お店を運営する中で、キャンペーンについて考える機会が多くあります。
出来るだけ効果的なキャンペーンを行いたいのですが、法律に適する様に行なわなければなりません。
キャンペーンに関しては、主に「景品表示法」という法律により、一定の制限を受けます。
ここでは、「景品表示法」がどういうものか見て行きたいと思います。
景品表示法とは
景品表示法とは、正式には「不当景品類及び不当表示防止法」(昭和37年法律第134号)といいます。
景品表示法の目的
景品表示法は、商品やサービスの品質、内容、価格等を偽って表示を行うことを厳しく規制するとともに、過大な景品類の提供を防ぐために景品類の最高額を制限することにより、消費者の利益を保護する目的を持っています。

そして、その中身は大きく2つに分けられます。
一つは「不当な表示の禁止」。
もう一つは「過大な景品類の提供の禁止」です。

不当な表示の禁止
「不当な表示の禁止」とは、商品・サービスの品質や価格について,実際よりも著しく優良又は有利であると見せかける表示を禁止するものです。
「不当な表示」がなされると、消費者の適正な商品選択を妨げられることになるので、法律で規制しています。
「不当な表示の禁止」例
例えば、「こしひかり100%」と書いて売出しているのに、実は中身はこしひかりが20%で、後は安いお米が混ぜて売られている場合が「不当な表示」にあたります。
この不当表示にあたるかについて、最近話題になったものに「サケ弁当」問題があります。
一般的なお弁当では、「サケ弁当」に入っているのはサケではなく、実際はサーモントラウト(ニジマス)が使われているということが多々あります。
この場合、サーモントラウト(ニジマス)を使っていても「サケ弁当」と表示していいのでしょうか?
安いサーモントラウトを使用して、高価なサケとして販売するのは、実際よりも著しく優良又は有利であると見せかける表示に該当するのではないか?という問題です。
消費者庁は、当初「問題がある」との趣旨の発言をしていましたが、後にガイドラインを作成し、「問題なし」と正式な立場を表明しました。
実際のところ、不当表示か否かについては、社会の実態に即して考える必要があり、過去に解釈が変化した例もあります。
他にも、この「不当な表示」については細かく見ていくと面白いのですが、今回は景品のお話なので省略させていただきます。
過大景品提供の禁止
過大景品提供の禁止の目的
「過大景品提供の禁止」の目的とは、景品類の最高額を制限することにより、消費者がより良い商品やサービスを自主的かつ合理的に選べる環境を守ることにあります。
景品をサービスすることは、本来消費者の得になるものですよね。
では、それを規制することが何故消費者の利益になるのでしょうか?
これは、事業者が過大景品を提供すると、消費者が過大景品に惑わされて、質の良くないものや割高なものを買わされてしまい、消費者にとって不利益になるという考え方に基づきます。
また、過大景品による競争がエスカレートしていくと、事業者は商品・サービスそのものでの競争に力を入れなくなり、これが消費者の不利益につながっていくという悪循環を生むおそれがあります。
これらの理由により、過大景品による不健全な競争を防止すべきとしているんですね。
景品の定義
それでは、「景品」とは何のことを指すのでしょうか?
その定義を見てみましょう。
景品とは、
①顧客を誘引するための手段として
②商品・サービスの取引に付随して提供する
③物品・金銭その他の経済的利益 これら3要件を満たすものを言います。

景品の分類
一口に景品と言っても、その内容により大きく3つに分類できます。
「一般懸賞」、「共同懸賞」、「総付景品」の3つです。
それでは、順に見ていきましょう。
一般懸賞
一般懸賞とは
商品・サービスの利用者に対し,くじ等の偶然性,特定行為の優劣等によって景品類を提供することを「懸賞」といい,共同懸賞以外のものを,「一般懸賞」と言います。
これだけ読むとちょっと分かりにくいですね。
実際に例を見てみましょう。
一般懸賞の例
・抽選券、じゃんけん等により賞品が提供される場合
・パズル、クイズ等の回答の正誤により賞品が提供される場合
・点数シールなどを集めて、賞品が提供される場合
・名称募集などで優秀者に賞品が提供される場合 よくある、商品についている点数シールを集めて応募するなどは一般懸賞に該当します。
この一般懸賞の場合の制限は、次の様に決められています。
一般懸賞における景品の限度額
一般懸賞の場合の景品の限度額は、取引額により変わってきます。
下の表をご確認ください。

たとえば、3,000円の商品に一般懸賞をつけて、売上予定総額が100万円の場合を考えてみましょう。
この場合に、最高額60,000円の懸賞をつけても良いでしょうか?
表より、懸賞の最高額は取引額の20倍、60,000円までOKに見えます。
しかし、売上予定総額が100万円なので、その2%でトータル2万円までの懸賞商品しか付けられません。
よって、最高額60,000円の懸賞は付けてはいけません。
この様に、最高額と総額の2重のしばりがあることに注意が必要です。
詳細について
一般懸賞の詳細については、公正取引委員会より告示が出されています。
詳しく知りたい方は、以下に各告示を添付させていただきますのでご確認ください。
共同懸賞
共同懸賞とは
商店街・ショッピングモールなどの複数の事業者が参加して行う懸賞を、「共同懸賞」と言います。
よく商店街でやっている、何千円以上お買い上げにつき、福引きチャレンジなんていうのも、この「共同懸賞」にあたります。
共同懸賞の例を見てみましょう。
共同懸賞の例
・市町村等、一定の地域の事業者が共同で実施する場合
・お中元・歳末セール等,商店街(ショッピングモール等も含む)が実施する場合
・「家電まつり」等,一定の地域の同業者が共同で実施する場合
共同懸賞の場合の制限は、次の様に決められています。
共同懸賞における景品の限度額
共同懸賞の場合は、最高額と総額が定められています。
下の表をご確認ください。

※年3回を限度、年間70日の期間内で行うものとする。
こちらも「一般懸賞」同様に、最高額と総額の2重のしばりがあります。
赤字で書いた制約も注意が必要です。 実施回数の制約もあります。
それでは質問です。
共同懸賞で1等賞に40万円の旅行券をプレゼントすることは適法でしょうか?
なお、売上予定総額は1,500万円とします。
答えは、OUTです。適法ではありません。
売上予定総額の3%は1,500×0.03=45(万円)
商品は40万円ですので、総額3%以内の条件は満たしていますが、最高額30万円を超えてしまっています。
詳細について
共同懸賞の詳細については、公正取引委員会より告示が出されています。
詳しく知りたい方は、以下に各告示を添付させていただきますのでご確認ください。
※添付ファイルの内容は、先ほどの「一般懸賞」のものと同じです。
総付景品
総付景品とは
一般消費者に対し、「懸賞」によらずに提供される景品類を、「総付景品(そうづけけいひん)」と言います。
具体的には、商品・サービスの利用者や来店者に対してもれなく提供する金品等が、これに当たります。
商品・サービスの購入の申し込み順又や、来店の先着順により提供される金品等も、「総付景品」に該当します。
総付景品の例
・ペットボトルの飲み口についている小物など
・ビール6缶パックや、ウィスキーのボトルについている小物など
総付景品の限度額 総付景品の場合は、最高額と総額が定められています。
下の表をご確認ください。

それでは、質問です。
3,000円の取引につけられる総付景品の最高額はいくらでしょうか?
答えは、取引価額3,000円の10分の2、つまり20%ですので、 3,000×0.2=600(円)
600円までの景品がつけられます。
個人的には、「一般懸賞」や「共同懸賞」に比べて、制限が緩い様な気がしますが如何でしょうか?
「懸賞」というクジ引き的要素が無い分、規制が弱いのかも知れません。
(クジ引きだと、商品は欲しくも無いのに、景品欲しさに無駄に何度も買い物する恐れもありますよね)
詳細について
この「総付景品」については、特例がいくつかあります。
特例にあたると、「総付景品」と性質は同じでも、景品表示法が適用されません。
たとえば、
『開店披露、創業記念等の行事に際して提供する物品又はサービスであつて、正常な 商慣習に照らして適当と認められるもの 』
は、景品表示法の除外対象となります。
景品表示法の対象から外れれば、景品の最高額も制限されません。
このあたりの詳細については、下記告示を添付させていただきますので、ご確認ください。
「一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限」の運用基準
例外(業種別景品告示)
業種別景品告示とは
景品表示法の規制が全ての業種に表等に適用される訳ではありません。
特定の業種については,業界の実情等にかんがみ,一般的な景品規制とは異なる内容の業種別の景品規制が,景品表示法第3条の規定に基づき,告示により指定されています。
ちなみに、現在この特定の業界とは
(1)新聞業、(2)雑誌業、(3)不動産業、(4)医療用医薬品業,医療機器業及び衛生検査所業
の各業種が制定されています。
業種別景品告示の内容について
この規定の面白いところは、「業界の実情等にかんがみ」というところだと思います。
例えば新聞業において、景品の価格は新聞の価格の8%以内となっています。
それならば、新聞販売店が読者にサービスとして野球チケットやぶどう狩り、映画の優待券などを配ることがよくありますが、サービスの合計額が代金の8%を超えるサービスはそう珍しくありません。
これは即景品表示法違反かというと、そうではありません。
その対象を自己が発行し、又は販売する新聞を購読するものに限定しないで行う催し物等への招待又は優待であって、新聞業における正常な商慣習に照らして適当と認められるもの
この条件にあてはまれば、8%の制限が適用されなくなります。
「新聞業における正常な商慣習」という文言がどうにも曖昧で、解釈の幅が広いところは、なんだか新聞業界を優遇している様に思えるのは気のせいでしょうか?
まぁ、法律を制定するのは政治家であり、政治家とマスコミのつながりというのは…推して知るべしというところかも知れませんね^^
ともあれ、この内容の詳細につきましては、下記告示を添付させていただきます。
各ご確認願います。
不動産業における一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限
医療用医薬品業,医療機器業及び衛生検査所業における景品類の提供に関する事項の制限
ご参考(オープン懸賞)
先に、「景品表示法」が適用されるのは、「取引に付随」して提供するものと申しました。
この点、新聞、テレビ、雑誌、ウェブサイト等で企画内容を広く告知し、商品・サービスの購入や来店を条件とせず、電子メール等で申し込むことができ、抽選で金品等が提供される企画には、「取引に付随」するとは言えず、景品規制は適用されません。
このような企画は,一般に「オープン懸賞」と呼ばれています。
オープン懸賞で提供できる金品等の最高額は、平成18年4月に規制が撤廃され、現在では上限額の定めはありません。
(撤廃前は1,000万円まででした)
発展的学習
さて、以上で「景品表示法」に関する一般的な説明は終わりです。
最後に、これを踏まえて、発展的な問題について考えてみたいと思います。
Q. AKBというアイドルグループが販売するCDには、握手券や生写真がついている。
(いわゆる「AKB商法」)これは景品表示法に違反しないか?
「違反する」とするならばその論拠は、「違反しない」とするならばその論拠はどうなるか。
やっぱり、現実に生起している問題を題材に考えてみるのが面白いですね。
この問題については、いろんな論者がいろいろな視点から語られています。
ネットで検索いただくと、具体的な検証記事なども読むことが出来ます。
いずれにせよ、まず結論を決めて考えるのではなく、別々の立場から(時には自分と逆の立場から)法律構成を考えてみるのも面白いかも知れませんね^^
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