集中力と分散力とは
今回は、集中力と分散力についてお話をしたいと思います。
集中力というのは、ご存じの通り集中する力のことをいいます。
勉強でもスポーツでも、集中力が大事だと、私たちは聞かされて育ちました。
一方、分散力とは何でしょう?
これは、注意を分散させる力のことを意味する、造語です。
集中力の大切さは分かるが、分散力の大切さは分からない。
むしろ、注意が分散することなどに、何の得があるのでしょうか?
ある数学者の逸話
もうお亡くなりになられた数学者で、森毅という方がいました。
数学者としての実績はもちろんのこと、ご存命中は積極的にメディアに出られ、独特の言い回しで多くのファンを獲得されていた方です。
↓森毅氏の著書

この森氏が、集中力と分散力について、友人の数学者のお話として、次の様なエピソードを話されていました。
友人の数学者が自宅の居間でくつろいでいるとき、ふと数学のアイデアが浮かぶことがある。
これはしめたぞ!と、アイデアをメモに書き写そうかとしているときに、奥さんから、「あなたヒマしてるんだったら、洗濯物くらい手伝ってよ」と呼びつけられる。
どうやら、はた目にはただボーっとしてて、ぐうたらしているだけに見えるらしい。
仕方がないから、家の手伝いをしていると、せっかく浮かんだアイデアをそのまま忘れてしまう。
一方、考え出した答えを、家で机に向かってせっせと書いている時がある。
何のことはない。もう既に出た結論を、まとめているだけのことだ。
そんな時は奥さんの方から、「あなたご苦労さま」と、頼んでもいないのに紅茶を入れて持ってくる。
不思議なことだ。
女房にとっては、机に向かって集中している方が、ボーっとしてアイデアを浮かべていることよりも偉いことらしい。
女房というのは、本当に不思議な生き物だよ。
と、その数学者が森氏にグチをこぼしていたとのことです。
このエピソードは、笑い話ではありますが、一点真実をついているところもあります。

アルキメデスはいつ浮力を発見したか
くつろいでいるときに、アイデアを発見した例は、昔から枚挙にいとまがありません。
アルキメデスが浮力を発見したのは、研究に煮詰まって、気分転換にお風呂に入ったときです。
森氏自身も、ずっと考えても分からなかった数学の問題が、全然関係ない恋愛映画を映画館で見ているときに、ふと答えが分かったりしたことが何度もある様です。
集中ももちろん大切ですが、それと同じくらい注意を分散する力、分散力も重要なのではないでしょうか。
人はバランスの生き物です。
集中したときこそ、分散することを意識してみる。
そんなことを実践できる人間になりたいと思います。