一陸特試験『平成26年2月午前問題2』の解説講義を行ないます。
「無線局の変更検査」に関する問題です。
問題
次の記述は、無線局の変更検査について述べたものである。
電波法(第18条)の規定に照らし、 内に入れるべき最も適切な字句の組合せを下の1から4までのうちから一つ選べ。
① 電波法第17条(変更等の許可)第1項の規定により A の変更又は無線設備の変更の工事の許可を受けた免許人は、総務大臣の検査を受け、当該変更又は工事の結果が同条同項の許可の内容に適合していると認められた後でなければ、許可に係る無線設備を運用してはならない。ただし、総務省令で定める場合は、この限りでない。
② ①の検査は、①の検査を受けようとする者が、当該検査を受けようとする無線設備について登録検査等事業者(注1)又は登録外国点検事業者(注2)が総務省令で定めるところにより行った当該登録に係る B を記載した書類を総務大臣に提出した場合においては、 C することができる。
注1 登録検査等事業者とは、電波法第24条の2(検査等事業者の登録)第1項の登録を受けた者をいう。
2 登録外国点検事業者とは、電波法第24条の13(外国点検事業者の登録等)第1項の登録を受けた者をいう。
A |
B |
C |
|
1 | 無線設備の設置場所 | 検査の結果 | 省略 |
2 | 無線設備の設置場所 | 点検の結果 | その一部を省略 |
3 | 通信の相手方、通信事項若しくは無線設備の設置場所 | 点検の結果 | 省略 |
4 | 通信の相手方、通信事項若しくは無線設備の設置場所 | 検査の結果 | その一部を省略 |
解答
2
解説
この分野は、平成23年6月に改正法が施工されたところで、ホットなところです。
試験委員としては出題したくなる分野ですので、しっかりと押さえておきましょう。
根拠条文
問題文にある様に、電波法18条が根拠条文になります。
第18条1 電波法第17条(変更等の許可)第1項の規定により 無線設備の設置場所 の変更又は無線設備の変更の工事の許可を受けた免許人は、総務大臣の検査を受け、当該変更又は工事の結果が同条同項の許可の内容に適合していると認められた後でなければ、許可に係る無線設備を運用してはならない。ただし、総務省令で定める場合は、この限りでない。
2 ①の検査は、①の検査を受けようとする者が、当該検査を受けようとする無線設備について登録検査等事業者(注1)又は登録外国点検事業者(注2)が総務省令で定めるところにより行った当該登録に係る 点検 を記載した書類を総務大臣に提出した場合においては、 その一部を省略 することができる。
それにしても、電波法は句読点が少ないので、声に出して読んでみようとすると肺活量を試されますね^^
条文問題は、「憶えてしまえばそれで終わり」なのですが、せっかくなのでそれぞれの項目について内容を確認しておきましょう。
無線局の変更検査
無線局は様々な事情により、設備内容の変更を迫られることがあります。
例えば、空中線を地上高5mの位置に設置し運用していたけど、指向方向に障害物となる建物が出来て、5mでは通信できなくなった。
空中線の位置を10mに変更すれば、どうやら通信出来そうだという時、設備変更をしたいですよね。
しかし、無線局設備というのは、免許人の都合で勝手に変えることは出来ません。
電波の使用というのは、厳格な審査のもと許可されています。
必ず事前に変更の許可を受けてから、工事をする必要があります。
また、工事完了後も、本当に許可していた内容と相違ないかチェックが入ります。
この工事完了後のチェックのことを「変更検査」と言い、電波法18条でその内容が定められています。
工事が完了しても、この「変更検査」に合格しなければ、無線設備の運用はできません。
空欄Aについて
実戦的解法
ここでは、この条文を暗記出来ていなかったときに、試験現場で問題を解く方法を考えてみましょう。
まず、問題文の空欄Aは、選択肢から、「無線設備の設置場所」or「通信の相手方、通信事項若しくは無線設備の設置場所」どちらかであると分かります。
次に読み進めると、「総務大臣の検査を受け」と書かれています。
ここで、実際に検査を受けるときのことを想像してみましょう。
「無線設備の設置場所」を検査するのはともかく、「通信の相手方や通信事項」までも検査するというのは、どうでしょうか。
誰とどういう通信をしているのか、具体的な内容について検査するというのは、現実的には難しいことです。
ですから、選択肢としては「無線設備の設置場所」を選ぶという現場判断も可能です。
空欄Bについて
こちらは「検査」か「点検」か、どちらかが入ります。 ちょっとした言葉の違いに過ぎないのかというと、そうではありません。
総務省の資料より抜粋した下記表をご覧ください。

検査の方が、「点検」に加えて「判定」もあり、より広い内容を含んでいます。
ここで判定と点検の違いを確認しておきましょう。
点検とは
ここで言う「点検」とは、測定器を利用して電気的特性の確認を行なうことをいいます。
測定器を使って、送信電力や周波数特性等、基準値に照らしてどれだけの偏差があるかを見ます。
判定とは
「判定」とは、点検の結果が法令の規定に適合しているか確認を行うことをいいます。
つまり、結果をジャッジするということです。
従来、民間事業者は「点検」までしか行なえませんでした。
測定はしても良いが、結果の合否はあくまでも国(総務省)が行なうものとしていました。
しかし、平成23年6月の改正法施工により、一部登録を受けた事業者が判定までも行なえることになりました。
これは、かなり大きな規制緩和と言えます。
言うならば、国の権限の一部を委任したとも言えます。
ただ、権限が大きくなった分、登録を受けるための要件は厳しくなっています。
「判定員」として登録されるためには、所定の要件を満たすのはもちろんのこと、経歴書など、従来は要求されなかったものまで審査の対象となります。
そして、外国の登録点検事業者は、「点検」までしか出来ず、「判定」は行なえません。
実戦的解法
ここでは、この条文を暗記出来ていなかったときに、現場で問題を解く方法を考えてみましょう。
まず、「検査」か「点検」かですが、「検査」の方が権限が大きく、その分認められる条件が厳しいということを押さえておく必要があります。
ここで問題文を見ると、「当該検査を受けようとする無線設備について登録検査等事業者(注1)又は登録外国点検事業者(注2)が」とあります。
外国点検事業者は、「判定」を行なえるまで規制が緩和されておらず、「点検」までしか出来ません。
先ほど「判定」とは、国の権限の一部委任との言い方をしましたが、その様な性質があるため、現在のところ外国の事業者には認められていないのです。
これらのことを総合し、「点検」を選ぶことが出来ます。
空欄Cについて
「省略」ではなく、「一部の省略」です。 この文言も頻出ですので、しっかりと抑えておきましょう。
実戦的解法
条文を暗記出来ていなかった時は、省略の内容について、「全部」か「一部」かと読みかえて考えてみましょう。
変更検査とは、本来国(総務省)の権限により行なうものです。
しかし、全てを国が行なうのは現実的に困難ですし、免許人の負担も大きい。
そこで、一定の条件の下、国の権限の一部を委任したのが「登録検査事業」の趣旨です。
そして、委任された分だけ、国の検査を省略できるという関係にありますので、その範囲はあくまでも「一部の省略」に限られると読み解くことも出来ます。
動画講義
前編
後編
ご参考資料
今回の問題に関係のある各資料を添付いたします。
必要に応じ、右クリックで保存してください。
無線局定期検査制度の見直し
本問では深く触れることの出来なかった「登録検査事業」について、分かりやすく記載された総務省発行の資料です。
試験対策上は、そこまで押さえる必要はありませんが、興味がありましたら、ご参考までにどうぞ。
平成26年2月午前問題
※12問すべての問題です。
同解答
※午前・午後の解答です。
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