」は共通していますので、計算上は単位を無視できます。
そのまま公式にあてはめて

と、答えが出ました。
答えは選択肢方式になっていますので、該当する②が正解となります。
総合種平成29年秋_解説動画
さて、これで本パターンはマスター頂けたかと思います。
せっかくですから、類似パターンの問題も、ここでマスターしてしまいましょう。
類似パターン1 エミッタ接地の直流電流増幅率
先ほどの問題では、「ベース接地型」の回路が出題されておりました。
直流電流増幅率の問題では、他に「エミッタ接地型」というものがあります。
実際の問題を見て見ましょう。
DD1種平成21年春_問題

DD1種平成21年春_解説
先ほどまでの問題との違いは、「エミッタ接地回路」というところにあります。
直流電流増幅率の問題に出会ったら、まずは「ベース接地」か「エミッタ接地」かを確認しておかなければなりません。
どちらかで、使う公式が変わってきます。
「ベース接地」では、エミッタを入力、コレクタを出力としていましたが、
「エミッタ接地」では、ベースを入力、コレクタを出力とします。
コレクタが出力というのは共通していますが、
ベース接地では、エミッタが入力
エミッタ接地では、ベースが入力となります。
本問では、「エミッタ接地回路」となっています。
この場合、問題を解くために2つの公式を覚えておく必要があります。
エミッタ接地型 電流増幅率の公式

トランジスタ 電流の公式

それでは、早速公式を当てはめていきましょう。
エミッタ接地回路であることから、

を使います。
コレクタ電流は、問題文より1.96ミリアンペアと分かっています。
しかし、ベース電流が分かりません。
そこで、電流の公式の出番です。

公式の中のIBとは、ベース電流のことを指しています。
公式を言葉に置き換えると、次のようになります。
エミッタ電流=ベース電流+コレクタ電流
ベース電流を求めたいので、移項していきます。
まず、
ベース電流+コレクタ電流=エミッタ電流
として、次に
ベース電流=エミッタ電流-コレクタ電流とします。
問題文より、エミッタ電流は2ミリアンペアと分かっていますので、
ベース電流=2-1.96
=0.04ミリアンペア
ベース電流が分かったので、公式に当てはめます。
より

直流電流増幅率は49なので、選択肢③が正解となります。
DD1種平成21年春_解説動画
DD1種平成25年秋_問題

DD1種平成25年秋_解説
本問では、「エミッタ接地」であることから、

を使います。
しかし、ベース電流が分からないため、電流の公式

を用います。
ベース電流を求めたいので、移項していきます。
まず、
ベース電流+コレクタ電流=エミッタ電流
として、次に
ベース電流=エミッタ電流-コレクタ電流とします。
問題文より、エミッタ電流は2ミリアンペア、コレクタ電流は1.95ミリアンペアと分かっていますので、
ベース電流=2-1.95
=0.05ミリアンペア
ベース電流が分かったので、公式に当てはめます。

よって、選択肢④が正解となります。
それでは、引き続き類似パターンの問題に入りましょう。
類似パターンの問題2 ベース電流を求める
DD1種平成21年秋_問題

DD1種平成21年秋_解説
ベース接地型ですから、こちらの公式を用います。

本問では、ベース電流が求められています。
おや?この公式にはベース電流が出て来ていませんね。
そこで、もう一つの公式の出番です。

この公式から、エミッタ電流とコレクタ電流が分かれば、ベース電流を求められることが分かります。
コレクタ電流を求めるために、最初の公式に戻ってあてはめると、次のようになります。

コレクタ電流を求めるためには、移項して
コレクタ電流=0.97×3
=2.91[ミリアンペア]
コレクタ電流とエミッタ電流が分かれば、公式よりベース電流が分かります。
より
エミッタ電流=ベース電流+コレクタ電流
ベース電流を求めたいので、移項して行こう(←ここ笑うところ)。
まず、
ベース電流+コレクタ電流=エミッタ電流 (左右入れ替え)
として、次に
ベース電流=エミッタ電流-コレクタ電流とします。
先ほどの計算より、コレクタ電流は2.91ミリアンペアと分かっていますので、
ベース電流=3-2.91
=0.09[ミリアンペア]
なので、答え①!
としたら、大間違いです。
これ、実は引っ掛け問題になっています。
問題文をもう一度よく見てください。

「マイクロアンペアとなる。」と書いてあります。
つまり、計算した答えから、単位をマイクロアンペアに直してあげる必要があります。
ミリアンペアとマイクロアンペアでは、1,000倍違います。
直し方は、小数点3つ分右(もしくは左)に動かすと覚えておきましょう。
0.09から小数点を3つ分右に動かすと、
0.9(1つ分)
9(2つ分)
90(3つ分)
となりますので、正解は90の選択肢④が正解です。
DD1種平成21年秋_解説動画
DD1種平成24年秋_問題

DD1種平成24年秋_解説
先ほどの問題と全く同じです。
違うのは、選択肢の数が増えたことと、問題の表現が簡略化されたところ。
解き方は全く同じなので、割愛します。
正解は選択肢④の90。
DD1種平成26年秋_問題

DD1種平成26年秋_解説
なんだ、これもさっきと全く一緒。
簡単だよ。
もう答え覚えちゃった。
選択肢④の90が正解!
としたら、あらやだ、大間違いです。
問題文を今一度吟味してください。
今度は「ミリアンペア」で聞いています。
ミリアンペアにすると、0.09が正しい答えになりますので、
選択肢①が正解です。
この手の単位の引っかけはよく出て来ますので、注意しましょう。
単位に引っかからないようにするためには、一つテクニックがあります。
単位の引っかけを見破る方法
ミリアンペアとマイクロアンペアなどのように、単位が異なると、当然ながら答えも変わってきます。
しかし、問題を解く上で単位はつい読み飛ばしがちです。
そのスキを試験では突いてきます。
単位の読み飛ばしを防ぐ、とっておき方法があります。
それは、選択肢です。
本問の選択肢をもう一度見てみましょう。

選択肢の中に、桁が違うだけのものが混ざっていたら要注意です。
単位を読み飛ばさないように気をつける必要があります。
逆に言うと、桁違いの選択肢が無ければ、単位はほぼ無視でもなんとかなります。とか言うと怒られるんだろうなぁ。
でも、ホントです。
どれだけ単位に注意を払うかは、選択肢を見て決めれば大丈夫です。
DD1種平成28年秋_問題

DD1種平成28年秋_解説
ベース接地型ですから、こちらの公式を用います。

本問では、ベース電流が求められています。
そこで、もう一つの公式の出番です。

この公式から、エミッタ電流とコレクタ電流が分かれば、ベース電流を求められることが分かります。
コレクタ電流を求めるためには、移項して
コレクタ電流=電流増幅率×エミッタ電流 とします。
コレクタ電流=0.97×4
=3.88[ミリアンペア]
コレクタ電流とエミッタ電流が分かれば、公式よりベース電流が分かります。
より
エミッタ電流=ベース電流+コレクタ電流
ベース電流を求めたいので、移項して行こう(←ここ笑うところ)。
まず、
ベース電流+コレクタ電流=エミッタ電流 (左右入れ替え)
として、次に
ベース電流=エミッタ電流-コレクタ電流とします。
先ほどの計算より、コレクタ電流は2.91ミリアンペアと分かっていますので、
ベース電流=4-3.88
=0.12[ミリアンペア]
正解の選択肢は①となります。
総合種平成22年秋_問題

総合種平成22年秋_解説
ベース接地型ですから、こちらの公式を用います。

本問では、ベース電流が求められています。
そこで、もう一つの公式の出番です。

この公式から、エミッタ電流とコレクタ電流が分かれば、ベース電流を求められることが分かります。
コレクタ電流を求めるためには、移項して
コレクタ電流=0.97×3
=2.91[ミリアンペア]
コレクタ電流とエミッタ電流が分かれば、公式よりベース電流が分かります。
より
エミッタ電流=ベース電流+コレクタ電流
ベース電流を求めたいので、移項して行こう(←ここ無視)。
まず、
ベース電流+コレクタ電流=エミッタ電流 (左右入れ替え)
として、次に
ベース電流=エミッタ電流-コレクタ電流とします。
先ほどの計算より、コレクタ電流は2.91ミリアンペアと分かっていますので、
ベース電流=3-2.91
=0.09[ミリアンペア]
なので、答え①!
としたら、大間違いです。
問題文をもう一度よく見てみると、
「マイクロアンペアとなる。」と書いてあります。
つまり、計算した答えから、単位をマイクロアンペアに直してあげる必要があります。
ミリアンペアとマイクロアンペアでは、1,000倍違います。
直し方は、小数点3つ分右(もしくは左)に動かすと覚えておきましょう。
0.09から小数点を3つ分右に動かすと、
0.9(1つ分)
9(2つ分)
90(3つ分)
となりますので、正解は90の選択肢④が正解です。
総合種平成30年秋_問題

総合種平成30年秋_解説
ほとんどさっきと同じだ!と気付いた人はさすがです。
出てくる数値まで、ほとんど同じですね。
こういう時に注意するのは、「単位」です。
『この問題知ってる!』と思った瞬間に、問題に対する警戒心が下がって、単位の違いを見落としてしまいがちです。
解き方の詳細は、くどくなるので省かせて頂きます。
正解の選択肢は、①です。
類似パターン3 エミッタ電流を求める
ここまで、ベース電流を求める問題を連続して見てきました。
ここからは、エミッタ電流を求める問題を見て行きましょう。
エミッタ電流を求める問題は、DD1種で1回、総合種で1回、出題されています。
それでは、さっそく見て行きましょう。
DD1種平成22年春_問題

DD1種平成22年春_解説
電流増幅率の公式は問題で示されていますが、エミッタ電流もコレクタ電流も分からない状態です。
ここで、電流増幅率の公式の意味を考えてみましょう。
電流増幅率の公式が意味しているのは、
エミッタ電流を○○入力すると、コレクタ電流が○○で出力されたよ、この比を電流増幅率と言うよ
ということです。
本問にあてはめて考えてみると、
エミッタ電流を仮にXミリアンペアとすると、
エミッタ電流をXミリアンペア入力すると、コレクタ電流は0.97Xミリアンペアになったよ
ということを意味しています。
エミッタ電流Xミリアンペア→コレクタ電流0.97Xミリアンペア
あれ?
残り0.03Xミリアンペアはどこに行ったのでしょうか。
エネルギーが勝手に消えてしまうというのでしょうか。
この問題を考えるで、次の公式を思い出してみましょう。

公式から、
エミッタ電流=ベース電流+コレクタ電流
ということが分かります。
つまり、先ほどの0.03Xミリアンペアは、消えて無くなった訳ではありません。
0.03Xミリアンペアは、ベース電流として存在しています。
本問では、ベース電流は60マイクロアンペアと書かれていますので、
0.03Xミリアンペア=60マイクロアンペア
単位が異なるので、揃えてあげる必要があります。
最終的な答えは、ミリアンペアで答えるように指示されているため、ミリアンペアで統一します。
マイクロアンペア→ミリアンペアにするには、
小数点3つ分、左にずらしてあげれば良いので
0.03Xミリアンペア=0.06ミリアンペア
X=2
となります。
よって、答えは①が正解となります。
では、もう1問同じパターンを取り組んでみましょう。
総合種平成21年春_問題

総合種平成21年春_解説
この問題も先ほどと同じです。
電流増幅率の公式は示されていますが、エミッタ電流もコレクタ電流も分からない状態です。
本問では、
エミッタ電流を仮にXミリアンペアとすると、コレクタ電流は0.97Xミリアンペアになる
ということを意味しています。
エミッタ電流Xミリアンペア→コレクタ電流0.97Xミリアンペア
残り0.03Xミリアンペアはベース電流になります。
本問では、ベース電流は60マイクロアンペアと書かれていますので、
0.03Xミリアンペア=60マイクロアンペア
単位が異なるので、揃えてあげる必要があります。
最終的な答えは、ミリアンペアで答えるように指示されているため、ミリアンペアで統一します。
マイクロアンペア→ミリアンペアにするには、
小数点3つ分、左にずらしてあげれば良いので
0.03Xミリアンペア=0.06ミリアンペア
X=2
となります。
よって、答えは①が正解となります。
類似パターン4 コレクタ電流を求める
DD3種平成30年春_問題

DD3種平成30年春_解説
本問では、トランジスタ回路における電流がトピックになっているので、次の公式を用います。

エミッタ電流=ベース電流+コレクタ電流
ですが、ここで注意が必要です。
ミリアンペアとマイクロアンペアを統一する必要があります。
最終的にミリアンペアで答える必要があるため、ミリアンペアにして考えましょう。
40マイクロアンペアをミリアンペアにするには、
小数点を3つ左にずらします。
40から小数点を3つ分左に動かすと、
4(1つ分)
0.4(2つ分)
0.04(3つ分)
となります。
つまり、ベース電流40マイクロアンペアは、0.04ミリアンペアと読み替えることが可能です。
公式にあてはめて、
エミッタ電流=ベース電流+コレクタ電流
2.62=0.04+コレクタ電流
コレクタ電流=2.62ー0.04
=2.58
よって、正解の選択肢は②となります。
以上で、類似パターンの解説は終わります。
これから、他のご質問の回答および直近の過去問解説を作成して参ります。
試験日までに一定の形になるように頑張りますので、宜しくお願い申し上げます。